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体験!東京藝術大学奏楽堂 [コンサートホール&オペラハウス]

5年ぶりに東京藝術大学キャンパス内にある奏楽堂でコンサートを楽しんできた。


前回は2015年3月に同じ東京・春・音楽祭の演目で、その年はリヒテルの生誕100周年ということもあって、リヒテルが愛したプーランクやモーツァルトを演奏しようという粋な企画で、トウキョウ・モーツァルト・プレーヤーズの若々しい演奏家たち、そして指揮に2014年に日本デビューを果たした期待のヴァハン・マルディロシアン氏、ピアノに数々の国際コンクール優勝で世界中で音楽活動をしているリュドミラ・ベルリンスカヤさんを迎えて、素晴らしい演奏がおこなわれたのだった。


前半は、ディヴェルティメント、ピアコン17番、交響曲第31番とじつにモーツァルトの美味しいところ品揃えのような感覚で、十分楽しませてもらった。


後半のプーランクの舞踏協奏曲(オーバード)は、舞踏、いわゆるステージの半分を使ったミニバレエ付きの演出で、とても新鮮であった。


懐かしいです。つい最近のことのようです。


そのとき、この新しいほうの奏楽堂を体験して、全体に木目調の木のホールで暖かい響きでいいホールだなぁと感心したものだった。


そのとき「暗騒音」というタイトルの日記で、奏楽堂のホールの音響の印象を書き綴ったのだが、ホール探訪記という形でもう一度正式に日記にしたいと思ったので、いまこうして書いている次第である。


5年ぶりの東京藝術大学。


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いまやコロナですっかり部外者立ち入り禁止になってしまった。
なんと、食堂の利用も遠慮ください、との但し書きがある。(笑)
もう大浦食堂は体験できないんですね。


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大学キャンパス内にある新しい奏楽堂ももちろんだが、自分にとっていわゆる旧奏楽堂のほうもとても思い入れ深い想い出がある。


旧奏楽堂(旧東京音楽学校の奏楽堂)


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上野公園の中にあって、本当に緑の自然が美しい。


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この旧東京音楽学校というのは、いまの東京藝術大学音楽学部の前身で、その施設だった奏楽堂は、日本最古の木造の洋式音楽ホールで、いまでは国の重要文化財に指定されている。 この建物の2階にある音楽ホールは、かつての滝廉太郎がピアノを弾き、三浦環が日本人による初のオペラ公演でデビューを飾った由緒ある舞台なのである。


2012年の4月に、この歴史的建造物の奏楽堂を体験した。


そのきっかけは、ここで、フィルハーモニア・アンサンブル東京というユニットの演奏会が開かれるためだった。 指揮はベルリン・フィルハーモニー管弦楽団で長年ヴィオラ奏者を務めた土屋邦雄さん。 このフィルハーモニア・アンサンブル東京というのは、土屋邦雄さんを慕い、2009年にソニーフィルハーモニック主催のメサイア演奏会のために結成されたアマチュアオーケストラで、このオーケストラの命名は、土屋さんによるもので、土屋さんが主宰していて活動したアンサンブル・フィルハーモニアベルリンに由来するものなのだ。


この奏楽堂は、なんでも1958年に来日した作曲家ヒンデミットを迎えて、当時東京藝術大学の学生だった土屋さんが、ヒンデミットの無伴奏ヴィオラ・ソナタを演奏したという縁がある。


そしてそのことが土屋さんがドイツに留学することになるきっかけになったのだ。


その由緒あるステージに50年以上経過したいま再び土屋さんが指揮者として立つ。その当時はいかなる想いだっただろうか?


