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The Story of SUNTORY HALL [コンサートホール&オペラハウス]

サントリーホールは、日本のコンサートホール・カルチャー、コンサートホール文化に革命をもたらした。「すべてはサントリーホールから始まった。」という名言もわかるような気がする。


・コンサートホールでお酒を提供する。
・レセプショニスト。
・クローク。


これらはサントリーホールが生み出した画期的な文明開化である。それ以降の日本のコンサートホールでは、これらは至極あたりまえの光景となって定着していった。


もちろんそれ以前の東京文化会館が中心だった時代も素晴らしい歴史があることはもちろんであるけれど、自分が東京に上京したのが1987年の年だったから、物心ついた頃からサントリーホールがすでに身近なものであった、ということである。


なによりも自分の基準であるカラヤンといっしょに造ったコンサートホールである、というのが自分の拠り所であった。


サントリーホールは独特のブランド感がありますね。
自分はやっぱりサントリーホールが好きだなぁ。


クラシックが好きになった、嵌まり込んでいくきっかけになったことも、このコンサートホールの存在が大きかった。クラシックファンは、作曲家や演奏家、そして曲、その音楽に興味をもつのが、最初のきっかけかもしれないけれど、自分はもちろんそれもあるけれど、自分の場合、やっぱりオーディオやコンサートホールの存在が大きかった。


自分は本当にコンサートホールが大好きなんですね。


建築美というか、外観ももちろんだけれど、ホール内装空間、ホワイエすべてにおいて至高の芸術作品だと思っています。その空間のデザインを見ているだけで、ゾクゾク震えがくるというか、すごい高尚な気持ちになります。そのコンサートホールによっていろいろな考え方のデザイン空間があって、それを鑑賞するのが大好きです。


そして音響、ホールの響きというのが、なによりも好き。いろいろなホールを体験して、それぞれホール固有の響きがあって、それを楽しむのが好きです。なぜそのように聴こえるのか、を考えるのが好き。


またこの人は、日記で毎度同じことを書いている、と揶揄されているかもしれませんが、それは自分が好きなだけなのであって、放っておいてください、というところでしょうか。


書いている内容は、あくまで素人かもしれませんが、やっぱりそういうホールの響きのことを考えるのが好きだからしょうがないし、そうやって書くことで自分が満足できるのだから、自分にとって最高の娯楽なのである。考えることにはお金はかかりませんからね。


日本のコンサートホールだけでは満足できなくなって、海外のコンサートホールも体験したくなり、行脚を繰り返しました。いまとなっては大きな財産です。


そんなサントリーホールであるが、今年は開館35周年の記念イヤーなのである。


その波に乗っての一環だと思うが、建築画報から「The Story of SUNTORY HALL」という本が出版された。


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ザ・ストーリー・オブ・サントリーホール
https://www.amazon.co.jp/-/en/gp/product/4909154655


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サントリーホールを建築した安井建築設計事務所による書籍である。

これは素晴らしいです!


ホールマニア、サントリーホール・ファンにとっては堪らない1冊になるのではないでしょうか?開館当時に出版された、あの黒本と同じくらい衝撃ですね。


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プロによる撮影は、やっぱりすごい臨場感と迫力があって、素晴らしい写真。
写真から飛び出してくるような感じがしますね。
自分はとてもこんな風には絶対撮れません。


いろいろな対談やそれぞれにインタビュー寄稿があったりして読み応え抜群です。
ちょっとさわりを紹介しておきますね。


対談:堤剛サントリーホール館長×佐野吉彦(安井建築設計事務所 代表取締役社長)
「サントリーホールの”新しさ”と音楽の未来」


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堤館長


「また現地(ヨーロッパ)を訪れたのは深い秋の頃で結構寒くて、皆さんコートを着てこられるのですが、コートは必ずクロークに預けていたんですね。日本ではそれまで、膝の上に畳んで置いていたわけです。それも取り入れなければということで、サントリーホールが初めて、これほど充実したクロークをつくったわけです。


