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インディーズ・レーベルの終焉 [オーディオ]

北欧スウエーデンのインディーズ・レーベル BISレコードが今年で創立50周年を区切りに、Apple Music Classicに身売りすることになったそうだ。


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Gramphone



英国のGramphoneが情報ソースだが、衝撃的だ。


原文記事によると、ロバート・フォン・バールによって設立されたスウェーデンのクラシックレーベルであるBISは、Apple Music ClassicとAppleが所有するクリエイティブサービス会社Platoonの一部になります、とのこと。


”一部になる”という表現は微妙で、BISというレーベルが残ったままなのか、いまは詳しくわからない。BISの分解ということではなく、Appleに組み込まれるという感じなのだろう。



「数日前、BISレコードは50周年を迎えましたが、この半世紀の間に私たちの小さなチームが成し遂げたことを非常に誇りに思っています」


「BISの専門は、コアレパートリーに会費を払いながら、若いクラシックアーティストや興味深い生きている作曲家を育成し、私たち全員が将来にわたって代表する音楽の宝物を保護することでした。そのために、慎重に検討した結果、80歳になったばかりで、Appleファミリーの一員になることを決定したというかなり重大なニュースを発表できることに興奮しています。」


「私たちは、私たちの名誉ある歴史をどのように維持し、構築するかを長く懸命に考え、私たちの使命を推進するパートナーと、世界中の新しい聴衆にクラシック音楽をもたらすためのグローバルプラットフォームを拡大しました」


「Appleは、革新と音楽への愛情の独自の名高い歴史を持ち、 クラシックの次の時代の到来を告げる理想的な家であり、クラシック音楽とテクノロジーが調和して機能する未来を構築するための真のコミットメントを示しています。」


声明はまた、BISのすべてのスタッフがAppleに編入後も保持されることを言及している。


・・・だそうです。


この流れは、今年の3月にあのアリーナ・イヴラギモヴァを擁するHyperionレコードがユニバーサル・ミュージックに合併されたニュースを聞いたときにあ~ついにクラシックのインディーズ・レーベルも片っ端から大手メジャーレーベルに吸収合併され淘汰される時代がやってきたのかな~という予感はした。でもはっきり断言はできなかったので、様子見していたのだが、ついにBISもそうなってしまった、ということは、この流れは結構瀧水のように一気にやってくるかもしれない。


PENTATONEは?Channel Classicsは?CHANDOSは?Simaxは?


この先どうなる?


自分のオーディオマニアとしての人生は、結局このSACD高音質レーベルのマイナーレーベルを推すことだった。

SACDサラウンド、マルチチャンネルで、そしてメジャーレーベルが契約しないようなクラシック業界でも無名な若いアーティストを第一線、表に出す、そしてメジャーレーベルが知らないような無名の作曲家の曲を発見してそれを世に知らしめることで、そのレーベルとしての存在感、オリジナリティ、独創性を売りにする。そういう戦略だった。メジャーレーベルに対するアンチティーゼのような存在でもあった。


クラシックのインディーズ・レーベルというのは、そこが魅力だったのだ。


音のクオリティがよくて、そしてそういうフレッシュな若手演奏家による音源。そこがインディーズ・レーベルの魅力だった。メジャーレーベルの音源が、ひどく退屈でつまらないものに思ったものだ。インディーズ・レーベルのほうが尖っている感じで格好良かった。


栄枯盛衰・・・


移り変わりの激しい技術の世界で、ずっと長く続けることの難しさということかな。


自分は配信時代になって、ずっと思っていたことがある。

それはレーベルとしての存在感、アピールが難しくなったな~と感じたことだった。

ストリーミングは、シングル単曲での勝負なところがあるので、いわゆるアルバムとしての魅力、レーベルとしての魅力がうまく出せないな~と感じていたところがあった。


昔は、PENTATONEの新譜、BISの新譜、Channel Classicsの新譜というように、レーベルの括りで、新譜を漁っていき、そのときにその毎月リリースされる新譜で新しい新人の若い演奏家の存在を知り、そしてその魅力を紹介する。。。そういうのが自分の常套作戦だった。だからレーベル単位なのだ。


なぜかというとレーベルごとに音の作り方、録音のクオリティや、録音のよさの特徴がすごい違うので、レーベルごとに括っていかないといけなかった。そのレーベルごとに違う音の作り方を楽しむのが、オーディオマニアの楽しみだった。レーベルごとに抱えている録音エンジニアのその技術にいろいろ違いがあって、それを楽しむのが、オーディオマニアの作法でもあった。いわゆる録音ポリシー、レコーディングポリシーみたいなものが、レーベルごとに存在していた。


