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藤村実穂子さん [オペラ歌手]

藤村実穂子さんは、世界中で活躍し、欧米における「現在最高峰のメゾの一人」と称されている。真の意味で「世界のフジムラ」といっていい。


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それまでの日本人オペラ歌手は、有名歌劇場で歌った経験がある、あるいは日本人の役である「蝶々夫人」(ソプラノ)で欧州歌劇場を一時回って歌ったことがあったということを日本で売りにして、欧米よりも日本国内で有名になった。


藤村さんの場合は大きく違い、その活動のほとんどを欧米で、しかも不断に行っていることである。海外に居住する日本人音楽家は数々いるが、欧米で「最高のメゾソプラノの一人」と呼ばれ、フリーでここまで引っ張りだこで活躍し、また日本人の容姿であるのに欧米人として、一流の欧米歌手達と一緒に舞台に立って演技をし、「女神」「スター」「これ以上の適役歌手はいない」と各誌で絶賛される日本人歌手はこれまでいなかった。


「日本人だから」という理由で自動的に「蝶々夫人」として起用されるのではなく、声楽技術、演技力といった実力で歌劇場や指揮者に気に入られたという、いわば本場で認められた初の日本人歌手といえる。



まさにここなのだと思う。


ここが「藤村実穂子」という歌手の偉大さを表現している、欧米での評価の高さを端的に言い現わしている「的を得た表現」なのだと自分は思う。


自分が藤村さんの存在を意識し始めたのは、2002年、バイロイト音楽祭の「ニーベルングの指環」において、日本人として初めてフリッカ役を演じてから、その年から9年連続で、同音楽祭に連続出場したとき。


この偉大な業績はさすがに自分のところまで届いた。

日本人歌手としてバイロイト音楽祭に出演することさえ大変なことなのに、それも9年連続!


ワーグナー歌手には目のない自分にとって、しかも日本人歌手。

もの凄い興味をそそられた。


一度ぜひ実演に接してみたいなぁとそのとき思ったのである。

2011年か2012年頃だったと思う。


それからの大活躍のプロフィールは、本当にすごい。

世界一流の歌劇場、そして世界一流のオーケストラ、指揮者との競演を重ね、目が眩むような大スターのキャリアの道を歩まれている。世界各国で引く手あまたである。


ここでは全部書ききれないので、下記のプロフィールのリンクを参照いただきたい。


藤村実穂子プロフィール



ご本人はメゾ・ソプラノという声域についてこのようにインタビューで述べられている。


「私は野球でいうとピッチャーよりもキャッチャー。サッカーで言えばフォワードよりゴールキーパーのような、目立たず支える役に惹かれます。メゾの役は精神的に屈折した役が多くて、こう行くであろうあらすじをコロッと

変えてしまったり、邪魔したり、嫉妬したり、一筋縄ではいかないのが面白い。だからやりがいがあるのです。憎まれるくらいで済めばよいのですが、オペラが終わって「あいつだけは許せない」と思っていただければ「しめしめ」ということです。(笑)」


また藤村さんは、歌うためにすべてを尽くせるよう非常にストイックな日常生活をお送りとのこと。生きることということは歌と直結していると言ってよいようだ。


「神様は私に声をプレゼントし、同時に私への宿題と言う意味も与えてくれました。私にはこの贈り物に応える義務があります。私にとってこのお礼という行為は、イコール生きるということなんです。そして私にとって生きるということは、求めるということです。私生活とか楽しみとか、そういうものは全て犠牲にして当然です。私にとって一番幸せな時間とは、私の演奏会に来てくださる見ず知らずの方たちと、作曲家あるいは作詞家の見た世界を共有する時間です。これ以上価値ある瞬間は考え難いです。」


自分はいままで藤村さんの実演は、記憶によれば3回体験していると思う。


いずれも自分が大きく感銘を受けたところは、恐れ多いような完璧な表現力。まさに魂がこもっている、気が入っている、その渾身のど迫力に度肝を抜かれるというか。


なんというのかな、聴衆者に息をさせることすら許さない極度の緊張感をこちらに強いてくるというのか、まさに凛とした、辺りを払う威厳とともにピンとした空気が張り詰める、そういった藤村さんのまさに真剣勝負そのものが、聴衆に強烈に伝わってくるのだ。


