ESOTERIC 名盤復刻シリーズ [オーディオ]
オーディオメーカーESOTERICがリリースするEsoteric SACDは、クラシックやジャズの過去の名盤のCDを復刻してSACDとしてリリースする人気シリーズである。
昔、自分が愛聴していた過去の名盤のCDがSACDとなって発売されるのであるから、やはりオッとなって、買ってしまうのではないだろうか?
しかもEsoteric SACDの場合、装丁も美しいし、パッケージ・メディアとして高級感があるので、コレクターアイテムとしてもマニアには堪らないものがあると思う。
ESOTERICとしても狙っている層が、一般層の多売りを狙うというよりは、オーディオマニア層による小売りで貴重なマニア感を感じる層を狙っているようなところがあって、大きなマスを狙っていないような感じもする。
なかなかビジネスのコンセプトとしてしっかり狙いを定めているようなところがあって感心する。オーディオメーカーがリリースするSACDなので、オーディオマニア寄りのターゲット層なのだと想像する。
オーディオメーカーのESOTERICでは,これまでRCA,ソニークラシカル,英DECCA,蘭Philips,DG,EMIの音源を独自にSACDハイブリッド盤で販売してきている。世界の名高いレーベルの大半をカバーしていることになるのである。
Esoteric SACDは、2008年からスタートし、現在では120タイトル以上のSACDをリリースしているのではないだろうか?着々とコレクションを積み重ねている。
また完全限定生産なのである。在庫を売り切ったら生産終了である。だからリリースされたと同時に買わないといけない。(でもアマゾンとかで、旧譜を売っているサイトも多いですね。)
一方で、なにかと煩いオーディオマニアの間では、44.1/16のCDスペックからのアップコン(upconvert)で、真のSACDとは言えず、”なんちゃってSACD”である、音質もそれほど向上しているとは思えない、これはSACDではない、となかなか手厳しい声も多い。
自分はEsoteric SACDは過去に3枚ほど買ったことがあって、音質にはそれなりに満足していた。やはり自分の気に入っているCDの名盤をSACDで持つことは気分がいいものである。
今回Esoteric SACDの新譜がまた3枚ほどリリースされた。自分は、この新譜3枚も購入し、ここはひとつEsoteric SACDについて、徹底的に調べてみて、日記にしてみようと考えた。旧譜もさらに買い増し、合計10枚ほどのコレクションを持つことができた。
自分自身が、Esoteric SACDのことをよく知りたいだけである。Esoteric SACDとはどういうコンセプトのもとに、どのように作られているのか?
エソテリック・リマスタリングSACDプロジェクトの総帥、大間知基彰氏
ESOTERIC SACDプロジェクトの総帥は、エソテリック社長(当時)の大間知基彰氏、その人なのである。このEsoteric SACDが出たころ、この大間知さんを特集した記事を見つけたので、紹介してみたい。大変興味深い。Esoteric SACDの概念、コンセプトがここにあるんだな、ということがわかります。
エソテリック(Esoteric)の新たなマスタリングによる「スーパーオーディオCDシリーズ」は、これぞ名演、名録音、と感動して何度もレコードが擦り切れるほど聴いた体験を、何とか現時点の最高レベルの技術で、そのオリジナルの音に肉迫した音の出るディスクにしたい、という熱い思いから生まれたものなのである。
芸術作品はいつでも、誰かの夢や憧れから始まるもの。CD化されて聴いているこの音は、マスターテープにはもっと“いい音”で収録されているのではないか、それがこの程度の音になっているのは、初期のデジタル録音のシステム、あるいはマスタリングから、ディスク製造にいたる工程に問題があったからではないか。こう思って、過去の名盤をマスタリングからやり直してみたい、と考えた人物が、その当時エソテリックの社長であった、大間知基彰(おおまちもとあき)氏なのである。
最終的にディスクから引き出される音楽のクオリティは、録音時の出来(品質)がもちろん最重要なのであるが、同時に録音以降の工程の精度も大きな要素となっているのではないかと考えたのは、じつに正しいことであった。
