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Esoteric SACD [ディスク・レビュー]

ESOTERIC名盤復刻シリーズ、Esoteric SACDの全容がわかったところで、自分が今回コレクションした10枚について音質含めレビューすることにする。


残念ながらオリジナルCDとの音質比較はやらないことにする。オリジナルCDをラックから探し出す手間と(持っていないブツもある。)、音質比較する時間も大変であるからである。


単純にリマスターされたSACDの絶対値評価とする。



Esoteric SACDは、ライナーノーツは、すべてオーディオ評論家の諸石幸生さんが執筆されている。その今回SACDリマスタリングされた元々の音源の指揮者やアーティストの紹介、そしてその録音に至る経緯、そしてそのオリジナル盤のプロデューサー・エンジニア(トーンマイスター)情報の紹介が書かれている。


そしてオリジナル音源のライナーノーツの曲の紹介が補充資料として追記されている。




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ヴィヴァルディ:ヴァイオリン協奏曲集《四季》
&協奏曲集《調和の幻想》 作品3から
イ・ムジチ合奏団


今回リリースされた新譜です。


これ?いまから60年前の 1957年にリリース発売された録音ですよ。まず驚くのは、ノイズ感がまったくなく、S/Nのよい、かなりクリアな音になっています。1950年代の録音といえば当然モノラル録音だと思うのだが、それをステレオにして音場感もそれなりにあって、ここまでクリアな音に仕上げるのは大したものだと思います。半面、音のアタック感がなくなり、角の取れたツルツルした音になり過ぎているのが、やや楽器の音の実在感に欠けるというか、やや不満だけれど、それはオリジナルCDがそうなのかもだし、これだけ復刻できればいいのではないでしょうか。


イ・ムジチのヴィヴァルディ四季といえば、世界中のベストセラーになりました。




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ショパン:12の練習曲作品10・作品25
マウリツィオ・ポリーニ(ピアノ)


これも今回リリースされた新譜。


審査員のルービンシュタインに、ここにいる審査員の誰よりもうまいと絶賛させた1960年のポリーニのショパンコンクール優勝。それから自分の自己研磨のため10年のブランクを経てデビューしたのがこの録音。正確無比でまるでコンピュータのようなその精緻な打鍵にはまったく圧倒されます。これぞ、ポリーニだよな、という感じ。全般に言えるのは、やはりノイズがなくてS/Nがいいことですね。ピアノの生の音、とても本物に近くなったような感じがします。オリジナルCDより生のピアノの音の質感に近い。




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R.シュトラウス:アルプス交響曲&変容
ヘルベルト・フォン・カラヤン(指揮)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団


これも新譜。


カラヤンはシュトラウスとも交流があり、彼の曲をよく取り上げていたが、この録音は、1980年にリリースされたものである。巷で言うほどの戦車のように鳴らし過ぎ、レガート多用のカラヤン節というほどそうかな~とこの録音を久しぶりに聴いて思う。(でもちょっとは思うかな?)


でも近年のオーケストラの技術の進歩はやはり凄いとあらためて感じる。最近のアルペン交響曲の方がずいぶんとSophisticateされていると思うからだ。


カラヤン時代の録音は完璧だと当時は思っていたものでしたけれどね。


オーケストラ・サウンドの中域の張り出し感などとても強烈になって、サウンド自体により迫力が出たような気がしますね。D-レンジもより深くなったような・・・。オーケストラの鳴りの深さの振幅がより大きくなったような気がします。やっぱりオーケストラはスケール感が1番大事ですね。




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マーラー:交響曲第9番
レナード・バーンスタイン
ベルリンフィル


自分が1番初めにEsoteric SACDを買ったのは、このディスクが最初でした。もともとの手持ちだったディスク。バーンスタインとベルリンフィルとの初顔合わせによる汗握る緊張感の中で演奏された奇跡のマラ9。傷も多い演奏でしたが、後世に語り継がれられるマラ9の名盤のひとつだと思います。このSACDがニュースリリースされたときは即買いだと思いました。期待にたがわぬ出来で自分は満足。そんなにオリジナルCDとの極端な差はあまり感じませんでしたが、ノイズ感とスケール感はアップしているかな。




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ブラームス 交響曲第4番
カルロス・クライバー指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団


これはクライバーの名盤です。クライバーの名録音といえば、DGのベートーヴェン5&7番とこの4番、そしてOLFEOのベートーヴェン4番だと思いますが、それと一歩も譲らない名演奏、名録音なのが、このDGのブラームス4番です。これは素晴らしい。自分がクライバーを聴くときは、この盤は外せないです。だからEsoteric SACDでこの盤がリリースされると聞いたとき、思わず買いました。もともとのオリジナルCDも録音がいいのですが、リマスタリングすることで、さらにD-レンジも深くなってスケール感もアップしました。音の鮮度感も素晴らしいです。これは自分のヘビロテ・ディスクです。何回聴いても惚れ惚れとします。クライバーの美学かな?




