電子契約の最新情報 [ライセンス・知財]
PKIを学ぶことで、電子契約の骨子となっている技術(暗号)がわかりました。ここまでは、自分の昔取った杵柄なので、自分の得意な分野を披露するだけだから別に大したことはなし。
これからは電子契約について、自分は勉強する立場、学習する立場になります。
電子契約ってどんなものなのか?
結構Confidentialなことなのかな、と思っていたけれど、ネットで”電子契約”と検索すると、もう出てくる、出てくる。かなりon publicな内容のようです。
いろいろな記事を読むと、なるほどと思えることばかりで、いまの電子契約について世間に公開されている情報を紹介してみたいと思います。
何度も言いますが、これは文化庁のアーティストの業務委託契約の契約書問題だけの問題ではないのです。自分の業務の技術ライセンスの使用許諾契約にも関わってくることだから、他人事ではないのです。
自分のために書いているようなものです。
まず、これから紹介する各内容は、以下の情報・図を引用させていただいています。情報の出処をきちんと明示しておきたいと思います。
情報引用元:
電子契約の6つのメリットとは?デメリットや使わない理由も紹介
電子契約とは?書面契約や電子署名との違いや導入時の注意点を紹介!
電子契約サービスランキング
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契約印相当と実印相当、2種類の電子署名に対応!
ゼロから学べる電子契約の基礎—電子契約の導入メリットと注意点
●電子契約とは
電子契約とは、電子署名を施した電子ファイルをインターネット上で交換して、企業等が保有するサーバーやクラウドストレージなどに保管しておく契約方式のこと。
これまでの書面の契約では、契約内容を記した紙にハンコによる「押印」やペンで「手書き署名」を行って証拠化していた。
電子契約では、パソコンやスマートフォンを使い、暗号技術を応用した「電子署名」と「タイムスタンプ」を電子ファイルに施すことで、スピーディかつ安全に当事者の合意の証を残すことができる。
書面の契約書と同様に、裁判で証拠としても扱われる。
電子契約のイメージ
ここで、電子署名については、PKIの日記で書きましたね。公開鍵暗号方式とハッシュ関数を使う方式です。ここで新たに出てくるのは、タイムスタンプという技術です。これは自分も知りませんでした。タイムスタンプは時刻ですね。契約締結のときの時刻情報などを契約書に紐づける情報だと思います。
その時刻情報はどこから取ってくるのか、は自分が気になるところです。グリニッジ天文台の世界標準時計からじゃないとダメですね。(笑)タイムスタンプも信頼あるところからの情報じゃないとダメだと思います。
●公開鍵暗号方式とハッシュ関数を用いた電子署名
まず復習の意味も兼ねて、公開鍵暗号方式とハッシュ関数による電子署名について、もう一回おさらいします。
まず送信者は、契約書PDFをハッシュ関数をとってハッシュ値(MAC)をとります。これがこの契約書の中身を表す神様データです。
そしてこのハッシュ値(MAC)を自分の秘密鍵で暗号化します。
そして相手に、契約書PDFと、自分の秘密鍵で暗号化したハッシュ値(MAC)を送ります。このとき自分の秘密鍵とペアになる公開鍵もいっしょに渡します。秘密鍵は自分の中だけでしまっておく極秘の鍵ですが、公開鍵は公開してもいい鍵なので、これを相手に渡します。
これらを受け取った受信者は、相手の公開鍵で、そのハッシュ値(MAC)を復号化します。このとき暗号がちゃんと解けたら、これは、ちゃんとその相手から届いたものであることの証明になります。なぜなら、その相手の公開鍵で暗号が復号できた、ということは、その暗号は、その相手の秘密鍵で暗号化されていることになるからです。
そして、出てきたハッシュ値(MAC)と、送られてきた契約書PDFを自分のほうでもハッシュ関数を通してみて得られたハッシュ値と比較します。
それで同じであれば、それは契約書PDFの内容が改ざんされていない、一致していることの証明になります。
これが公開鍵暗号方式とハッシュ関数を用いた電子署名でしたね。内容が改ざんされていないこと、正しい相手から送られてきたこと、この両方を検証することをいいます。
相手の公開鍵は、相手からもらってもいいですが、第三者機関である認証局(CA)から取り寄せたほうが信頼度は大きいですね。
電子契約って、この電子署名がすべてといっていいんですね。この暗号技術が骨子技術になります。
じゃあ実際使うユーザーのほうで、このような公開鍵暗号方式とかハッシュ関数とかをいちいち理解していないといけないのか、というとそれはナンセンスですね。それじゃ普及しませんね。
自分も電子契約を使ったことないですが、なんでもこんな感じなんだそうです。
電子署名を施した契約書をPDF閲覧ソフトであるAdobe Reader(無料)で開くことによって右上の署名パネルというボタンを押すと、その署名パネル欄から以下の情報が確認することができ、証拠力の保持が確認できるんだそうです。
1.送信者および受信者が合意した日時(秒単位)。
2.送信者および受信者のメールアドレス。
3.締結後、署名内容に改ざんがなされていないこと。
