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清水和音 ラフマニノフ ピアノ協奏曲全曲演奏会 [国内クラシックコンサート・レビュー]

ピアニスト清水和音さんが、デビュー30周年記念公演ということで昨日8/6(土)でサントリーホールでラフマニノフピアノ協奏曲全曲演奏会を開催し、そのコンサートに行ってきました。


指揮は高関健さんで東京交響楽団。


清水和音

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高崎健

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サントリーホール

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ラフマニノフのピアノ協奏曲の全5曲を1夜で弾くというとてもチャレンジなコンサート で、1番~4番はもちろんのこと、パガニーニの主題による狂詩曲も含むというまさに 贅を尽くしたコンサートで、ラフマニアンの私にとってはもう堪らないコンサートでした。


実際の曲順はこうでした。(↓)


ピアノ協奏曲第1番

ピアノ協奏曲第2番

(休憩)

ピアノ協奏曲第4番

パガニーニの主題による狂詩曲

(休憩)

ピアノ協奏曲第3番



13:30~17:00のマラソンコンサート。本当に清水和音さんご苦労様という感じです。先日の序章の日記で私の各曲との出会い、思い入れなどを記載しましたが、最大の注目曲は文句なしに3番。


何を隠そう清水和音さんは「ラフマニノフのピアノ協奏曲第3番を弾きたいためにピアニストになった」と明言しているほどの3番の大ファン。今回の演奏でも曲順を3番をオオトリに持ってくる思い入れの強さ。


かく言う私も3番の中毒患者。マラソンコンサートの最後のエンディングは、あの3番の最終楽章のグルーブ感(盛り上がり)で凄い感動するんだろうな?と思っていましたが、期待通りの素晴らしい演奏でした。最後のシャットダウンのエンディングでは思わず背筋がゾクっとする大興奮。この曲の生演奏を聴くたびに経験するこの感覚、今回もきちんと体験することができました。


つぶやきでご存知と思いますが、じつは最初の1,2番のときはいまいち下手な感じで、全曲ともこんな感じなのかな?と思わず凄い心配しましたが、4番以降無事持ち直し、パガニーニ・ラプソディーも素晴らしく、最後の3番は頂点の最高の演奏でした。やっぱり3番の完成度は清水和音さんがもっとも思い入れのある曲だけのことはある、と思いました。


ラフマニノフのピアノ協奏曲で最も有名なのは2番。ところが清水さん自身過去に「僕は3番が好き。2番には興味なし」って何度か発言されているんだそうです。


まさにそれを地で行くようなくらい2番と3番では演奏の完成度が違いました。

まったく別人と思うくらい。(笑)本当に正直な方なんですね。(笑)


じつはこの公演のために自分のiPodに予習用として1,2,3番の曲を入れて聴いていました。この日も開演前の1時間も前にサントリーホールに到着したので、ホール前のカフェテラスで座ってiPodを聴いていたのです。



ラフマニノフ ピアノ協奏曲1番&2番 アンスネス、パッパーノ指揮ベルリンフィル


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ラフマニノフ ピアノ協奏曲3番 アルゲリッチ、シャイー指揮ベルリン放送響


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アンスネス盤は1,2番の演奏ではもっともお気に入りで上手いと思う演奏。3番は正直これは、と思うCDがないのが現状ですが、このアルゲリッチ盤はよく聴き込んでいた演奏。


さっそくホールが開場になってさっそく座席を探すと、今回に限り座席場所を事前に確認していなくて、座席を探す段階でなんと1階の最前列であることが判明!

なんとこの席!(↓)


1階1列25番


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私から見上げたステージ風景


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なんと目の前にピアノがドカンと(笑)。演奏する清水和音さんの姿は見えません。指揮者の高関健さんの姿は結局最後まで見えませんでした(笑)。ヴァイオリンの協奏曲や木管、金管楽器の協奏曲と違ってピアノ協奏曲の場合は、座席の位置で視覚的にかなり楽しめるか、そうでないかが決まります、私の場合。


オーディオマニアの意見によると、ピアノの位置に対して向かって右側の座席がピアノの音響が一番素晴らしく聴こえる位置だそうで、今回の私の席はまさにそう。確かに聴こえてくるピアノの音はCDの聴こえ方と全然違い素晴らしいものだった。みんなの言っていることは確かに間違いじゃない。