それから印象的だったのが、ホールのレセプショニストが席に案内だけでなくてちょっとしたサポートをしてくれること。今日のソリストは?なんて聞くと、パッと答えてくれるような方がいたことです。それにすごく感心して、おもてなし対応ができるSPS(サントリーパブリシティサービス)を組織したことが、ホールの建築や音響に加えて画期的なことだったのではないでしょうか。それは佐治がいつも言っていたように、「etwas Neues:何か新しいことを(見つけよう)」ということ。それと「最後は人やで」という言葉が生きているのではないか、と思いますね。」


以前、レセプショニストについて日記にしたことがあり、そこでその仕事を紹介したが、こんな感じである。


これまでクラシックファンの間で「もぎりのおばちゃん」などと愛着を込めた呼ばれたご婦人方が、ホール入口でチケットの半券をもぎる。そのもぎり方も結構素っ気ないというか、そして制服というよりうわっぱりのようなものを着ていた感じだった。


1986年にサントリーホールが開館して、その様子は一変した。


サントリーホールに登場したのは、キャビンアテンダントばりのそろいの制服を身に着けた女性たち。柔らかい物腰と丁寧な受け答えで聴衆を迎え入れ、席に案内する姿は、高級ホテルでのおもてなしのようだった。


でもサントリーホールのレセプショニストは怖いです。(笑)おそらく、いや間違いなく日本のコンサートホールの中でもっとも写真撮影が厳しいのはサントリーホールである。


開演前の挨拶代わりにホール内を撮影していると、レセプショニストがすかさず飛んできて注意されます。自分はサントリーホールの場合、レセプショニストに関してはいつも注意されているイメージしかないです。(笑)



対談:眞鍋圭子(サントリーホール エクゼクティブ・プロデューサー)×
   木村佐近 安井建築設計事務所 理事)
「回想:ホール計画時から開館当初の頃」


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眞鍋さん


「最初に佐治さんたちがいらっしゃるということをカラヤンさんにお伝えした時、朝から1時間も電話でいろいろ尋ねられたんですよ。何、ホールをつくる?に始まって、どこにどんなホールをつくるんだ、誰が・・・あの佐治さんが。ふ~んといって、いつできるのかと。1986年にオープンしますと申し上げたら、それなら、まだ自分は生きているな。オープニングにベルリンフィルと行こうとおっしゃって期待に胸を膨らませておりました。」


眞鍋さん


「というのは、おそらく、カラヤンさんは最初からヴィンヤード型しか頭になくて佐野先生にどういうことを考えていらっしゃるんですか、と尋ねたら、先生は手で描かれたんです。それはシューボックスを変形させたものでした。そうしたら、カラヤンさんは、客席の2階の幅を拡げなさい、に始まり、ヴィンヤードのホールの特徴を話し始めたんです。先生の方では、シューボックスは眼中にないな、という感じを持たれて、敢えて出されなかったのではないでしょうか。」


木村さん


「幅を拡げなさいという言葉は記録に残っていますけれど、我々が一生懸命つくった模型の写真は何だったんでしょうか(笑)」


眞鍋さん


「おそらく、その写真は、一気にカラヤンさんがヴィンヤードのことを話し出したので、出せなくなったのだと思いますよ。」


眞鍋さん


「・・・佐治さんはずっと二人が話しているのを聞いていたのですが、一言カラヤンさんに「何でヴィンヤードがいいと思っていらっしゃるんですか」と。


カラヤンさんは、一瞬「えっ」となった後、ニコッとして「いい音を聴こうと思ったら家庭用のいい音響装置があるかもしれない。でも、人がコンサートホールに足を運ぶのは、そこに人が集うということであって、自分たち音楽家も観客がまわりにいて、一緒に音楽をつくるという形にしたい。それがこれからの音楽会の意義じゃないか」といったことをおっしゃったんです。そうしたら佐治さんが、ああそうかと。膝を叩いて「ほな、そうしましょ」と。


眞鍋さん


「カラヤンさんに佐治さんが「コンサートホールにはオルガンちゅうものが要るんですか」と尋ねたんです。カラヤンさんは目を見開いて、もちろんと。「オルガンのないコンサートホールは家具のない家みたいなものだよ。うちのホール(ベルリン・フィルハーモニー)は最初にオルガンを入れるのを忘れていたから、右手にある。あそこしか置く場所がなかったのだけれど、ものすごく指揮しづらい、やっぱりオルガンは真ん中にあるのがいいのだよ」