こういういわゆる”気”をこちらにこれだけ感じさせる歌手って、はたしてどれくらいいるだろうか?世界の藤村として名を馳せるだけのことはある、世界が認める力は、やはりとても奥が深く、藤村さんを、まさしく求道者のような存在に仕立て上げているだけのことはあると感じるものだった。


とにかく聴いていて迫力があるんですよね。

音程の良さ、定位感の良さ、そして声量と文句なし。

そして実演で聴いているときのこの気というか迫力。


これがその3回の生体験のときに、ひしひしと自分が感じたこと。


藤村実穂子さんを初めて体験したのは、忘れもしない2013年のルツエルン音楽祭のとき。自分が初めてルツエルン音楽祭を体験し、しかもその音楽祭初日のオープニング・コンサートのときだったのである。


ルツエルン音楽祭にとって初日のオープニング・コンサートってやはり特別な意味を持つ大切なコンサートなんですよね。クラウディオ・アバドがまだご生存のときで、アバド&ルツエルン祝祭管弦楽団によるオープニング・コンサートでした。それに藤村さんが出演されていたのです。


アバドにルツエルン、そして藤村実穂子。

もうこれ以上ない最高のシチュエーション。

自分は本当に幸せ者だなぁと思いました。

音楽の神様はたしかに自分に味方している。


そのときの昔の写真をいろいろ探していたら、あまりに懐かしく、美しくてちょっと感動。。。いまのご時世の、どこにも行けない疲弊感のある荒んだ精神を癒してくれるので、ちょっとあのときにフラッシュバックという感じで想い出を巡ってみますね。


自分にとって、藤村実穂子さんといえば、この2013年のルツエルン音楽祭という記憶に直結していて、五月雨のように記憶に蘇ってくるのです。


ルツエルンはスイスの湖畔に面した本当に小さな街で、”風光明媚”という言葉はまさにこのことをいうんだな、と思います。本当に小さな街で半日もあれば観光ポイントは全部廻れてしまう。あのときはあっという間に廻れてしまったので時間を持て余して、これからどうしようかなーという感じだったのを覚えています。


ルツエルンは本当に風光明媚。ルツェルンという街は、ルツェルン湖から注がれているロイス川が街を横断するように流れており、その上下に旧市街、新市街と展開している。まずはゼー橋からロイス川沿いの景観を撮る。


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見えているのがカペル橋。(水の塔)


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なんか建物もおとぎ話に出てくるみたいで美しい。


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コルンマルクトへ出て、市庁舎に出る。 この市庁舎の1Fはビアホールになっていて、休憩時に使わせてもらった。ビールの他にソーセージも頼んだ。この日はすごい暑かったので、体中汗びしょでこのときのビールがいかにうまかったことか!


いまでも忘れられないです!


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ビアレストランを出ると、ロイス川に沿ってカフェが並ぶ光景が圧巻。さすがはヨーロッパと思ってしまう。


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ルツェルンの風景の特徴としては、湖に浮いている白鳥達の存在も抜きには語れない。


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あとワーグナーファンである自分にとって、ルツエルンといえば、リヒャルト・ワーグナー博物館を訪問できたことも忘れることができない大切な想い出。


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ワーグナーがリストの娘コジマと暮らした家である。ここで息子ジークフリードの誕生を祝い、コジマの誕生日にオーケストラを自宅に招いて初演したのが「ジークフリード牧歌」である。あとあのマイスタージンガーもこの家で生まれている。


ちょっと失敗だったのが、この息子のために「ジークフリート牧歌」を少人数で演奏させた階段のところの写真を撮ってくるのを忘れてしまったことだ。また今度。



そして、この建物がKKL(Kulter-und Kongresszentrum Luzern)。和称だとルツェルン文化・会議センター。駅のすぐそばにあって、ルツエルン湖畔にそびえ立つ感じでスタイリッシュな近代的な建物で超カッコいい。KKLは、いわゆる複合総合施設で、美術館、会議室、そしてコンサートホールなどが中に入っている。


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ここのコンサートホールで、ルツエルン音楽祭が開催されるのだ。

