アンディ・サマーズ自伝ポリス全調書 Vol.2 [ロック]
3作目の「ゼニヤッタ・モンダッタ」をリリースするときは、もうビッグバンドになっていて、もうスタジオで録音して編集してアルバムとしてリリースして、その後はワールドツアーに追われる毎日。(このとき世界36か国のワールドツアーを敢行して、収録スタッフも同伴してその様子を映像素材としてリリースもされた。)
その頃になると、もう知らぬ存ぜぬいろいろな奴らがコバンザメのように寄り添ってくる。ある会社のお偉いさんとか、絶叫のファンの女の子たち・・・毎日ツアーでコンサート終演後に駆け寄ってくる。
正直うんざり。
売れたい、スーパースターになりたい、そんな気持ちでずっとやってきて、いざそれが現実のものとして自分たちのものとして得られると急激に冷めてしまうその現実。
俺たちが望んでいたことはこういうことだったのか。
プライバシーのない世界。
そんな日々の苦悩が告白されていた。
あと大事なのはアンディの家庭のこと。奥さんと結婚して子供も産まれる。でもワールドツアーに追われて家庭不在の日々が続くとどうしても心の亀裂が生じてしまい、その心身ストレスも大きかった。結局奥さんとは離婚。つらい日々であった。
バンドとして3人の間に距離が出てしまい、急速にひびが入ってくるのがこの4作目の「ゴースト・イン・ザ・マシーン」
この頃からスティングはその独特のオーラとルックス、そしてソングライターのセンスで、メディアから特別扱いされるようになって、それは自分たちもわかっていたことだけれど、そこにメンバー間に距離感が出来ていたことは確か。
アンディによると、スティングは昔は内向的な性格で、言葉少ない奴でステージではあのようなパフォーマンスをしているけれど、それが彼の本性なのかというとちょっと疑問という感じだったそうだが、この頃になるとメディア向けにいろいろ意識して発言することも多くなった。
この4枚目から急激に3人の関係は冷え込む。
やっぱりサウンド的な問題が一番ですね。このアルバムではシンセサイザーとか、サクソフォンとかいろいろ入っていて、なんか息苦しいというかサウンド的に厚みがあり過ぎて、ポリスらしくないという感じです。
もっと空間というか隙間がないと。
その空間を活かすサウンドが特徴だったのに。
アンディやスチュアートは、ギター、ベース、ドラムというスリーピースサウンドを大事にしたいけれど、スティングがシンセサイザーとか、サクソフォンを入れることを強く主張。
ここでもう修羅場だったようだ。
アルバムを作るという作業は、3人がそれぞれ作ってきたデモテープを聴いて、3人でいろいろ議論してどれをアルバムに入れるか決める。そこには相手の話を聞いて自分が妥協、譲与しないといけない辛い作業でもある。
もちろん1作目からスティングの曲が占めることが多いのだけれど、この4枚目になると、アンディやスチュアートの作曲能力も上がってきて、2人が作曲してくる曲もみんなポリスらしい曲になってくる。
でもスティングは基本、他の2人が作曲した曲は、自分で歌いたがらないんだそうだ。(笑)
この4枚目が完成したとき、どれをファーストシングルにしよかというときに、プロデューサー・スタッフはみんなアンディが作曲した「オメガマン」を一押しした。
でもスティングが歌いたがらず、拒否したので没になったそうだ。
自分も「オメガマン」はすごいシングル向きで、いい曲だなぁと当時思いました。クレジットを見るとアンディが作曲なので、驚いたことがあります。
スティングのエゴイストとしての一面が垣間見れますね。(笑)
スタジオでの作業も衝突が多く、自分のサウンド・パートが小さいとか、そんな些細なことでぶつかることが多く、かなり精神的にきつかったそうだ。
もうここにきてバンドとしての限界が来ていた。
自分は、この4枚目はすごくいい曲が多いけれど、これをどうやってライブで実現するのだろう、というくらいライブバンドとしては難しいなぁと当時思っていた。ちょっといままでのポリスサウンドとしては異質な感じ。
イギリスでは1位、アメリカでは2位(6週連続、結局1位にはならなかった。)。
イギリスでは超人気なのに、アメリカに行くとそうでもない。アメリカはすごく広い国なので、いろいろ地方のコンサート会場に行くと隙間だらけの観客だったり。ちゃんとした看板もなく、黒板にただポリスとバンド名を殴り書きされているだけとか。。自分の本国ではすごいスーパースターなのに、アメリカに来ると俺たちってこれだけのもんなの?