また、そのレーベルごとに抱えているアーティストもそれぞれユニークでオリジナリティがあって魅力的だった。



ところがストリーミング時代になると、配信のリストは、レーベルとは無関係のアーティスト単位の検索であったり、聴きたい曲単位の検索であったり、あるいはその検索した楽曲に基づいて音声波形解析で似たような楽曲のリコメンドであったり。。その3パターンだ。


自分の嗜好とは関係ない新しい曲との出会い、驚きがなくなった。そしてレーベル単位で新譜を聴くということもなくなったような気がする。いままでレーベルという括りでそのカラーを打ち出してきたインディーズ・レーベルは、配信時代になると、その売り出し戦略が難しくなるな~とはずっと思っていた。


自分がずっと思っていたことだった。


物理メディアの衰退、配信時代への移行に伴って、やはりそのいままでの収入源、収益の上げ方の構造を根本的に見直さないといけなくなったのであろう。インディーズ・レーベルは配信時代を迎え、大きな岐路に立っているに違いない。


各々の経営者は、自分のレーベルをこの先、どのように末永く維持していくか、真剣に考えた末でのメジャーレーベルへの合併吸収ということなのだろう。なによりも、自分のレーベルに所属しているアーティスト達をこれからも守って行かないといけない。


う~む。時代だな~と思う。

技術の世界はやはり10年スパンで、どんどん激しく変貌していきますね。”同じ”をずっと続ける、ということはありませんね。


これからもクラシックのインディーズ・レーベルのメジャーレーベルへの合併吸収は続くかもしれない。自分達のアーティストを守っていくためには!


ところで、BISが身売りを発表したApple Music Classicalって知ってる?(笑)

日本にローンチしてましたっけ?


米国ではサービス開始しているのかもしれませんが、日本はまだローンチしてませんよね?


先の日記で、自分はストリーミングの場合は、ロック、ポップスとクラシックは同じ土俵上ではダメだ、ということを主張しましたが、Apple Musicは、クラシックのストリーミングを分けたんですね。それはいいことだと思います。


でもBISの今後の新譜がApple Music Classicalのほうにリリースされたら、日本では聴けないよ。(笑)


しかしBISのSACDサラウンドのあのサウンドがもう聴けなくなるかと思うと、悲しいな~。あのワンポイント録音のダイナミックレンジのすごい広い録音、録音レベルがすごい低いんだけど、それはいかにD-Rangeが広いかの証でもあった。BISの録音はどれもレベルが低かった。全体的な印象としてすご温度感の低いクールなサウンドだった。あれはSACDマルチチャンネルだからこそ味わえるサウンドなんですよね。


ストリーミングであのテイストが出せるのか?

Dolby Atmosなどの3Dオーディオ、空間オーディオであのテイストを出せるのか?


BISレーベルのヘッドクォーター


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BISのスタジオ


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BIS創業者のロバート・フォン・バール


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BISのあの独特のサウンドを作り出すトーンマイスターたち。BISの録音制作を手掛けてきたトーンマイスター5人が独立して、「Take 5 Music Production」という別会社を設立していた。この会社はどうなるのか?


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そしてなによりも、BISに所属しているアーティストたち。アンネ・ゾフィー・フォン・オッターやカミラ・ティリング、鈴木雅明&BCJ、小川典子、エフゲニー・ズドビン、その他もう数えきれないアーティストたち。これからこの人たちの音源を聴きたいと思ったら、Appleのストリーミングで聴くことになるのでしょうか?(笑)



まっロバート・フォン・バールも悩みに悩んだんだろうな・・・。自分たちのいままでの50年間で築き上げてきた財産(アーティストや音源)をどのように今後守っていくか。それがAppleへの売却という結論だったのだと思う。いままでの音源財産を全部ネットコンテンツ、オンラインコンテンツへの移行することを考えたんだろう。


英グラモフォン賞で、年間最優秀レーベル賞を獲得したこともあるBISレーベル。

まさにインディーズ・レーベルとして頂点にまで立った。後悔はないだろう。若いアーティストの育成を大いに評価された。その宝のようなアーティストたちや録音音源を守っていく上でも筋の通った戦略なんだろう。


この動きは、Appleによる専用のクラシックアプリであるApple Music Classicalの立ち上げや、3月のユニバーサルによるインディペンデントレーベルであるHyperion Recordsの買収など、クラシックレコーディング業界における今年の重要なポジショニングになると思われる。