空間デザインがモダンで、音響も素晴らしい、じつにいいホールでした。


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ルツエルン音楽祭の初日、オープニングコンサートというのは、特別なセレモニーなのです。KKLに入るなり、こんなレッドカーペット。紳士・淑女たちが大勢います。やっぱり外国人の方は体格が大きいせいか圧倒されますね。日本人、アジア人である自分がみすぼらしくなります。まず最初にマスコミ関係者だけ、集まってくださいという呼び声がかかって、その方たちだけで集合写真を撮るのです。それが終わったら我々一般人も入っていいという感じです。やはり初日、オープニングらしいですね。


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オープニング初日限定だと思うが、このレッドカーペットの奥に入ると、照明をいっさい落としたこんなカンファレンス・パーティというかそんな催しものがあります。たぶん初日限定ですね。ワインを配膳しているボーイに聞いてみると、「コンサートが始まる前のプリ・パーティみたいなものだ。」と言っていました。大きなスクリーンがあって、そのスクリーンになにかを映し出していたり、なんか美術的なオブジェが置いてあり、そこに紳士・淑女がワイン片手に談笑している空間なのです。


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圧倒されますねぇ・・・。(笑)


自分の眼の前をワイングラスを片手に「ダンケ・シェ~ン」と言いながら横切っていくご婦人。あのゆったりした雰囲気は、まず我々のようなセカセカしたアジア人では絶対出せない雰囲気ですね。まず絶対無理です。体内のリズム感が根本的に全然違いますね。


このとき自分と同じ1人だった男性から話しかけられ、英語がドイツ語訛りだったので、ドイツ人だと思いますが、そのドイツ人とずっと話していたのでした。



そして幕間のインターミッションでのブレイク。


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まさにこれこそ、「ザ・ヨーロッパの夏の音楽祭」という図ではないでしょうか?同じ正装の図でも、日本のサントリーホールでの正装コンサートの和の雰囲気とはやはり違いますね。やっぱりヨーロッパ人は体格が大きいという感じがします。



そして終演後なのだけれど、なぜかドリンクをどうぞ!とスタッフ一同笑顔で迎えてくれました。


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さらばKKL!と終演後に後にします。


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この初日のオープニング・コンサートは、自分は最前列のこんな座席でした。もっと真ん中ら辺で聴きたかった。(笑)


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オープニング・コンサートはやはり特別で、いきなりコンサートが始まるのではなく、ルツエルン市長の登壇がありスピーチ。そしてダニエル・バレンボイムも登壇してスピーチ。そういうオープニング・セレモニーがあるのです。


それが終わってからようやくオープニングコンサート。


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2013/08/16 ルツェルン音楽祭オープニングコンサート:ルツェルン祝祭管弦楽団演奏会

会場:KKL ルツェルンコンサートホール



指揮:クラウディオ・アバド

メゾ・ソプラノ:藤村実穂子


ブラームス/悲劇的序曲op.81

シェーンベルク/『グレの歌』より間奏曲と「森鳩の歌」

ベートーヴェン/交響曲第3番変ホ長調『英雄』作品55



一生忘られないメモリアルなコンサートとなりました。このときが、藤村実穂子さんを初めて生で鑑賞した記念すべき日でありました。同時にルツエルン音楽祭、アバド&ルツエルン祝祭管を初めてリアルで体験できた日。


残念ながら自分の座席からのカーテンコールの写真には角度的にアバドが映っていないのが残念でした。このときの藤村さん初体験のときの印象は、自分はずいぶんこの音楽祭の祝祭的な雰囲気に飲まれてしまっていて、舞い上がっていてよく冷静に分析できなかったんですね。あっという間に終わってしまった、という感じです。


アバド&ルツエルン祝祭管は自分にとっては、やはり2000年代に入ってからの、この音楽祭、KKLで連続収録したマーラーツィクルスが一生涯忘れられない想い出で、このBlu-rayは当時のマーラー映像全集ものとしては画期的なものでした。バーンスタインのマーラー映像全集が業界初としたら、このアバドのマーラー映像全集は近代的マーラー解釈の自分のリファレンスとなりました。それだけ画期的だったのです。


そのアバド&ルツエルン祝祭管を、そのKKLでルツエルン音楽祭で生でリアルで拝見しなければいけない、というのは自分のクラシック人生にとって、やはりどうしても避けて通ることのできないmandatory taskだったのです。