1がタイムスタンプですね。2と3が公開鍵暗号方式とハッシュ関数による電子署名ですね。
だから難しい暗号セキュリティの技術のことを理解していなくても、こういう電子契約のアプリの中で、ユーザーはそれを意識せず、GUIの中で完結しているんですね。
たぶんそうだと思っていました。(笑)一般ユーザーにあまり暗号セキュリティうんぬんは、イケていないと思っていました。
●立会人型と当事者型(署名方式)
自分が、電子契約のことで今回新しく知ったのは、電子契約には、その署名方式に立会人型と当事者型と2タイプあるということでした。
立会人型
当事者型
ひと言で2つの署名方法の違いを表すと、電子証明書を必要とするのが「当事者型」(いわゆる認証局(CA)からきちんと電子証明書(公開鍵証明書)を入手する)。 一方、電子証明書を必要とせずメール認証などにより本人確認するものを「立会人型」と呼びます。
電子契約サービスを比較する際、この署名方法の違いを認識する必要がある理由は、「立会人型」では訴訟で不利になる可能性があるためです。
当事者型では、電子認証局で厳格な本人確認のもと発行された電子証明書を用いて契約締結する。 印鑑に例えると、実印における印鑑証明書=電子証明書だと考えてほしい。そのため、当事者型では本人性も担保される。
しかし、立会人型の本人性の担保は、電子契約サービス各社に委ねられている状況。各社、本人性担保のためのあらゆる対策をしていますが、立会人型の本人性に担保に関しては、実際に判例が出てこない限り判然としない部分でもあります。
よって、より安全・安心に電子契約サービスを導入していきたい会社は、当事者型を選択できる電子契約サービスを検討することをおすすめします。
やっぱりねぇ・・・公開鍵暗号方式を採用する場合は、絶対、認証局(CA)を入れたほうがいいんですよ。同じ公開鍵を入手するにしても相手からと、きちんと電子証明書(公開鍵証明書)として認証局(CA)から入手するのとでは全然信頼度が違います。
自分も今の会社で、ライセンス訴訟とか特許訴訟とかすごい身近なのですが、訴訟って面倒くさいよ~~~。(笑)かなり面倒で厄介なものです。そういう訴訟の場合、ちゃんとしたエビデンス、証拠力というのが立証される必要があって、そういうことを鑑みると、やっぱり電子契約サービスの中でも、署名方式は当事者型を選ぶことですね。
あとで一番最後に記しますが、いま巷でいろいろある電子契約サービスの中でも、この署名方式が立会人型と当事者型といろいろ採用するタイプがそのサービスによって違うんですよね。そこをよく注意して選んでほしい。
じつは、この当事者型と立会人型とガッチャンコしたハイブリッド型というのもあります。
ハイブリッド型
自社は当事者型で、契約相手はメール認証による立会人型を利用することで、「契約相手の利便性」と「法的適合性・署名権限管理の担保」を両立できる、というものです。
●電子契約のメリット
①印紙税の削減
②事務労力・コストの削減
③契約締結までのリードタイムの短縮
④保管・管理の効率化
⑤リモートワーク対応が容易
⑥契約更新の確認漏れ防止
・・・ですかね。
①が一番大きいですね。印紙税はバカにならないです。契約書は原本が神様という文化から発生するものです。
紙の契約書は法律により、収入印紙を貼ることが義務付けられているのです。税額は契約の種別や契約金の大きさによって異なります。1件辺り200円~大きいものでは数十万円。1件の金額は高額でなくなくても、建設業・工事業・運送業など多くの請負契約を結ばなければならない企業にとっては大きな負担。
電子契約に切り替えた場合、契約書は法律で言うところの「課税物件に掲げる文書」ではなくなるため、印紙税が不要になります。
②は、まさに契約書の世界って原本が神様なんですが、その契約書原本にかかる費用です。
紙の契約書の場合、1つの契約を締結するまで多くの事務作業が必要になります。たとえば、「契約書を印刷し、製本する」「契約書に収入印紙を貼る」「封筒に宛名を記入する」「封筒に契約書を封入する」「郵便局に投函しに行く」など。
手間暇だけでなく、インク代・印刷代・郵送代などの事務コストも見逃せない部分です。
電子契約では、契約書のやりとりはインターネット上で行われます。電子ファイルをアップロードするだけで済むため「印刷・製本」「宛名書き」「封入・投函」などの事務作業は必要ありません。スタッフはその時間を他の作業に費やすことができます。インク代・印刷代・郵送代などのコストも省けます。
自分は思うんですが、自分の場合、あくまで企業が導入するかどうかの立場でしか、ものを考えられないのですが、企業が導入する場合、年間にいくらの契約を締結するかを割り出し、それにかかる事務労力・コストの算出、そしてそれにかかる印紙税を全部算出して、従来の方法だったら、これくらいかかるのが、電子契約に切り替えたら、これだけで済むから、それだけコストダウンのメリットがありますよ、というような検証の仕方をしていかないと踏み切れないと思うんですよね。
さらには企業の場合、もう過去にレガシーの膨大な紙の契約書原本を管理していますから、それをいまさら、ということはあると思うので、おそらくは紙と電子契約の両立という形にならざるを得ないと思うんですよね。