アリーナ・イヴラギモヴァ擁するHyperion Recordsのユニバーサル・ミュージックへの合併吸収も衝撃であった。あのハイペリオン・レコードがDGやデッカと同じ会社の一部となるのだ。


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Gramphone




ユニバーサルミュージックグループ(UMG)は、マルチグラモフォン賞を受賞した英国のクラシックレーベル、ハイペリオンレコードを買収した。


ハイペリオン(1980年にテッド・ペリーによって設立された)は、ドイツ・グラモフォン(1898年設立)やデッカ・クラシックス(1929年設立)と並んでUMGのポートフォリオに加わる。ハイペリオン・レコードは、そのユニークなアイデンティティを維持しながら、ユニバーサルミュージックUK内の独立したレコーディングレーベルであり続け、サイモンペリーがディレクターとして残る。


UMGのGlobal Classics & Jazz担当社長兼最高経営責任者(CEO)であるDickon Stainer氏は、この買収を歓迎し、「Hyperionはレーベルの宝石であり、ペリー家が成し遂げた素晴らしい仕事を継続し、ハイペリオンがアーティストや音楽ファンの心の中で占める特別な場所を維持し、構築することにコミットしている」と述べた。



2023年7月には、英国の名門ハイペリオン・レコードのストリーミング配信がスタートした!


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創業以来43年、数多くの賞を受賞してきたクラシック・レーベルハイペリオン・レコードが、本日からストミーミング配信をスタートさせた。


ハイペリオン・レコードは1980年に設立されて以来、先駆的な録音を生み出してきたイギリスの名門クラシック・レーベル。マルカンドレ・アムラン、アンジェラ・ヒューイット、サー・スティーヴン・ハフなどの著名アーティストが在籍しており、レーベル設立以来、約2,500枚の録音をリリース。今年3月、ユニバーサル ミュージックグループの傘下に入ったことが発表され、話題を集めていた。


本日、ストリーミング配信が開始されたのは、ハイペリオンの歴史を代表する錚々たるアーティストの代表作を含む200作品と3枚の新作アルバム。新作は、グラミー賞を受賞したタカーチ弦楽四重奏団によるドヴォルザーク作品と、スティーヴン・レイトン指揮ケンブリッジ・トリニティ・カレッジ合唱団によるアンセム曲集、そして、高い評価を受けたオーランド・コンソートとなっている。今後、追加のカタログ・リリースが随時予定されており、

来年の春までにはレーベルが保有する全てのアルバムがストリーミング可能となる予定。



「ハイペリオン・レコードというかけがえのないレーベルにとって、世界中のストリーミング・プラットフォームに登場するということは非常に大きな意義があります」- ユニバーサル ミュージックグループ クラシックス&ジャズ部門統括 ディコン・スタイナー



BISもハイペリオンも結局この判断に到達した要因は、これからの配信時代に、きちっとした配信プラットフォームを基盤としたレーベルにお世話になりたいということなのだろう。BISもハイペリオンも自分たちでそういうプラットフォームは持っていなくて、特にBISなんかは、Channel ClassicsやPENTATONEと違ってことストリーミングに関しては、あまり大きなニュースになることもなく、配信というビジネスエリアではあまり目立った動きはしていなかったレーベルだ。


それが今回の決断の大きな要因になっているように自分は思うのだが、どうだろうか?


あくまで記事の文面を読んだ限りの印象だが、BISもハイペリオンもその音源やアーティストをそのまま維持しつつ、メジャーレーベルの”一部”となることを強調している。分解やマージということではなく、あくまで一部になるということである。だからそんなにいままで大きく変わることはないのではないだろうか?資本が違うようになった、というだけだと思う。


PENTATONE,Channel Classics・・・明日はどこのインディーズ・レーベルがメジャーレーベルに吸収されるのか?


クラシック インディーズ・レーベル、いま時代とともに大きく淘汰されようとしている。


ただひとつ、これだけは確実なことがある。


BSのSACDマルチチャンネルのディスクはそのうち廃盤になって入手困難になるであろう。そうすると、あのSACDサラウンドで聴いていたBISサウンドのあのテイストはほとんど聴くことが不可能になるということだ。ストリーミングの3Dオーディオ、空間オーディオではあのテイストは出せないんじゃないかな?いま所有しているBIS SACDは大事に永久に保持しておくべきである。そのうち中古市場で大変なプレミアがつくことになるであろう。(笑)








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