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オペラを音楽として捉える [オペラ]

東京・春・音楽祭の「ローエングリン」は、自分にとっては2019年の「さまよえるオランダ人」以来の3年ぶりのオペラ演奏会形式になると思う。


いろいろ準備を始めているのだが、いろいろ思うところがある。


オペラは、やはり普通のオーケストラ・コンサートと比較してとてもエネルギーがいるし、予習も大変。クラシックにあまり馴染のない人にとっては、オペラは非常に敷居が高いものと思われているのでは、ないかと思う。


普通のオーケストラ・コンサートと比較しても、とっつきにくく難しいものだと思われているのではと思う。


オペラを鑑賞したいのだけれど、どうやって予習をしていけばいいのか。


自分は、全然オペラの専門家でもないし、自分のクラシック鑑賞人生の中でも、やっぱりオペラよりオーケストラ・コンサートのほうが比重が高い。


自分もオペラを鑑賞するときは、必ず海外に行くときは、オペラを観るようにしている。絶対オペラは入れる。その国のオペラハウスを体験したいからである。


そして国内、新国立劇場のときは、自分の気になる演目の時は通うようにしている。


自分の場合は、オペラ形式(舞台をともなう形式)よりも演奏会形式(オペラの演目をやるのだけれど、舞台を伴わず、歌手の歌と、オーケストラの演奏だけをともなう形式)のほうが比重が大きいので、ふだんのオペラ鑑賞の準備をする場合、この演奏会形式のときの準備の仕方を取り入れているのに特徴がある。


そんな、オペラを観ようとしている人にとって、どうやって予習をしていけばいいのか、初めての人に自分の体験談が役に立てば、と思い日記にすることにした。


全然スタンダードではないかもしれないけど、また邪道な変わったやり方なのかもしれないけど、お役に立てればと思う。


本筋はオペラ専門の音楽評論家の先生方に丁寧に誘われるのがいいと思うし、そんな手ほどき本もたくさん市販されていると思います。


自分はそういう誰かの手本を学んだことはなく、いっさい我流のやり方で、自分一人で、自分に合った方法、を身をもって体験してきて、こうすれば実際オペラ鑑賞するときに、十分事足りる、という経験に基づいている。


だからこれも人ぞれぞれで、自分で開拓していくのが一番いいのかもしれない。



オペラのもっとも大事なところは、あらすじ、その物語の登場人物と、どういう物語なのかを学ぶことである。この演目のストーリーを知らないとまったく楽しめないと思う。


まずあらすじ、どういう登場人物がいて、その登場人物同士がどのようなやりとりをすることで、どういう物語が成り立っているのかを把握することである。


これは専門の対訳の本が売っているけれど、もうネットにいくらでもある。ウィキペディアでも詳しく掲載されているし、オペラ対訳プロジェクトのような、オペラの対訳を専門にやっている方々のあらすじもある。


オペラの登場人物の名前って、ドイツ語だったり、すごく覚えずらくて、そこでくじけちゃう人がいるかもしれないけど、そこはがんばれ!まず、ちゃんとそのドイツ語の登場人物を覚えないことには、始まらないのだ。


オペラの場合は、例外もあるけれど、大体勧善懲悪の世界である。善人の主人公とそのヒロイン、そしてそれを邪魔する悪役。大体そのような構図である。


だから非常に覚えやすいのである。


あらすじを予習するときは、あまり詳しく記載されているものは、あまりお勧めできない。はじめて理解するときは、難しすぎて頭に入らないからである。(笑)


オペラ導入に失敗する人は、まず大抵ここで失敗する。


あらすじは、非常に簡潔に、やさしく書かれているものを選ぶことが肝要である。オペラに入り込めるかどうかは、その物語に対して自分なりの征服感ができるかどうかにかかっているからである。とにかくやさしい簡潔なあらすじで、その物語の全体のアウトラインを掴むこと。