文化庁の契約書の場合は、これから導入という新しい分野ですので、電子契約オンリーでいいのだと思います。
書面による契約の締結は、印紙代、郵送代、印刷費、さらにはそれらの作業にかかる人件費や、書類の保管費(法人税法上、紙の契約書は7年間の保存義務)といった様々なコストが発生する。一件あたりの費用は数百円から数千円程度に過ぎなくても、総額では毎月数十万円以上の費用になっていることも少なくない。
電子契約を導入することで、契約書類はインターネット上でデータを受け渡しでき、そのままファイルとしてクラウド上に保管できるので、郵送費はもちろん、印刷費、物理的な保管スペース確保の費用などが不要になる。
また、ファイルをインターネット上にアップロードするだけなので、業務フローが簡素化され人件費も最小限にできる。
④も電子化すると、パッと検索できますし、契約種別管理もたやすいですね。
契約書というのはとてもセキュリティ度の高い、かなり秘匿性のある厳重管理が必要な書類ですので、アクセス制限とか厳重管理が容易くなるような気がします。
あと、企業向けとしてはワークフロー機能は絶対欲しいです。企業は承認プロセスなど、何段階にも渡っていろいろな人を経由しますので、ワークフローは絶対必須です。ワークフローがある電子契約サービスがいいですね。
●電子契約のデメリット
①すべての契約が電子契約に対応しているわけではない
②電子契約に切り替えるには取引先の協力が必要
③取引先の状況によってはサポートが不可欠
①は電子契約に対応していない契約というのはこういう契約があるそうです。
・定期借地契約・定期建物賃貸借契約
・宅地建物売買等媒介契約
・マンション管理業務委託契約
・訪問販売等特定商取引における交付書面
・労働者派遣(個別)契約 など
②、③は自分が初めてこの電子契約のことを知ったときに、とっさに思ったことです。ある意味、電子契約が普及しないとしたら、ネックになるとしたら、ここなんじゃないかな、と思いました。
契約というのは、相手、取引先があって初めて成り立つものなんですね。契約書というのは、自分と相手との取り決めのための文書になります。だから相手あってのこと。
自分の場合でいえば、技術ライセンスの相手、ライセンサーは、100~200ぐらい相手がいます。その相手が全部電子契約に切り替えるとは思えないんですよね。さらに後述しますが、巷にある電子契約サービスというのはいろいろな種類のサービスが存在しますから、その取引先によって、その使っている電子契約サービスが違っていたりして、それを全部自社のほうで吸収するのは、なかなかしんどいと思うのです。
相手が従来通り、紙がいいといえば、そうならざるを得ないし、やはり現実問題、契約書は紙と電子契約の両立という形が現実的なんじゃないかな、と予想します。
契約というものは、相手あってのものですね。
厄介だと思うのは、相手、取引先から電子契約使いたいんだけど・・・と来たらどう対応するか、ということです。(笑)これは日夜、自分が恐れおののいていることです。(笑)だからこそ、電子契約について、いまからいろいろ勉強しているのです。
自分が、電子契約について、一番納得いった文章が下記の文言です。これが一番妥当なんじゃないかな、現実的なんじゃないかな、ということ。電子帳簿保存法とか、もう請求書や伝票など紙で保存できなくなる時代、このデジタル化の波が押し寄せているときに電子契約は、どうしても考えないといけないことだけれど、下記の文言が一番妥当なんじゃないかな、と思いました。
電子契約に切り替える最も大きなメリットと期待されているのが「印紙代の削減」「事務労力・コストの削減」です。導入を検討する際には「月間、どれくらいの契約締結数があるのか」「どれくらい印紙代を支払っているのか」「契約締結のために事務工数がどれくらいかかっているのか」を試算してみましょう。
明らかなメリットがあれば電子契約を利用すべきですが、中には判断に迷う企業もあるはずです。たとえば、印紙代は契約類型・契約金額の大小により異なります。契約締結数がそれほど多くない場合は、コストメリットを実感しにくいかもしれません。また電子契約への切り替えは事務フローの見直しを必要とします。今のフローが上手くいっており「余計な手を加えたくない」という場合は、導入を見送るのも一つの見識です。
ただし、長い目で見ればデジタル化の潮流は避けて通れません。自社で切り替えなかったとしても、取引先から持ちかけられることを頭の隅に留めておきましょう。きたるべき時に備えて“契約締結数がここまで増えたら・これぐらいの事務コストがかかったら電子契約に切り替える”など、ある程度の導入ラインを考えておくことをお勧めします。
でも間違いないことは、企業の場合は、これは個人単位でできることでは到底なくて、法務部門、IT部門が先導を切って進めていかないといけないことですね。
それは間違いないことだと思いました。
最後に、いま巷にでている電子契約サービスの一覧表を添付します。こんなにたくさんのサービスが存在するんですね。機能別表にしてあります。
費用として月間1万円弱の費用がかかるようです。
2022-02-12 17:49
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