でも私の場合、やはり指が見えないと駄目なのだ。だからピアノに向かって左側の位置がいい。演奏している指の動きを観て、流れてくる音と相まって感動するのです。つまりピアノ協奏曲の場合視覚と聴覚の両方の相互効果がないと楽しめないのです。だから向かって右側だと顔しか見えなくて音だけが聴こえてくるので欲求不満になります。


だからピアノ協奏曲の場合の座席位置は結構コンサートを楽しめるか重要なファクター。


今回の席はまさにピアノを下から見上げるような感じで清水和音さんの顔さえ見えなかったのでいかがなものか?(笑)という感じ。


さてコンサート開始。


●ピアノ協奏曲第1番


第1楽章は、印象的なファンファーレで開始され、ピアノのオクターブの強烈な下降音型が繰り出される楽章です。ところが出だしのピアノの下降音型の部分、なんかテンポが凄く遅くて、しかもタッチのかろやかさがなくてかなり雑な印象?うん?下手だな?(笑)事前に聴いていたアンスネス盤は通常の演奏よりかなり速めのテンポでウマすぎな演奏なので、あぁ~、これは事前の予習が失敗したな~と思いました。予習は大抵海外の超一流の演奏家のCDを聴いて、うまい演奏を当然のように聴いている訳で、実際の国内演奏家の生演奏を聴いたときに、がっかりしちゃうというケースが多いのです。今回もそのパターンかな?と思いました。それでこれ以降の全曲も同じような出来だったら正直がっかりだな、楽しみにしていたのに困ったなと思ってしまいました。


第2楽章は、幻想曲とも言える書風。協奏曲におけるごく一般的な緩徐楽章です。この楽章のメロディは本当に美しいですね。この楽章に関しては出だしの悪い印象と違って素晴らしいと思いました。でも第3楽章でも結局波に乗れない感じで、全体としていまいちの印象。


●ピアノ協奏曲第2番


ご存知ラフマニノフのピアノ協奏曲の中で最も有名な曲。でも前述のように「僕は3番が好き。2番には興味なし」の清水さんの過去の発言にもあるように、その発言を裏付けるような出来でした。理由は1番と同じで、全体的にテンポが遅くて、なんかタッチが雑で曲全体的にバランスが悪い感じがしたのです。オケとのバランスも悪いです。2番はぜひいい演奏を聴きたかったので残念でした。でも誤解のないように言っておきますが、これは私感ですので、他のみなさんは素晴らしい演奏だったのかもしれません。ただ私がイメージしていた曲のイメージ像と違ったので違和感を持っただけなのです。


現にこの後の4番以降は見事に復帰するので、やっぱり1,2番に関してはアンスネスがウマすぎなのでしょうか。コンサートに対して予習することの欠点を認識した次第でした。



●ピアノ協奏曲第4番


休憩を挟んで4番に。今回の全5曲の中で唯一の不安要素だったのは4番。この曲はあまり馴染みがない、というか普段あまり聴かない。(笑)


清水和音さんも、もちろんピアノ協奏曲第3番をじっくり聴いてほしいと思うが、今回は特に第4番に注目してほしいと願っている、と言っていました。これはふだんあまり演奏される機会に恵まれないコンチェルトだが、だからこそこうした機会に耳を傾けてほしいと。


予習はしませんでした。これが正解でした。ピアノの重音で演奏される荘厳な雰囲気の第1主題が印象的。出だしから鍵盤タッチが安定していてバランスが良くて落ち着いて聴いていられました。先入観がないのが良かったのかもしれません。休憩を挟んで清水さん復活したな、と安心しました。


4番はどんな曲なのか記憶にないので、第1印象は、う~ん、ラフマニノフのロマンティック路線とは全く違う異質な印象を受けました。1,2,3番とはあきらかに毛色が違います。


ロマン派のラフマニノフの作風を望んでいる人であれば、ちょっと受け入れ難い印象を受けるんじゃないか、と思いました。でも私は演奏が安定してオケとのバランスも素晴らしく好印象でした。


最初の1,2番が絶不調で全曲こんな感じ?と心配だったので、本当に安心して、予感ですが、これ以降は上手くいくような感じがしたのです。



●パガニーニの主題による狂詩曲


この曲は3番同様、私はうるさいです。(笑)ご存知パガニーニの主題を、味を変え、品を変え、24種類のいろいろなバリエーションで変奏していく変奏曲です。第18変奏があまりに有名ですが、私はこの部分だけでなく曲全体としてトータルな流れとしてこの曲を捉えるのがこの曲を楽しむコツだと思っています。