そんなとてもメモリアルな演奏会に、土屋さんのお誘いを受けて、ゴローさんがヴァイオリン奏者として参加することになった。その応援のために私やエム5さんがかけつけたのだった。 


奏楽堂の中に入ると、本当にクラシカルな歴史的建造物という感じで趣がある。うかつに触れると壊れてしまいそうな繊細感がある。


じつは当時の奏楽堂は、毎週日曜日をはじめ、火曜、木曜と9:30~16:30まで一般公開されていて中に入ることができた。(入場料300円) しかも日曜日の14:00~15:00は2階にある音楽ホールでコンサートが開催され、鑑賞することが出来たのだ。


この日曜日コンサートは藝大の学生が演奏している。

自分はこの藝大生コンサートのチェンバロ・コンサートも体験したことがある。


旧奏楽堂の音楽ホールを体験するには、この藝大生コンサートはなかなかいいと思いますよ。音響はデッドだったと思います。(笑)


旧奏楽堂は、もともと別の場所にあったものを、この上野公園のいまの場所に移築した経緯があって、その後、修復作業に入ってしまい、そのメンテナンスが終わって、最近ふたたび開館したという運びなのである。


カレンダーを見てみると、日曜日の藝大生コンサートは相変わらず定番として存在するようだし、あの当時にはなかったような公演の数々が予定されているようで、なんとも嬉しい限りである。


自分がちょっと気になって、ぜひ行ってみたいと思っているのは、今年の年末にあるN響メンバーによるブランデンブルグ協奏曲全曲演奏会であろうか?


これはぜひ行ってみたい。

土屋さんのコンサートの時もブランデンブルグ協奏曲だった。
きっとなにかの縁なのだと思う。


思えばいまから9年前なんですよ!時間なんてあっという間。つい最近のことのようである。あのときエム5さんと隣り合わせでいっしょに土屋さん、ゴローさんを応援していたのでした。


あのときがん手術で療養中の小澤征爾さんもかけつけていた。例のあの赤ジャンパーを着て。懐かしすぎる!!!


土屋邦雄さん、いまはどのようにお過ごしになられているのであろうか?調べてみると、去年の2020年5月にフィルハーモニア・アンサンブル東京のコンサートが第一生命ホール開催予定であったのがコロナで延期になってしまったようだ。


このアマチュアオケの演奏会も11回の数を数えていた。
再開したら、久しぶりにぜひ足を運んでみたいと思っています。


我々の世代では、ベルリンフィルの日本人奏者といえば、安永徹、土屋邦雄の時代である。土屋さんが日本人初の快挙。1959年に入団。1959年ですよ。自分が生まれる遥か前である。


当時、クラシックの世界と言えば圧倒的な西洋人社会、西洋人ステータスの中で、アジア人、日本人としてその荒波の中をかいくぐっていくそのご苦労はいかんばかりであるか、と推測する。


しかも帝王カラヤン時代のベルリンフィルである。


そういう先人のご苦労のもとにいまの我々の安泰があるのだと思うと、いろいろ思うところも多い。


次回の土屋邦雄さんのフィルハーモニア・アンサンブル東京演奏会、ぜひ行きます。ここに宣言!そして日記で熱く語ってみたいと思います。


話を本題に戻しましょう。


この旧奏楽堂と東京藝術大学キャンパスに行く途中にある、この上島珈琲、ここを通るたびにいつもお洒落でいい雰囲気だなぁと思っています。(笑)おそらく藝大生であろう若い人たちでいつも満席です。


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こちらが東京藝術大学キャンパス内にある新しいほうの奏楽堂。


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明治23年に創設されて以来、音楽教育の練習、発表の場として永く使用されてきた旧東京音楽学校奏楽堂は、建物の老朽化が進み、また、音楽の演奏形態の拡大等に対応できなくなってきたため、昭和59年に解体し、その後、上野公園内に移築再建された。


東京藝術大学奏楽堂は、コンサートホールとして新しく建設されたものである。ホール全体が一つの優れた楽器として、調和のとれた響を生むものとして考え、音響特性を使用目的に応じて変えられるよう、客席の天井全体を可動式にして音響空間を変化させる方法を採用している。また、古典から現代作品を演奏出来るフランスのガルニエ製オルガンを設置してある。


エントランス


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ホワイエと呼べるかどうかわからないが、こんな感じである。基本、大学の施設なので、商用のホールとは違うので、最低限の目的を達していればいい訳で、とても質素な感じである。


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奏楽堂ホール内。


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自分は5年ぶりに入ってみたとき、そして全体の内装空間を見渡した時、ちょっと違和感があった。それはこんなに立派なパイプオルガンがあったけな?という印象である。5年前の「暗騒音」の日記の写真を確認してみたところ、5年前はこんな感じであった。