ディスクの音質評価では、録音現場のプロデューサーやエンジニアの力量が重要視されることが多いのだが、ヨーロッパでは同じぐらいの比重でマスタリングエンジニアの腕が問われる。日本でCDに編集やマスタリング
の担当者名を表記するようにしたのは、日本コロムビアのデノン(DENON)レーベルが最初。
の担当者名を表記するようにしたのは、日本コロムビアのデノン(DENON)レーベルが最初。
これは同社が早くから、海外で録音製作をしていたので、ヨーロッパ的発想を熟知していたからである。エソテリックの大間知氏が、マスタリングの重要性にいち早く気づいた理由は次の2つが主なものだと思われる。
まず、大間知さんはティアック時代から長年、テープレコーダーの開発に携わってきたから、マスターテープの音を聴くことにかけては、他メーカーの設計者やエンジニアよりも体験が豊富だったこと。
そしてもう1点は、タンノイのスピーカーを扱っている関係で、海外の音楽に触れる機会が多かったこと、内外のさまざまな規模のホールでの生の演奏の音と、マスターテープの音、出来上がったディスクの音、といういろいろな段階での音を聴く機会に恵まれていたことである。
このことからわかるのは、大間知氏の“いい音”のリファレンスは、すでに発売されている完成品のディスク、マスターテープ、録音の現場、コンサートホールの音、という具合に何段階もあるということである。
大間知氏は、グラモフォンにしてもデッカにしても、過去の名盤と呼ばれる録音の、マスターテープの音を聴くと、現在流布しているCD盤との違いがかなり大きいと感じていた。
そのことに関する大間知さんのインタビュー
「もっとも大きな違いは、マスターテープの音には“ストレス”がないんですね。窮屈さがどこにもなく、自然で滑らかなんです。そして、空間に音が浮遊する感じがマスターテープで聴くとじつに鮮明です。よく私たちは奥行き感とか、臨場感とかいいますが、そういう言葉では表わしきれない、柔らかくて、芯がしっかりしていて、しかもホールで聴くように、音が空気中にきれいに浮かんでいるのです。
十分に説明することは難しいのですが、このマスターテープの音を、限りなく忠実に生かしたCDを現在のわれわれの技術で作りたいと思ったのが、リマスター盤を作ることになったもっとも大きな理由です。」
しかし、大間知氏の理想を生かしたディスク(SACD/CD)を作るには、新たにマスタリングをしなければならない。ということは、プライドの高いヨーロッパのメーカーを説得して、オリジナルのマスター音源を入手しなければならないのである。CBS・ソニーやビクターとは違った次元の交渉力が必要なのである。
ティアックもエソテリックも相手のレコードメーカーとは系列関係にない、ハードメーカーである。その畑違いのハードメーカーがレコードメーカーのマスター音源を借りて、マスタリングをやり直し、新たなディスクを作ろうというのであるから、常識的には無理な話なのである。
その困難を乗り越えて、エソテリックのリマスター盤SACD/CDは誕生した。
エソテリックはレコードメーカーではないので、ヒット作を作ろうというレコード産業の至上命令から離れたところで制作ができる。そこで、オーディオマニアが喜びそうな、高音質ディスクを作るというだけの試みなら、アナログ時代からも何度も何種類もの作品が作られてきた。
しかし今、エソテリックのリマスタリングに込められているのは、音に関心の高いオーディオマニアを納得させることは当然のことであるが、さらにもっと本質的な音楽的品質の向上なのである。それは簡単にいってしまえば「マスターテープの音を、限りなく忠実に生かしたCDを現在のわれわれの技術で作りたい」という1点に尽きる。いかに、マスターテープに記録されている、録音時の演奏家や制作者、技術者の理想に近づくか、もてるオーディオ技術のすべてをそこにつぎ込む、ということ。
そして、大間知氏とエソテリックをこのように突き動かしている要因は、“いい音のオーディオで聴く音楽の喜び”以外の何ものでもない。
自分がよく聴くのは、マスターテープで聴くとすごいいい音なのに、それをマスタリングして、そこからCDになったら、なんでこんなに悪い音というか普通の音になってしまうの?
