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アルゲリッチのシングルレイヤーSACD [ディスク・レビュー]

アルゲリッチも自分も、もうお互いこれからの1公演1公演が一期一会。いつあのときのコンサートが最後であった、とならないように悔いの残らないようにしておきたいと心掛けている。


縁起でもないこと言いますが。(笑)


しかもいまコロナ禍絶賛中で海外に行くことはおろか、コンサートにも満足に行けない。そういう想いもあって、いまのこのときを逃したら、一生アルゲリッチを生で観れなくなる、という恐れを抱いた。


別府アルゲリッチ音楽祭 2021。


5/8からスタートする予定で、自分は東京公演の5/14のチケットを購入した。S席の運指の見える特上座席。アルゲリッチだから、すごいチケット高かったけれど、自分には迷いがなかった。いまアルゲリッチを観ておかないと、このときを逃したら一生後悔するような気がして、思わず衝動買いしてしまったのだ。


そうしたら、本日、別府アルゲリッチ音楽祭中止のお知らせが・・・。


世の中無常。

まっ仕方ないっか。


来年の別府アルゲリッチ音楽祭の東京公演もぜひ馳せ参じさせていただきますよ。今回はミーシャ・マイスキーとの室内楽だったから、最高に楽しみにしていたのだけれどね。マイスキーの実演に接するのは初めてだったのです。


近年でアルゲリッチを生で体験できたのは、同じ別府アルゲリッチ音楽祭の東京公演で東京オペラシティーでのコンサートと、あとは2016年の英国でのBBC Promsだったかな。BBC Promsはあのロイヤル・アルバート・ホールで郷土の盟友、ダニエル・バレンボイムとの競演だった。アンコールでは2人で連弾を披露してくれた。

あの瞬間、もう自分はアルゲリッチについては、もう思い残すことはないな、と思ったけれど、やっぱりまた行きたいと思ってしまった。


この衝動は永久に続くことだろう。


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自分のマルタ・アルゲリッチに関する想いはいままでの日記で十分に熱く語って来たので、もうこの場ではそれ以上言及するつもりはない。


自分はクラシック・ピアノは、ポリーニ&アルゲリッチから入門した人なので、その想い入れは深いものがある。


自分はいまでも初心者であることを宣言したいが、初心者にとって新しいクラシック音楽を覚えていこうとするとき、その一番最初に聴いた音源、それでその曲を覚えました、という音源を、その鑑賞生活の生涯の中で、それを超えることはまずできないのである。


その一番最初に聴いた、それで覚えた音源の解釈の仕方が徹底的に脳裏に刻み込まれてしまい、それ以降いろいろなピアニストの演奏を集めたり、聴いたりするけれど、どうもピンと来ないというか、その神様を超えることができないのだ。


アルゲリッチは、自分にとってそういう存在である。


アルゲリッチの録音をたくさん購入して、それでクラシックのピアノ曲を覚えていったようなところがあるので、そのトラウマはなかなか拭いきれることが出来ないのだ。


その最たる曲が、ショパンコンクール1965のときのショパン ピアノ協奏曲第1番であり、リッカルド・シャイー&ベルリン放送響とのラフマニノフ ピアノ協奏曲第3番だったりする。


後世、それを超えるであろう素晴らしいテクニック、新しい録音はたくさん出ているのだろうが、それがどんなに素晴らしいものであっても、自分のリファレンス、ものさしを変えることはできない。


ある意味、自分は不器用で、いろいろ新しいものをどんどん吸収していく柔軟性に欠ける強情っぱりな性格なのだろう、と思う。


好きになった演奏家は思いっきり、”思い込んだら命懸け”なタイプで、後生大切に慕うタイプなのだろう、と思う。


けっして見捨てたりはしない。


アルゲリッチはいわゆる優等生というようなタイプではないところが自分の性に合うと思う。とても情感豊かで、情熱の人のように思うし、「恋多き女」の名誉ある称号も彼女らしくてとても素敵だ。


失敗も多いし、とても人間的というか、笑って、泣いて、怒って・・・そういう喜怒哀楽が表情からはっきり分かるのが自分はとても素敵だと思う。


そういう人間らしいところが好きである。


もちろんインタビューは基本は受けない人だそうなので、そのような表面的なところだけではわからない部分もたぶんにあるであろう。


若い人に自分の持っているものを残していくために若いピアニストの取り巻きとともに暮らしていると聞く。マリア・ジョアン・ピリスも取り巻きに囲まれて暮らしているそうで、外出先にもいっしょに同伴するそうだが、アルゲリッチの場合はそもそもパリとかブリュッセルとか、こちらから会いに行きやすい大都会に拠点を構えているし、取り巻きや子供たちを「引き連れて」あちこちに行くことはないそうである。(2018年の時の情報ですが。)