このときの公演の模様は、Blu-rayで発売されています。


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ベートーヴェン:交響曲第3番『英雄』、

ブラームス:悲劇的序曲、他 藤村実穂子、アバド&ルツェルン祝祭管弦楽団(2013)





いまこうやって8年ぶりに拝見してみると、新たな発見がありますね。

サビーネ・マイヤーはもちろんのこと、吉井瑞穂さんも乗られていましたね。

お馴染みのルツエルンのメンバーもたくさん見えます。


当時の私の最前列からはよく見えなかったのです。(笑)


なんか藤村実穂子さんの日記なのか、ルツエルン音楽祭の日記なのか、わからなくなってきましたが(笑)それだけ、藤村実穂子=ルツエルン音楽祭2013オープニングコンサートのイメージで自分の記憶の中に刻み込まれているのです。


残念ながらアバドはこの年にご逝去。この年の秋にルツエルン祝祭管と来日予定でもあって、オーディオ仲間といっしょに行く予定でもありました。大変な高額チケットでS席6万円もする、さすが大物という感じでした。


亡くなられる寸前に、ルツエルンの本場で拝見できたことは、本当によかったと思います。



そのほかとしては、岐阜のサラマンカホールを体験したときも、藤村実穂子さんのリサイタルでした。


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このときはシューベルト、ワーグナー、ブラームス、そしてマーラーといったドイツ音楽作曲者によるドイツ歌曲をうたう、というコンサートでありました。


このときのほうが、藤村さんの本来の凄みをしっかり自分のものにできた気がします。


リアル生体験3回のうち、残り1回はミューザ川崎での東響名曲全集での恒例のクリスマスでの第九のときに独唱ソリストとして参加されたときに拝聴させていただいたと思います。


藤村さんのディスコグラフィーとしては、やはり想い出に残っているのは、このティーレマン&ウィーンフィルによるベートーヴェン交響曲全集ボックス。


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残念ながらこれは、いまは廃盤になってしまっているようなのだが、当時2013年に発売されたもので、ウィーンフィルがウィーン楽友協会でベートーヴェン交響曲全曲演奏会をやる、という当時としては大変な大イヴェントだったのです。それを全曲映像収録した大変貴重な映像素材。


藤村さんはこれの第九の独唱ソリストとして参加されています。


2002年にバイロイト音楽祭でフリッカ役で登場して以来、9年連続で同音楽祭に出場という大評判を聞きつけて一度は藤村さんの歌っているところを拝見してみたいな、とずっと思っていたときに、初めてそのお姿を拝見したのが、この映像素材ボックスの第九だったのです。


これが自分の初藤村体験です。


衝撃でした。


この日記を機会に、


2021.8.22 (日)


サントリーホール サマーフェスティバル2021 ザ・プロデューサー・シリーズ 


アンサンブル・アンテルコンタンポランがひらく

~パリ発~「新しい」音楽の先駆者たちの世界~東洋-西洋のスパーク


に参加されるようなので、さっそくチケットを取りました。

楽しみにしています。


藤村さんのCDは大変失礼ながらいままで持っていなかったんですね。

さっそく5枚購入しました。


ディスコグラフィーを拝見して驚いたことは、音源ならば全部SACD、そして映像素材ならば全部Blu-rayなのです。もちろんレーベルの意向もあると思いますが、これは驚いたと同時にこういう高画質・高音質指向の方向性に我得たり!というようなとてもうれしい気持ちになりました。


さっそく、ドイツ歌曲集4枚とオペラ・アリア集の合計5枚を購入しました。


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ドイツ歌曲集は、オフマイク録音で、非常にホールの響きが多い特徴ある録音でしたが、藤村さんのすばらしい声とともにじつに味わい深いいい録音でした。


オペラ・アリア集のほうはやはり燃えますね。(笑)オーケストラのコンサートと違って、人の声のコンサートというのは、本当にぐっと心の底から燃え上がってくる情熱というか、その感動の具合がとびぬけて素晴らしい。人の声の魅力って本当に素晴らしいです。


これはどの歌手のCDでも同じことですが、オペラ・アリア集は聴くと必ず燃え上がって感動します。ワーグナーのアリア、ビゼーのカルメン・・・素晴らしいのひと言でした。








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