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やっぱりね。パイプオルガンがない。これはその後新設された、というわけではなく、5年前は、この部分を覆って隠していたのでしょう。


とにかく自分は、今回このパイプオルガンの存在に圧倒されてしまった。
パイプオルガンのことはまた後述、詳しく書こう。


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ホールの形状はシューボックス。客席は、徐々にスロープがついていて後ろにいくほど傾斜がキツくなる。5年前は最後尾の座席だったので、その傾斜のキツさで、ステージを見下ろす感じでかなり怖かった記憶がある。今回は中央で前方寄りなので、それほどの傾斜は感じない。


程よい感じである。


座席の列方向の間の間隔のスペースがとても広くて観客に優しい。首都圏内のコンサートホールの座席の列間隔は、かなり狭く、休憩の時に「前を失礼します。」と言って横切っていくときのあの窮屈さは、コンサートゴアの方なら誰しもが経験していることだと思うが、この奏楽堂はそのスペースがかなり広くて、かなりスイスイである。


こりゃいいな~と思った。


座席の列間隔のスペースはもちろんホール内の音響設計にも関わってくることなので、簡単にはいかないが、ユーザー目線でいうとかなりいい印象。


ホール空間をみると、そんなに反射音対策の凹凸を強烈にデザインするなどのインパクトはなく、どちらかというと平坦な印象さえ受ける。でもすぐに目に留まるような派手な音響デザインはないけれど、よくよく見ると繊細な音響デザインが施されていたり、吸音カーテンがあったりとかで、細かい配慮はされているんだろうな、と想像した。


ふつうのコンサートホールっぽくないです。


でも壁下面のところは、コンクリート剥き出しで、あきらかな反射音対策っぽい凹凸デザイン。ここはふつうのコンサートホールっぽいです.


全体に木目調の木のホールである。

壁は木のパネルを使っていた。
床は木材フローリングである。


でもホール建設自体が木造建築というわけではなく、内部は鉄筋コンクリートである。コンクリート打ちっぱなし。そして音の反射をつかさどるところのホール内装表面に木材を使っているという感じなのであろう。


一般家庭の住宅もそうであるが、壁などの内部の構造に空洞があると、音が共振して濁りやすく極めて音響の悪化をもたらす。だから壁内部はコンクリートでガチガチに固く造って、表面のみを木材でコーティングすることで周波数特性を整えている、と予想するのであるが、どうであろう。。。


天井はかなり高い。


ただし、この天井、高さを可変できる天井可変装置だそうで、ホール全体の容積を変えることで、残響時間を変えることが可能なのだそうである。ステージ上で演奏される音楽に応じて、その残響時間を可変できるようになっている。クラシックだけに限らず多ジャンルの演奏形式に対応することを目的としている。


残響時間は、1.7秒~2.4秒とされている。


天井は、首都圏のふつうのコンサートホールの天井に見られるような、音響操作デザインはなくこれまた、あまりに平坦で驚いてしまう。(笑)外光用の電気が一面に施され、このような感じになっているのもあまりコンサートホールっぽくない。


こんなんでいいのかな?と心配してしまう。(笑)


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シューボックスなので凝縮された濃い音空間である。


木のホールだと音の輪郭、角がまるいウォームな響き、暖かい響きを想像しがちであるが、そんな極端な聴こえ方はしなかった。あまりそんなに木のホールという聴こえ方はしなかった。


音像は極めて明晰で、音の輪郭もしっかりしており、どちらかというとウォームな響きとは正反対にあるようなメリハリのある響きだと感じた。


弦楽器の音も解像感があって、籠っていたりしない。
ピアノの音も煌びやかである。

音場も広く素晴らしい。


自分の座席が中央で、前方寄りなので、より直接音がしっかり届き、響きに混じり込んでしまう感覚にならなかったことも要因のひとつであろう。


そして表面は木のパネルだけど、その建築の内部はコンクリート打ちっぱなしというのもじつはその真の理由にあるのかもしれない。


ホールの音響としては文句なく素晴らしく、世間一般で言われるような木のホールの代表的な聴こえ方はせず、もっと普通にいい響き、聴こえ方をした、という感じなのである。


まぁ経験回数が少ないですからね。


それこそ、サントリーホールやミューザ川崎、東京文化会館のように数えきれないほど体験しないと、そこのホールの響きの真の姿は語れませんね。




そして、5年前にはなくて、今回初めて目にした奏楽堂のパイプオルガン。
これは本当に圧倒された。見る限り本当に圧倒されるのである。


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フランス、ガルニエ社製パイプオルガン。
3手鍵盤、足鍵盤、ストップ数76である。 