深夜遅くまで、みんなと飲み食いしてワイワイやるのが好きなのだそうである。


そして、これが彼女を1番好きな理由かもしれないが、やはりスターとしての”華”がある。美人で、スターとしての”オーラ”、”華”があって、女性ピアニストとして、ピアノ界を牽引してきたのは、ご多分に漏れず、そのスター性に起因するところは間違いない。


やっぱり人を惹きつけてやまないそういうスター性というか個性がピアニストには必要だと思う。いろいろなピアニストがいる中で、自分が惹きつけられるのは、そういう独特のカラーというか個性を見ているようなところがある。


アルゲリッチのピアノは、非常に情熱的で、強打鍵で突っ走るタイプ。そのスピード感は、聴いている人にどんどんとこみ上げてくる高揚感を与え、興奮していく・・・これが彼女の勝負パターンのような気がする。


反面、もうちょっとゆとりがあるというか、包み込むような抱擁感というか、そういう大局的な感じが欲しいかな、と思うときもある。


でも彼女のラヴェルを聴いたときは、心底驚いた。あのような淡い色彩感のような世界もこんなに描き切れるのか、と思い、アルゲリッチらしくない、と思わず笑ってしまうこともあった。(バッハのアルバムも驚きました。)


彼女はそれなりに器用というか、与えられた境地に自分を適応させていく能力はずば抜けているような感じはする。


自分のアルゲリッチ愛は、これからもずっと続くであろうし、いつまでも第一線で頑張ってほしいと思うのである。救いなのは、もう80歳になるというのに、まったく衰えを感じないというか、ピンピンとして元気なのが本当に嬉しい限りである。SNSでそんな元気な現況が伝わってくるのはファンとして最高に安心する。


やっぱりファンにとって、いつまでも元気でいてくれることが一番嬉しいことである。


アルゲリッチの音源は、もうBOXシリーズと言うか、手を変え品を変え、いろいろな観点からBOX、箱物が発売されている。自分はもう山ほど所有しているので、まったく興味がない。


ところがアルゲリッチ80歳記念として、アルゲリッチにしては珍しいシングルレイヤーSACDがリリースされた。DGの過去の彼女の名盤を、シングルレイヤーSACDとしてリマスタリングしてリリースしようという企画である。


Emil Berliner StudiosによるDSDリマスタリングだそうである。
これは自分のアンテナにビビッと思いっきり反応してしまった。(笑)

これはアルゲリッチ・ファンとして買わないといかんだろう。



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ショパン前奏曲集 
マルタ・アルゲリッチ(シングルレイヤーSACD)




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パルティータ第2番、イギリス組曲第2番、トッカータ(バッハ) 
マルタ・アルゲリッチ



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夜のガスパール、ソナチネ、高雅で感傷的なワルツ(ラヴェル)
マルタ・アルゲリッチ




アルゲリッチの音源は、もう何回もあの手この手でリマスタリングされて音がよくなっているので、HQCDとか、SHM-CDとか、どんどんリニューアルされている。もうCDというのがない。


自分が持っているのは、相当昔の普通のCDだったころのもの。
だから随分音がよくなっているに違いない。


しかも今回は、シングルレイヤーSACDである。
ハイブリッドSACDより音がいいのである。


上の3枚とも、自分はCDで持っている。実際聴き比べると、随分サウンドの印象が違う。CDは、いわゆるPCMらしい音と言うか、非常に明るい明瞭度が大きいメリハリのある音で、前へ前へと出てくるようなサウンドである。


それに対しリマスタリングされたSACDは、非常に柔らかい質感で、CDと比べると明瞭度という点ではやや暗めだけれど、打鍵の響きの細やかさといい、倍音溢れる音のリッチな感覚、そしてなによりも音像が奥に引っ込んでいて、立体的に聴こえる点が全然違う。


さすが、Emil Berliner Studiosのリマスタリングである。

自分はいっぺんに気に入ってしまった。


この調子でアルゲリッチの過去の名盤を全部シングルレイヤーSACD化してほしいなぁ~と思ってしまった。


シングルレイヤーSACDは、すごい高価な記録媒体なのである。

1枚4730円もするのだ!


彼女の膨大な過去の音源を全部シングルレイヤーSACDでコンプリートされたなら、その前に自分の懐事情が崩壊してしまうことになるのは簡単に予測できることである。(笑)







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