これが1番大事な導入の導火線である。


そして自分なりにストーリーのアウトラインを掴めたら、つぎにちょっと詳しく書かれているあらすじのほうを勉強してみる。そうすると頭への入り方が全然違うのである。


ウィキペディアはあまりお勧めできない。詳しすぎるからである。最初からこれを読んだら、頭に入らなくてくじけちゃうからだ。


あらすじは、オペラ対訳プロジェクトのものが、すごく簡潔で短くてわかりやすいと思う。


そうやって、あらすじを簡単なものから複雑なものへと複数読破して、大体どういう登場人物がいて、どのような物語なのかがわかるのである。


そうしたら、その演目の映像ビデオを購入しよう。映像ソフトにはきちんと日本語字幕が入っているものを選ぼう。自分はよくチョンボで日本語字幕が対応していないソフトを買ってしまい、英語で見てたりします。(笑)


実際そのオペラを家で見てみるのである。


もうこれは本番と言っていい。あらすじには、簡単に書いてあるけれど、実際のオペラは2~4時間の長編ものだから間に入る歌手のセリフなど、いろいろな自分の知らない内容が出てくる。困惑するかもだけど、でも全体のあらすじを知っているから、全部見終わった後に、ちゃんとつじつまが合ってどういう物語なのか、が腹落ちするのである。


オペラというのは総合芸術だと言われている。オペラには、鑑賞すべきポイントがたくさんあるのだ。


その物語のこと、歌手の容姿、そして歌声、音楽、そして舞台芸術。これらが全部総合して組み合わさって構成されているのがオペラであり、まさしく総合芸術なのだ。


オペラの世界では、”演出”という言い方をするのだが、その舞台装置(舞台にセッティングされている装置)や歌手の衣装などの時代考証、そして実際のその演じられている演目の態様。


オペラではこの演出の仕方次第で同じ演目でも全然違う作品になってしまう。この演出の仕方自体で、素晴らしい作品にもなりえるし、駄作ということで悪名高いことになってしまうこともあるからだ。


オペラにとって、この演出こそ一番のキーポイントなのかもしれない。その監督、演出家のその作品に対する意図する解釈、こういう想いを反映させたいなど、その監督の考え方が作品に故意に反映されるからだ。


オペラ演出はある意味、学問である。いろいろな表現方法、芸術的な表現方法など、無数に考えられることができ、非常に複雑怪奇である。


その作曲家が作曲した当時の時代考証で、原作にオリジナルな古典的な手法で演出される場合もあるし(衣装もその当時の時代考証で)、読み替え版といって現代の時代考証で、いまの現代ドラマのごとく、まったく原作とは違った解釈で読み替えたりする場合もある。


もうそれは演出家次第である。


もう表現方法は無数にあると言っていい。


自分は古典的演出のほうが好きです。オペラは原作に忠実で、やはりその当時の背景で演じられるのを観るのが好きです。2016年にバイロイト音楽祭に行ったときの、ワーグナー「神々の黄昏」は、原作とは程遠い、現代読み替え版でさっぱり理解できませんでしたから。(笑)


舞台装置は作るのにお金がかかる。だからそうそうそのオペラの演目をやるたびに作れるものでもない。一度どこかで作ったら、それを世界中のオペラハウスで使いまわすのである。


演出も含め、その舞台装置ともども、そのビジネスユニットのことをプロダクションと言っている。


つぎに大事なのは、やはり歌手の歌だと思う。声楽というのは、まったくドラマティックだ。声がもたらす感動というのは、オーケストラで得られる興奮とはまったく別次元のさらにその上をいく興奮度のすごいアドレナリンを発するものだ。


自分がよく経験するのは、クラシックのコンサートに行くとき、オーケストラだけの器楽のコンサートと、歌手が入る声楽入りのコンサートでは、もうその興奮度が遥かに声楽のほうがすごい興奮するのだ。


あのボルテージの上げ方、最高潮に達した時のあの興奮クライマックス。人間の声と言うのは、本当に神的に奇跡なのだ。


この歌手の歌、声を楽しむというのがオペラのもうひとつの醍醐味だ。オペラ界には、本当にたくさんの歌手がいて、みんな独特の特徴的な声をしている。


声質に声量。


この2つのパラメータが基本にあって、そこに声色や艶、音域などのその歌手独特のクオリティが加わる。歌手は声音域に応じて、男性ならテノール、バリトン、バス、女性ならソプラノ、メゾソプラノ、アルトとに区分される。