いつもそんな悩みに悩まされていたそうだ。
広大なアメリカで認知されるにはどうしたらいいのか。
アメリカで1位をとる。
アメリカでトップになる。
それを目標に5作目「シンクロニシティー」。
でも3人は、スティングは映画出演、スチュアートは映画サントラ制作、アンディはロバートフィリップとの共作アルバムと3人ともバラバラ。
感情的なしこりもあってかなり最悪な状況。
スタジオ収録も3人ともバラバラの別室でおこなったそうだ。
この頃の3人のバラバラ具合を示すいい事象だった。
この「シンクロニシティー」の最大のヒット曲「見つめていたい」。
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「シンクロニシティー」でネックになった曲は「見つめていたい」だ。最初にスティングのデモを聴いたときには、シンセサイザーの音で装飾されたイエスの曲に近かった。ギターやドラムの音を変えるべきだけど、この曲は何かあると思った。
いちばん揉めた曲だった。スチュワートとスティングはドラムとベースの演奏について議論を重ねていた。ボーカルを強調するにはどうするべきなのか。数週間の紆余曲折の末、ようやくベースとドラム、そして印象的なボーカルが録音された。
休憩しながらソファーにぼんやりと座っていると、スティングが「ギターのパートを入れてくれ」とソファーにもたれながら僕に告げた。
・・・・・(ポリスらしい音、どういうコード進行にするべきか、アンディの苦闘が記載されている。)
一気にコードを弾いてみた。
しばしの沈黙の後、調整室にいた全員が立ち上がって大歓声。嬉しさがこみ上がってくる勝利の瞬間。この曲はアメリカでナンバーワンになる。
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「見つめていたい」は全米チャート8週連続1位、そしてアルバム「シンクロニシティー」は全米チャート4か月連続1位独占。
「アメリカを制覇する」という目的は達成した。
なんかこのアルバムのときは、リリースしたときからアメリカのタイムズなどのメディアの取り上げ方が異常なほどの大絶賛の嵐で、いままでになかった大変革な感覚だったそうだ。
当然全米ツアーをはじめ、ワールドツアーを敢行。大変なムーブメントになる。
この「シンクロニシティー・ツアー」日本に来てほしかったなー。
当時、アジア圏は低く見られていましたね。彼らに提供するギャラもあまり大きい金額を提示できなかったのでしょう。
3人とも心はバラバラだったけれど、それに相反するように世の中は大変な騒ぎ。バンドとしてそれを投げだしてしまうことはできなかったとアンディは述懐している。
「シンクロニシティー・ツアー」の頂点は、やはりニューヨークのシェア・スタジアムでのコンサートですね。ここのところは、アンディの告白本でもかなり詳細に、そして感動的に書かれています。
自分の日記でも書きましたが、シュア・スタジアムはあのビートルズが野外ライブをやったところで有名。自分たちもついにビートルズに並んだ。
これでポリスとしてやることはすべてやった。
すべてが終わった。
そのあとは正式な解散宣言や解散コンサートをやることなく、ポリスは自然消滅してしまうのだが、それがアンディにとっては不満だったらしい。
きちんと世の中にケジメをつけたわけでなく、なんとなく・・・でいつか再結成することを自分は期待している、ということでこの本を閉めている。
この本が出版されているのは2007年である。
もちろんアンディがこの原稿を書き終わったのはもっとずっと前であろう。
ポリスは2007年に再結成してワールドツアーをやっているのだ。
日本にも来ました。
東京ドーム。
もちろん自分は行きましたよ!
もう生まれて初めて観る生ポリス。スティングの頭髪はほとんどなくなっていましたが。(笑)
レコードやVHSのテープで観たり聴いたりしていたあのお馴染みの曲を目の前で実演しているのである。
涙がドバーっと溢れてしまいました。
オールスタンディングの立ちっぱなし。腰痛い。
自分の目の前にギタリストのチャーがいました。(笑)
かなり業界人もたくさん来ていたそうです。
長年ファンやっていて救われたなと思った瞬間でした。
アンディはその後、数年後に離婚した奥さんとよりを戻して2人目のお子さんも産まれ、幸せな生活を送っているそうだ。自分で奇跡が起こったと言っている。アメリカに住んでいるのかな?
調べてみるとアンディはその後、結構アルバムをリリースしているんですね。驚きました。
フュージョンなんかもやっている。驚きです。音楽性が広いアンディらしいです。
自分がアンディのアルバムを現役で買っていたときは、ロバート・フィリップとの共作の心象表現と、XYZかな?
今宵は、心象表現でも聴いてこの興奮の酔いを醒まそう。
とにかくこの本は衝撃である。
あまりにも危険である。
もちろんこの本の内容を全部は書けないから、この日記に書いたのはその要約、一部だけである。実際はその瞬間、瞬間のことが事細かく記載されているのである。
かなり危険な書物である。
というか、14年前の2007年に世間のみなさんはすでに知っている内容だったんですね。(笑)自分はいま知って、いま読んで大感激しています。
ポリスファンはぜひ読まないといけない本であります!
2021-05-23 16:56
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