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ブルックナー:交響曲第9番  
ジュリーニ(カルロ・マリア) 


ジュリーニは、自分にはあまり縁がなかった指揮者で、録音もあまり聴いた記憶がないし、音源もあまり持っていないので、これを機会に買うならジュリーニにしようと思いました。


この録音は、1988年6月にウィーン・ムジークフェラインで収録されたものである。今回のレビューは、やはりオリジナルとの聴き比べをしていないというのが、かなり痛いと思うのだが、この録音はもともとかなり良かったのではないかと推定する。D-rangeが深くなった、と自分は簡単にいうけれど、リマスタリングでそのパラメーターを改善できるものなのか?もともと録ってあったオリジナルの器の大きさに収まっているその音データそのものをさらに大きくするということは可能なのか?そんな疑問も自分にはある。ムジークフェラインのあの残響感と、合奏の重量感など申し分ない仕上がりになっている。ブルックナー9番は第2楽章がいいですね。




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ブラームス:ハンガリー舞曲集  
クラウディオ・アバド
ウィーンフィル


ブラームスのハンガリー舞曲集といえば、もうコンサートのアンコールに使われる名曲というか、いかにもフィナーレを飾るにふさわしいアンコール向け曲として有名であろう。


自分は、この有名なハンガリー舞曲集を、このアバド&ウィーンフィル盤で勉強した。だからEsoteric SACDを買い増しで選ぶとき、問答無用でこれを選択したのである。


この録音は1982年にゾフィエンザールで収録されたものである。


この録音を聴くと安っぽい音がする。(笑)S/N感があまりよくなく、オーディオ述語で表現するならば、サ行の子音が強くて耳障りな安っぽい音である。ホールの空間の音があまり高級ではない。


最初自分のシステムとの相性を疑ったが、他ディスクではそうでもないので、やっぱりこの盤独特のサウンドなのだろう。自分は、これはもともとのオリジナルの録音があまりよくないか、ゾフィエンザールの音響なのだろう、とずっと思っていた。 


これがESOTERICのリマスタリングを施すことで、どこまで聴きやすくなるか、を確認したかった。


結果はかなり改善していると思う。サ行の感触がだいぶ消されていて、だいぶ高級感が伴うようになったと思う。ホール感もずいぶん感じられるし、オーケストラ・サウンドとしてかなりいい塩梅になったと思う。リマスタリング恐るべし!と言いたいところだがやっぱりもともとの録音がよくありませんね。(笑)


このライナーノーツで、諸石幸生さんが書いておられるのだが、


もとより、アバドという指揮者は、情熱一辺倒の音楽家ではない。むしろ音楽の全体像を考慮しながら、目の前の課題に立ち向かいそこでの課題に挑戦していく指揮者であろう。


自分もまさにそう思う。アバドはとてもクールで知的な指揮者であって、決して情熱1本やりで押すような人ではない。彼の音楽性には、そんな客観的な冷静さがつねに内在する。でもきっと中には熱いものを持っているんだよね?ってな感じです。




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モーツァルト:ピアノ・ソナタ集  
マリア・ジョアン・ピリス


ピリスといえば、モーツァルト・ソナタ。もう彼女のモーツァルト・ソナタ全集はそのアーティストの看板と言うべき絶対所持しておくべき全集。そんな全集から数曲を選集したのが、このEsoteric SACDである。もうリリース宣言と同時に即座に買いました。


自分は、今回の買い増しを含め、全部で10枚のEsoteric SACDを持つことになったのだが、やっぱりリマスタリングの効果がとてもよくわかるのは、オーケストラより、ピアノ・ソロのほうかな、と思いますね。オーケストラは規模が大きすぎて違いを見つけるのは難しいですね。自分の想い込みのところがたぶんに多いですね。