オペラに行くときは、この歌手が出るから行くとか、その出演歌手に左右される場合も多い。


歌手の声を楽しむというのも、オペラのとても大切な要素なのである。自分は、とくにこの歌手の声を非常に重要視していて、オペラ鑑賞したときに一番自分にグサッと刺さってきて、あとでじ~んといつまでも自分の記憶に残像として残るのが、この歌手の声である。


自分にとってオペラ鑑賞で一番大事なポイントだと言っていい。


ある演目のオペラを勉強したいときに、まず映像ビデオを買って、どんな演目なのか勉強してみる。これが本当にありきたりの手法だけど、王道だ。


舞台芸術はやはり見てなんぼである。これを何回か見れば、もうオペラの予習としては十分である。


自分の経験から、何本もビデオを買うことはないので、1本選ぶなら、やはり古典的解釈の演出を選びたい。


映像ソフトでは堪能できない生舞台の鑑賞の醍醐味としては、やはりピットに入っているオーケストラの演奏の出来具合も重要だ。映像ソフトとではあまり気にならないけど、生舞台の演奏では、このオーケストラの演奏もその舞台が感動するかどうかの大きな要因になる。


というか、観ていて、聴いていて、気になって仕方がないのである。(笑)素晴らしいオーケストレーションだと、それだけその舞台が映えるものである。


鑑賞日記には、必ずこのオーケストラの演奏の出来が書かざるを得ない。


ここまでは普通一般の人のオペラへの接し方だと思う。


自分は、これだけではなく、その音楽というのを非常に重要視する。


オペラは総合芸術、舞台芸術だと言われるが、自分にとっては音楽が非常に重要なのである。やはりどの作曲家のオペラを観るかによるが、音楽のイケていないオペラはダメだと思うのである。


ふつうの役者さんたちが演じる舞台と、オペラが違うのは、オペラは音楽を伴っていて、歌手の声、そしてオーケストラの音で成り立っている舞台なのである。


だから自分は、オペラの予習をするときは、単にそのオペラを学ぶだけではなく、その音楽を完全掌握しておきたいという願いが強い。


自分はある演目のオペラの予習をするときは、映像ビデオだけではなく、必ずその演目のCDを買うのだ。あらすじを勉強して、映像ビデオでどんなオペラがわかったら、あとはひたすらCDでそのオペラ音楽を聴いているのだ。


あらすじ、映像ビデオはある意味、予習の初期段階の話。中期から後期、すなわち本番の鑑賞日までは、ひたすらCDで音楽を聴いている時間のほうが圧倒的に長い。


オペラを音楽として捉える。長い音楽の絵巻物語として捉える。こういうスタンスが、オペラへの接し方にとって大切なことなのではないのかな、と自分は思うのである。


オペラを音楽として捉えた場合、長丁場の音楽絵巻物語は、本当に聴いていてドラマティックだ。もちろん歌手のセリフを音として聴いているので、何を言っているのかわからないけれど、全然いいのである。


音楽として、その作品を最初から最後まで何回も聴き込んで自分の頭に叩き込む。


そうするとひとつの達観した境地に達することができる。


それはCDとして音楽として、そのオペラに接していると、何を喋っているかわからないけれど、その音楽を聴いているだけで、いま第1幕のどこら辺、第3幕のどこら辺というのが自然とわかってくるものなのである。


映像を見てなくても、全然わかる。


音楽を聴いてオペラを理解する。


これが自分のオペラの接し方の肝である。この接し方をものすごく大切にしている。


自分がオペラの舞台芸術も好きだけれど、やはりオペラ音楽が好きということもあって、たどり着いた境地である。


そうすると舞台を実際鑑賞する上でメリットも出てくる。自分は視力が悪いので、字幕掲示板がよく見えないことが大半だ。字幕掲示板は大抵の場合、ステージの左右両端に設置されている場合が多いので、舞台を見ながら、その都度、左右を振り返るというのがかなりしんどいと思うことがたびたびである。