実際コンサートではこのパイプオルガンの音色も聴いた。


もちろんゴージャスな音なのだけれど、普段いろいろなホールで聴いているオルガンの音とは結構違うような気がする。かなり違います。低音の量感という感覚でちょっと違う。


深く縦方向に沈み込む音ではなく、そういう深さ方向があまりない軽い明るさというのか、うまく表現できないけれど、ちょっと違う感じがしたなー。


これはこれでいい音色だとはもちろん思います。
フランス、ガルニエ社製といえば有名ですよね。


パイプオルガンも1台1台で本当にいろんな音色をもつ子供たちですね。


そして、この日のコンサートでは、東京・春・音楽祭ライブ・ストリーミングがおこなわれていたのでした。


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総じて、東京藝術大学の奏楽堂は、木のシューボックスのホールであるが、木造の音響らしくない響きだった。ホール内装空間デザインも、ふつうのコンサートホールっぽくないとても平坦な感じである。。。と言えるのではないだろうか。


音響設計は、永田音響設計です。


この東京藝術大学キャンパスの奏楽堂の素晴らしさ、木のホールらしさ、というのは、その実際聴こえる響きの聴こえ方というよりは、その視覚的な木材の柔らかさ、五感、視覚的に優しいところと言えるのではないだろうか?


そんな印象を抱いた。



この日のコンサートは、東京・春・音楽祭2021 ベンジャミン・ブリテンの世界 番外編。


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数年前から、この音楽祭でシリーズで取り扱われていたコンサート。そのときから自分の中で気になっていた存在ではあった。ブリテンは、普段のコンサートではあまり取り扱われない作曲家だと思ったので、ぜひ今年は!と思い行ってみることにした。


加藤昌則さんが企画構成されているシリーズで、加藤さんによるレクチャー型のコンサートである。


去年がコロナで中止になってしまい、今年は番外編ということで、特別に企画されたコンサートである。自分もブリテンは、なかなかこういう機会がないと自分から聴こうとは思わないので、とても勉強になり刺激を受けた。


加藤さんの能弁でとても流暢な語り口に感動しながら、20世紀英国を生きた、才能溢れる作曲家ブリテンの肖像、その世界を堪能させてもらった。


自分には持っていない世界で、本当に大きな刺激であった。


ブリテンが普段から持ち歩いていたリコーダーについても、このコンサートを体験しなければ、改めてこうやって単独で聴く、という機会もなかったであろう。


来年の本番であるブリテンのオペラ「ノアの洪水」。ぜひ参加させていただこう、と決意した次第である。



東京・春・音楽祭2021 ベンジャミン・ブリテンの世界 番外編
20世紀英国を生きた、才知溢れる作曲家の肖像


2021.4.11(日)15:00~ 東京藝術大学奏楽堂


ブリテン


アルプス組曲
ヴィットリアの主題による前奏曲とフーガ
子守歌のお守り op.41より
ウィリアム・ブレイクの歌と格言 op.74より


(休憩)


ジミーのために~ティンパニーとピアノのための

◎レクチャー・コーナー
歌劇<ノアの洪水>
シンプル・シンフォニー op.74(弦楽五重奏版)


出演

企画構成/ピアノ/お話:加藤昌則
バリトン:宮本益光
メゾ・ソプラノ:波多野睦美
ヴァイオリン:川田知子、吉村知子
ヴィオラ:須田祥子
チェロ:小川和久
コントラバス:池松宏
リコーダー:吉澤実、池田順子、中村友美
打楽器:神田佳子
オルガン:三浦麻里









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