清水さんの演奏も、この曲の場合もとてもオケとの掛け合いのバランスがよくタッチも安定していて安心して聴いていられました。大変良かったです。最初の序奏の後、分解された主題の”ラミ”が骨格で演奏され、その後に主題が変奏の後に登場するという画期的な手法。前半の一番の頂点は第4変奏でもうひとつの分解された主題”ラドシラ”をいろんなバリエーションで演奏していくこの部分です。最初のエクスタシーを感じるところです。


次に第7変奏、ここにはラフマニノフが生涯こだわったディエス・イレの旋律が隠されています。ディエス・イレはロシアの教会の聖歌の旋律のことでラフマニノフは自分のいろいろな曲にこの旋律を入れています。ロシアを亡命するという悲劇の人生の根底に潜む旋律で、革命によって失われたロシアの教会の響きへのラフマニノフのこだわりの部分だと思うのです。この変奏曲の中で唯一パガニーニの主題とはかけ離れているメロディで私は特別な想いがします。


そして第18変奏。映画やCMなどに使われていたりするあまりに有名な旋律ですが、この前の第17変奏に伏線があります。凍えるような寒く長いロシアの冬を感じさせる旋律で、そこから春の訪れを感じさせるように第18変奏に切り替わる瞬間がなんとも言えないエクスタシーなのです。そして第18変奏は非常に甘美なメロディーでせつなく響く官能的な響きで最高ですね。


もうこれ以上の説明は不要でしょう。(笑)


清水さんの演奏、非常に素晴らしかったです。



●ピアノ協奏曲第3番


そしていよいよオオトリの3番。清水さんに「ラフマニノフのピアノ協奏曲第3番を弾きたいためにピアニストになった」と言わしめた曲。


そして私自身もこだわりのある曲。


オーケストラによる短い序奏の後にピアノがオクターヴで奏する第1主題が全体を貫く共通主題となっており、全曲を統一する役割も持っています。この出だしの部分の演奏で清水さんの演奏は非常に安定して、まさにCDで予習していたイメージ通りなのです。これはいけると思いました。さすが清水さんのこだわりを持っている曲だけのことはあると思いました。


1,2番のときの演奏とは全く別人かと思いました。


第2楽章ではオーボエで提示される憂鬱だが美しい旋律を中心に、その他様々な重要な旋律を扱って進んでいき、清水さんの演奏に私もどんどん引き込まれていきます。もっともこだわりのある3番で自分のイメージ通りの安定した演奏に私はいいわ~(笑)とご満悦。


アタッカによって休みなく第3楽章へ続き、そしてこの曲で私が最も興奮するところ、終盤のエンディングにかけてのグルーブ感(盛り上がり)、テンポを上げて一気に盛り上がり、その頂点で派手な軍楽調の終止に全曲を閉じる部分です。この賑やかな軍楽的な終結は「ラフマニノフ終止」と呼ばれているもので、この部分で私はいつも体全体に稲妻のようなゾクっとくるのを感じるのが快感なのです。


私はこの「ラフマニノフ終止」を経験したくて、いつもこの曲の生演奏に出かけるのです。日本のピアニストでは小山実稚恵さんがこの曲を得意としていて(というかこの曲だけでなくラフマニノフ弾きの名手として有名)、小山さんのこの曲の公演はいままでかなりの回数通っていますが、この瞬間は何度味わっても凄い快感なのです。


そして清水さんの演奏のこの瞬間もまさに期待通りの快感。


この終わった瞬間、となりに座っていた高貴な上流階級の感じの貴婦人の方は、「わぁぁぁ~」という決して意識的ではない無意識に出てきた叫び声を挙げていました。


本当に素晴らしい一瞬で素晴らしい演奏でした。さすがこだわりの曲だけある、と思いました。


清水和音のラフマニノフを聴くなら、やはり3番ですね。


マラソン演奏会で、最初の1,2番では絶不調だったのが、後半から最後にかけては素晴らしい名演を聴かせていただき、波はありましたが、本当に大満足でした。


清水和音さん、お疲れ様でした。







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