木村さん


「サントリーホールの礎を築いた佐治さんがいらっしゃって、その夢をかたちにしたのが佐野正一、その夢を響きにしたのが永田先生。そしてカラヤンさんがいなかったら、このかたちにはなっていなかったと思うんです。3人とカラヤンさんを結びつけたのが眞鍋さんなのですが、なぜそこに眞鍋さんがおられたのか、といういことを少しお話いただけますか」


眞鍋さん


「カラヤンさんと佐治さん、佐野先生、永田先生、ドイツグラモフォンの方、それに私が通訳で訪れました。模型にレーザー光線を当てて音の反射を調べるのですが、カラヤンさんは身を乗り出して中に入って、感心していました。そしてよいものができるであろうと話されていたのですが、最後に「しかし、一番大事なのはそこで鳴る音楽だよ」と。はい、肝に命じますという感じで、そういう音楽家の言葉は心に残っていますね。」


木村さん


「永田先生はヴィンヤードというかたちをつくることが決まったときに、まわりの音響設計の仲間から、命取りになるからやめろ、と言われたそうです。それを押して取り組んで、これだけのことをやり遂げたと。やっぱり、懸けていたのだと思います」



対談:木村左近(安井建築設計事務所 理事)×
   豊田泰久(永田音響設計 エクイゼクティブ・アドバイザー、プリンシパル・コンサルタント)
「建築家と音響設計家によるサントリーホールこぼれ話」


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豊田さん


「確かに歴史に”もしも”はないのですが、サントリーホールとカラヤンの結びつきがなかったら、どんなホールになっていたでしょう。その後のコンサートホールのデザインに与えた影響の大きさを考えると、サントリーホールだけではなく、世界中のコンサートホールの姿、形が現在のものとは異なっていただろう、ということだけは間違いなく言えると思います」


木村さん


「アルコール度数にプラスする旨味の話をした方がよいかもしれません。美しい響きは残響時間だけでは決まらないこと。ヴィンヤード型の形状は、カラヤンが目指す演奏者と聴衆との一体感を生み出す視覚的効果だけでなく、床からも立ち上がるいくつもの壁が美しい響きにかかせない初期反射音を生んでいることなど、美しい響きの基本についてお話できたらと思います」


豊田さん


「今では建築図面は全てコンピューターで作成されますし、音響のスタディも全部コンピュータで処理されますが、この音響模型実験だけはいまだに現役なんですよ。模型内で収録した音を聴いて最終的に判断するのはやはり人間なのです。音響実験で扱う音信号の処理はコンピュータで行うようになって測定の精度も上がりましたが、最後に音を人が聴くプロセスだけはコンピュータでというわけにはいかないのです。実際のコンサートを人の代わりにコンピュータが聴くことができないのと同様の理屈ですね。」


豊田さん


「ただ単に演奏者の意見を聞いて、それを取り入れるだけではうまくいきません。それらの意見を材料として上で、デザインとして昇華したものでなければならないと思います。私は建築のデザイナーではありませんが、いくつものコンサートホールの建築デザインの現場を見てきています。サントリーホールの舞台裏まわりのデザインは本当によくできていると思いますよ。


例えば、指揮者やソリストの楽屋がステージと同じフロアにあって、しかもステージ出口の直近に配置されていることなどは、多くのミュージシャンから高く評価されています、


考えてみれば当然のことなのですが、世界中の多くのホールでこれが実現できていません。ステージの裏側にアーティストラウンジと呼ばれる、出演者がコンサートの前後に集まってくつろいで簡単な飲食もできるスペースがありますが、これも皆さんから喜ばれていますね。間違いなくよい演奏に繋がっていると思います」


・・・・・


これくらいにしておこう。(笑)
これでもほんの1/80くらいというところであろうか。


とにかくすごい読み応えで、面白い話がいっぱい。
サントリーホールのことなら、なんでもわかる百科事典みたいな感じである。


そしてプロによる豪華写真が華を添える。


サントリーホール・ファンの自分にとっては堪らない本&写真集だと思います。
自分の宝物ですね。



サントリーホールが開館〇〇周年という祝祭イヤーになると、必ずその記念事業というのが公表される。その中の名物コーナーとして、”正装コンサート”というのがある。


記念ガラ・コンサートというもので、この記念のコンサートの日だけは、観客のみなさん正装、つまり男性であればタキシード、礼服、女性であればドレス、和服を着て、そういう厳粛な雰囲気で楽しみましょう、という粋な計らいである。