だから最近の自分は字幕掲示板を見ないほうが多い。舞台に集中しているほうがなんかそのオペラを楽しめるような気がするのだ。字幕を見なくても、その舞台のシーン、歌手の歌、そして演技、そして音楽だけで、いま何幕のどこのシーンなのか、ということが大体わかるからである。


もちろん悩みもあって、せっかく字幕翻訳家の精魂込めた翻訳の内容をきちんと自分も鑑賞したい気持ちが山々なのであるが、やはり字幕掲示板の位置と視力の関係上、なかなか自分のオペラ鑑賞のウィークポイントでもある。


そういうこともあって、オペラを予習するときは、まずあらすじ、どういう物語なのか、登場人物のお互いの関係をちゃんと自分の中で把握しておくことが大事なのである。


そしてなによりも音楽。


これがあるから自分のウィークポイントも克服できるのである。


”オペラを音楽として捉える。”


これはそのオペラのアリアなどをきちんと自分なりに勉強しておくべきである。オペラのアリアというのは、そのオペラの歌の魅せどころの場所のことである。


オペラのアリアは、ネットの解説で、アリアごとに、きちんとした題目付きで解説されている。第何幕で歌われるのかも、書いてある。


でも音楽CDを聴いていると、どこ部分がその有名なアリアなのか、分からない場合が多い。


しかし、そういう場合は、いまネットで、そのアリアごとにYouTubeで紹介されていたりするのだ。


たとえば、”ローエングリン アリア”と検索すると、ローエングリンで歌われるアリアごとにYouTubeで紹介されていたりする。オペラ対訳プロジェクトがやっているようだ。


オペラアリア-1.jpg



実際、その聴きたいアリアを選んで再生すると、


オペラアリア-2.jpg



このようにドイツ語と、その対訳が表示されながら、その背景でそのアリアの音楽、歌が流れるようになっている。音楽、歌は著作権の関係から昔の音源を使っている場合が多いようだ。


これをアリアごとに聴いていって勉強して行けばいい。大抵のオペラのアリアは、このようなYouTubeになって挙がっている。


そうやって、その演目のアリアを覚えていくのである。アリアを完全に覚えれば、オペラの音楽CDを聴いていても、全然理解度が違ってくる。もう全然最高です。


”オペラを音楽として捉える”


これは自分がオペラを鑑賞するときに、一番心掛けている、肝に命じていることだと言っていいかもしれない。オペラ形式の舞台ではなく、演奏会形式のコンサートのときは、こういう予習方法がとても役に立つのである。


そんな理屈めいたことではなくて、もっとぶっちゃけで言うと、自分はオペラの音楽CDを聴いているほうが好きなのである。昔から自分に合っていると思うのである。


そしてこれも自分の経験からなのだが、あるオペラを初めて勉強しようと思ったときに、その最初に勉強した映像素材がその後の自分のその作品のリファレンスになる、ということ。


これは理屈では説明できないのだけれど、不思議といままでがそうなのだ。その後、その最初の作品を凌駕する素晴らしい作品に出会えたとしても、その一番最初に学んだ映像素材を超えることができないものなのだ。


ずっと自分の中でリファレンスとしてあり続ける。


だから忠告したいのは、最初の映像素材を選ぶときは、慎重に!ということである。


自分がオペラを初めて体験したのは、ワーグナーの「ニュルンベルクのマイスタージンガー」


勉強用、予習用として一番最初に購入したのは、これ。


171.jpg


「ニュルンベルクのマイスタージンガー」

 ブルゴス&ベルリン・ドイツ・オペラ(日本語字幕付)






もうその後、オペラ形式、演奏会形式を含め、何回観たかわからないくらい、この演目は数えきれないくらい鑑賞してきたが、自分の中で「ニュルンベルクのマイスタージンガー」といえば、もうこのベルリン・ドイツ・オペラの作品なのである。マイスタージンガーを観るときは、必ずこの映像素材を観ないと自分の心が落ち着かないのである。


自分にとって、ザックスはヴォルフガング・ブレンデルだし、ヴァルターはイェスタ・ヴィンベルイ、エヴァはエファ・ヨハンソンなのである。


もう永遠にそうなのである。


不思議なものである。









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