この落差こんなにがっかりすることはない。
これは自分は本当によく耳にする話です。
録音がいい、というのは、演奏家が演奏して、それをマイクで集音して、マルチトラックに収め、それをあとで編集してミックスダウンする。この作業の良し悪しが、録音がいいか凡録音になるかの一番の大きな分かれ目になるのは、よくご存じの通りで、これは絶対間違いないところだと思う。
ついつい自分もここだけをメンションすることも多い。
でも実際は、そのオリジナルマスターテープから原盤をつくる作業のマスタリングの工程もじつはいい録音を作る、とても大事な工程である、ということは意外と見逃されている、メンションされていない部分ではないか、と思うのだ。
大間知氏は、そのマスタリングの重要性に着目したのである。
でもそこには、過去の名盤をリミックスすることは権利上できないけれど、リマスターならできる、という見地があったのではないだろうか、と自分は想像する。
リミックスとリマスターの違い。
演奏家、ミュージシャンが演奏して、それをレコーディングしてCDになるまでの工程はこのようになっている。
マルチマイクで録って、それをHDD(いまはメモリーカードなのかな?)などにマルチトラックで録音する。それを2chや5.1chに落とし込むことをミキシング(ミックスダウン、あるいは単にミックス)という。
ステレオなら2ミックス。
そしてそれをCDの原盤に落とし込むことをマスタリングという。
リマスター、もしくはリマスタリングというのは、この2ミックスを原盤に落とし込むときに、デジタル処理でノイズを除去したり、歪みをとったり、楽音を鮮明化したりして、高音質化アーカイブしたりして、再度原盤に落とし込み直すことである。
だから昔作った2ミックス音源を加工するわけではない。
でもリミックスというのは、マルチトラックの音源をもう一回ミキシングし直すことをいう。これは、いわゆるやり直しに近い工程だから、昔の曲のイメージががら変になってしまうのは当然である。
それは当時と最新とでのエンジニアの技術力も違えば、使っている編集用のオーサリングツールの進歩も全然違う。エンジニアの技一つで、音場感を出したり、奥行き感を出したり、立体感を出したり、音の隈取りをしっかり出すようにするとか、全体の音のバランスなど自由自在に料理できる。
まさにこのミキシングの部分でエンジニアの力量が問われる部分なのだと思う。この2ミックスのところをやり直したら、そりゃ出来上がったものは、大昔の当時にミックスしたものと全然違うものができるのは当たり前だと思う。
ここ2ミックスの部分、というのはある意味、「聖域」に相当するところなのではないだろうか。
だから大間知さんの狙っているところは当然リミックスの聖域ではなくて(そんなことは権利上できない)あくまでリマスタリングの部分なのである。
すでにあるオリジナルマスターテープからマスタリングするときの音質を改善させて、当時よりも高音質で原盤に落とし込む、マスタリングする、そこを狙っているのではないか、ということだと理解しました。
大間知さんは、このリマスタリングの部分には自社の技術ですべて賄える自信があったのだと思う。ここは自分の領域だけですべて完結する。
問題は、そのオリジナルマスターテープをどのように入手するのか?
あくまでオーディオメーカーであるエソテリックが、クラシック業界で名だたるレーベル、RCA,ソニークラシカル,英DECCA,蘭Philips,DG,EMIのオリジナルマスターをどのように入手するのか?
すべてはここなのだ、と思う。
ここは企業秘密なのであろう。
調べても当然出てこなかった。(笑)
ただ、ライナーノーツに記載されているファクターに、44.1/16からアップコンバートされ、96/24でリマスター処理をしている、ということが記載されている。
もともとのオリジナルソースの信号諸元はCDスペックの44.1/16なのである。
この記述を見て、世の中のオーディオマニアは、なんだぁ~SACDといっても結局CDからのアップコンじゃないの?という非難が出ているのは、この記述の部分に起因するのだろう。
映像の世界でも音声の世界でも一度削除してしまった情報は、いくらアップコンしてもその削除した情報は元に復元できないのである。アップコンされた信号は、あくまでその前後左右の画素、音素情報から補間して算出された情報であって、真にそこにあった情報ではないのである。
だから偽高音質、偽高画質なのである。
もちろん昔ソニーなんかがやっていた高画質の画素情報をメモリーしておいて、低画質に対する相関値をもとめ、その相関係数を乗ずることで元の高画質を復元するというような技術もあったような記憶がある。これは単なるアップコンより全然いい。この手の技術はいまはもっと進化しているでしょうね。映像も音声の分野でも。
いまのテレビの4K/8Kアップコンはその最たる最新技術なのではないでしょうか・・・。
だから録音現場ではマスターで録るときは、最高のスペックで録っておくというのは常識なのである。逆に高い諸元の信号から、ダウンコンバート、圧縮・削除していくのはなんら問題ない。
Esoteric SACDは、本当に昔のクラシック、ジャズの名盤であるから、マスターはアナログテープだと思うんですよね。
それを「44.1/16からアップコンバートされ、96/24でリマスター処理をしている。」
はたしてこれはなにを意味するのであろうか?(笑)
ちなみに、いまのSACDレーベル、たとえばPENTATONE,BIS,Channel Classicsなどは、録るときは96/24で録っています。あるいは192/24とか。PCMハイレゾで録っています。それはDSDは編集できない信号処理だから。まずPCMのハイレゾで録って、PCMで編集、ミックスダウンして、最終的にDSDにコンバートします。
それであれだけ素晴らしい録音ができるんだから、録音って結局スペックじゃないよね、と思うところです。
オリジナルマスターテープに記録されているのが、44.1/16のデジタル記録で、それを96/26にアップコンしてリマスター処理をしている、ということなのでしょうか?