自分は5年前の開館30周年記念ガラ・コンサートのときに、この正装コンサートを体験した。


いやぁぁぁ~もう別世界。
自分の居場所がないくらい富裕層が集う空気感であった。


正装が必要な夏のヨーロッパの音楽祭も数多経験したけれど、このサントリーホールの記念ガラはこれまた別世界で緊張しましたねぇ。日本の正装コンサートの場合、女性は和服姿というのが特徴で素晴らしいな、と思いました。


そのときの感動の場面をまた紹介しましょう。
あの感動よ、もう一度!です。


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もうレッドカーペットの世界。ウィーンフィル・メンバーによる開演前のファンファーレでした。


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まさに紳士・淑女の世界。自分も礼服でビシッとして決めました。
カメラでバシャバシャ撮ってたのは自分くらいなものです。(笑)


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堤館長ももちろんいらっしゃいました。


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こういうシーンを体感して思ったのですが、こんなことが日本でできるのはサントリーホールぐらいしかないのではないか、サントリーホールだからこそできるんではないか、と。


この開館30周年記念ガラ・コンサートは、小澤征爾さん&ズービン・メータのダブル指揮、そしてアンネ=ゾフィー・ムター(ヴァイオリン)にヘン・ライス(メゾ・ソプラノ)、そしてウィーン・フィルという夢のようなキャストであった。


写真撮影という点では鬼のように厳しいサントリーホールもこの日だけはカーテンコールは撮影可でした。


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自分は、この日の上流社会の場を体験した後、夜遅くおらが街に到着したとき、あまりの空腹に耐えきれず、あの中華屋さん「キングチャイナ」に入って半チャンラーメンをかっこんだのでした。全身をビシッと礼服で決めておきながら。(笑)



今年は、開館35周年記念イヤー。この正装コンサート、記念ガラはあるのかな?と確認したところ、やはりあったのである。


サントリーホール35周年記念 ガラ・コンサート 2021(正装コンサート)

2021年10月2日(土) 18:00開演 


ソプラノ:ズザンナ・マルコヴァ
テノール:フランチェスコ・デムーロ
バリトン:アルトゥール・ルチンスキー
指揮:ニコラ・ルイゾッティ
東京交響楽団


今年のウィーンフィル来日公演は、この記念ガラとは別枠で10月に別途設定されている。リッカルド・ムーティ指揮である。


なんと東響がホスト・オーケストラとして登場だ!
出世だな~。(笑)

驚きです。


前回の30周年ガラのときは、チケット代5万を投資した。
小澤さんにメータに、ムターだからね。

それくらいは当然の額かもしれない。


それと比較して今年は小粒ではある。

同じレートで5万を主張するのであろうか。
もう少し低めの価格設定になるのであろうか・・


自分はサントリーホールの正装コンサートは、もう5年前体験して十分と思ったのだけれど、ひょっとしたら今年も行ってみようか、という気持に揺れ動いている。


海外に行くだけで何十万と投資するのだから、昨今のまったく海外に行けない状況下であれば、5万円くらいの投資はどうってことはないのではないか、と思うのだ。


ただひとつ懸念がある。


それは今年の10月頃になったら、もうマスクはしないでいい状況下、感染状況になっているかどうかだ。正装コンサートで、タキシード、礼服、ドレス、和服を着こなしながらマスクをしている図は・・・(笑)


ここいらはサントリーホールはどのように判断されるのであろうか?


こんなコロナ禍、マスク必須の現況下であるからこそ、この正装コンサートの実際の現場の図を観てみたいと無性に思ってしまうのである。


ちなみに5年前に新調した礼服、いまでも着れるのか、埃にかぶっていた礼服をタンスの中から取り出して試着してみたところ、大丈夫ちゃんと着れました。


余計な出費は必要ないようで、行こうと思えば、あとはチケット代投資の問題だけである。


最後にひと言言わせてもらうならば、あの頃は本当にいい時代であった。
もうこのような環境での体験は同じレベルでは無理なのであろうか?






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