でもピアノ・ソロははっきり分かります。それだけ対象の情報量が少ないから相違を見つけやすいですね。やっぱり思うのは、ピアノの音がより本物の生音に近い感じがするようになりました。そして透明感、クリスタル感があって、生音だけが持ちうる、マイクをいったん通してしまうと実現が難しいあの生々しさ、煌びやかさ、1音1音の質量感がとても実現できていますね。とても美音。これはいい録音だな~と思います。


自分は、今回の10枚の中で、このピリスのこのディスクが1番優秀録音だと思うし好きです。



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バッハ トッカータ、パルティータ2番、イギリス組曲2番
マルタ・アルゲリッチ


アルゲリッチのピアノはどうしても買っておかないといけないでしょう。
アルゲリッチが37歳の1980年の時の録音リリースである。


バッハというのがとても斬新だったし、彼女の久しぶりのリリースということで注目を浴びたアルバムであった。


ピアノの美音ぶりは、ピリスのところで述べたこととほぼ同じである。


でもこの録音、かなりオンマイクです。バッハのあの均等のリズムで迫ってくる感じは、オンマイクで録るほうがいいかもしれませんね。


ここで、また諸石幸生さんのライナーノーツから自分の気に入ったところを抜粋。


当時LPで発売されたこのバッハアルバムであるが、敬愛する黒田恭一さんが書かれていたことだが、当時の会話で印象深いものとして思い出されるのは、


「彼女が初来日した時のリサイタル会場で、期せずして周りの席の人から呟かれた「えー、アルゲリッチって女だったんだー。」という声だった。


それらの話は、彼女の腕の力強さや、手のひらの厚みといったことに、発展していったのである。私は、そうした話題の楽しさに、我を忘れて聞き入ったものである。


わかるわー。楽しいですね。 




アルゲリッチ ショパン.jpg
ショパン:ピアノ・ソナタ 第2番<葬送行進曲付き>
/第3番/アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ/スケルツォ第2番/
マルタ・アルゲリッチ


今回の録音はアルゲリッチが1967年と1974年に録音した、ショパンの2つのアルバムからピアノ・ソナタを中心に選出したものである。


これくらいマイクとの距離があったほうが、ピアノ録音としては普通っぽくていいですね。落ちついて聴けます。


ショパンはやはりいいです。
バッハとかショパンをもっと頻繁に聴かないといけませんね。


アルゲリッチは1965年のショパンコンクールの優勝者。もともとショパン系のピアニストで、彼女の名声もショパンと共に高められてきました。


ショパンを弾いているときのアルゲリッチは、とても魅力的です。


以上が10枚を通しで聴いてみた感想レビューです。

そんなに悪い音じゃなかったですよ。(笑)



そりゃ新しい録音でDSD録音であれば、情報量が豊富でいい録音なのかもしれませんが、その新しい録音と比較して、音が悪い、なんちゃってSACDである、というのはちょっと争点がずれているのではないでしょうか?


彼らが目指しているのはそこじゃないんだと思います。


あくまで過去の名盤を、技術進化に伴い、マスタリングと製盤技術のプロセスに注目して、彼らの技術を惜しげもなくつぎ込んで、オリジナルマスターテープのあのとんでもなくいい音に近づけよう、少しでもいい音にしよう、というリマスタリングが一番の目的なのではないでしょうか?


もともとのオリジナルCDより音がよくなっていれば、それで目的を達しているのではないでしょうか?


自分もEsoteric SACDのことを、あまりよく知らなかったのですが、自分で調べていて、それを書いてみて、それがようやくわかりました。


Esoteric SACDはもともとあまり売ろうという商売っ気はないですね。(笑)


オーディオメーカーが売るSACDソフトという、ちょっとオーディオ的な高級ブランド感が漂っているのも特徴ですね。(装丁やパッケージが高級感があっていいですね。)


あまり商売っ気がないから、一般販売ルートでなくて限定ルートで限定数なので、新譜リリース後すぐに完売、ソールドアウトしてしまいますね。


彼らはそれでいいと思っているのではないでしょうか?

そういうあくまでニッチな市場で満足しているのではないでしょうか?


これからも埋もれている過去の名盤をどんどん発掘してリマスタリングしていって欲しいです。


今度はこの名盤をやろう!というのは誰が決めているのでしょうか?


最終的なジャッジは大間知さんなのでしょうか・・・








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