マスタリングは、ミキシング(ミックスダウン)して作られたマスターテープから、曲順の決定や、フェードイン・フェードアウトなどのクロスフェード作業、最終的な曲のレベルや音質、音圧調整、曲間の編集などを経て、CDカッティング用マスターテープ(現在はプリマスターCD-RやDisc Description Protocolファイル)をつくる作業。
(この過程のCD-Rが結構闇に出ていたりして、それを聴いて、すっげぇいい音とびっくりする、というのはオーディオマニアの世界ではよく聴く話です。)
リマスタリングは、古いマスター(主にアナログ音源)からこの作業を繰り返すのである。そのとき、この2ミックスを原盤に落とし込むときに、デジタル処理でノイズを除去したり、歪みをとったり、楽音を鮮明化したりして、高音質化アーカイブしたりして、再度原盤に落とし込み直す。
こんなことをPCM 96/24でやっているということなのでしょう。
そして最終はDSD 2.8にコンバートするという感じでしょうか?
オリジナルマスターテープを現地レーベル入手しているのか、単なるCDからやっているかは謎です。(笑)そこは触れないようにしておいたほうがいいのかもしれません。
各ディスクで録音状況に違いはあるが、通常のESOTERIC盤と同様に「マスターに残された音、そのものを再現する」ように心がけている。使用するマスターの選定から、最終的なDSDマスタリングの行程に至るまで、妥協を排した作業が行われている。
特にDSDマスタリングにあたっては、DAコンバーターとルビジウムクロックジェネレーターに、入念に調整されたESOTERICの最高級機材を投入、またMEXCEL ケーブルを惜しげもなく使用することで、貴重な音楽情報を余すところなくディスク化する。
エソテリックのマスタリングの特徴は、すべての工程で最新の高性能機器が使われていることはもちろんなのだが、中でも特に注目すべきなのは、エソテリック製のルビジウムによるマスター・クロック・ジェネレーター「G-0Rb」を使用していることである。通常デジタル機器には水晶発振モードのクロックが使われているのだが、これは超高精度ルビジウム発振器によるもので、このジェネレーターで各機器のクロックを一元管理している。
作業工程上にある機器の時間軸をキッチリと合わせることは、仕上がった音の質感に大きな効果があることが今はよく知られていること。これはデジタル初期と違う最大のポイントのひとつだそうである。
デジタルとアナログの根本的な違いは、すべての信号処理が計算によって成立していること。この計算が正確に行なわれるためにも、機器の時間管理が精密でなければならない。さらにこれはアナログでも同じ、基本的なことであるが、電源、伝送ケーブルの品質も音に大きな影響がある。
その点でも、エソテリックのマスタリングは抜かりがない。
このエソテリックの絶対的なマスタリング技術で使用している機器のクレジット情報は以下のようになっている。
D-01VU:D/A Converter
G-0Rb:Master Clock Generator(Rubidium)
Cables:Mexel Cables (BNC,XLR,AC cable)
G-0Rb:Master Clock Generator(Rubidium)
Cables:Mexel Cables (BNC,XLR,AC cable)
この3つのEquipmentは、マスタリングをする上で彼らの最大の武器、アピールポイントなのであろう。結局すべてはここなんでしょうね。
このEsoteric SACDのSACDリマスタリングは、JVCマスタリングセンターで行われている。正確には、JVCKENWOOD Creative Media Corporationである。
灯台下暗しであった。(笑)
Esoteric SACDのマスタリングをやっていたエンジニアは杉本一家氏であったようだ。JVCマスタリングセンターの代官山スタジオには、Sugimoto Studioという専用スタジオもある。
杉本一家氏は、「ESOTERIC名盤復刻シリーズ」のマスタリングエンジニアを、2008年「カーゾン/モーツァルト:ピアノ協奏曲第20番・第27番」から「モーツァルト、フランク&ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ集」まで、延べ118タイトルご担当された。
大間知さんと杉本さんとでEsoteric SACDのマスタリング作業をSugimoto Studioでやっている様子。
なんと!この日記を書くために調べていて初めて気づいたのであるが、杉本一家さんは、2019年にご逝去されておられた。
存在を知ることが大変遅くなり(しかも灯台下暗し)、いまご逝去を知り大変恐縮ですが、この場にて謹んでご冥福をお祈りします。
代わりに現在は、東野真哉氏が後継者として本シリーズのマスタリング・エンジニアを務められているようだ。今回新しくリリースされた新譜3枚も東野さんがマスタリングエンジニアである。3枚とも聴きましたが、素晴らしい録音でした。
以上が、自分がEsoteric SACDについて調べて理解した内容である。
Esoteric SACDとはオーディオメーカーESOTERICが販売専門店のみのルートで販売している特殊のSACDである。クラシック・ジャズの過去の名盤をエソテリック独自のマスタリング技術・製盤技術でSACDリマスタリングしている名盤復刻のSACDディスクである。
このように要約できるのではないだろうか?
では、つぎの日記で、自分がもともと購入していたディスク3枚と、評価用として新たに買い増した7枚、合計10枚のEsoteric SACDについてレビューしていくことにしよう。
2021-03-14 16:24
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