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パテントトロール [ライセンス・知財]

昨日7月13日付のニュースでとても自分のアンテナにビビッとくるニュースがあった。


Apple訴訟.jpg



「アップル、巨額の特許料支払い判決に対し英国市場からの撤退を示唆。」


本訴訟はOptis Cellular Technology社がアップルに対して、自社の「標準化された」スマートフォン技術(3GおよびLTE関連の特許)を使用したことに対して70億ドル(約7700億円)ものライセンス料の支払いを拒否したため、特許侵害で提訴したというもの。


これに対して先月、英国の高等裁判所はアップルに特許侵害があったと認定している。


同じ特許に基づく訴訟は米国でも提訴されており(Optis Wireless Technology、Optis Cellular Technology、Unwired Planet、Unwired Planet Internationalを含む5社の共同)昨年8月に5億600万ドル(約600億円)の特許料支払いの命令が下されたものの、控訴審で判決が覆されている。


米MacRumorsはこれら5社が、事業の実態がないパテントトロールだと指摘していた。



今回アップルが問題視しているのは、訴訟では英国の特許侵害のみが検討されたはずが、判決では全世界で販売されたiPhoneを対象とした金額が設定されていること。そのため、米国での判決の10倍以上もの支払いが命じられているわけである。


これに対してアップル側の弁護士は、もし裁判所がiPhoneで使われている技術に対して「商業的に受け入れられない」特許使用料を支払うよう強要すれば、英国市場から撤退する可能性があると警告した次第である。もしもアップルが英国市場を放棄すれば、理論的には支払いから逃れることはできる見込み。



アップルが決して小さくはない英国の市場から撤退し、iPhoneの販売ばかりか販売済みiPhoneのサポートまで止めてしまうのは常識的には考えにくいこと。しかしアップルは以前から「技術革新を侵害する」との理由からEU規制当局に特許トロールを抑止するよう要請しており、裁判所が歩み寄らなければ、万が一ということもありうるのかもしれない。



・・・こんな感じである。


要点は、


・英国での訴訟なのに、支払金額が全世界ベースの販売台数に基づいていること。

・相手が、事業の実態がないパテントトロールであること。


というところであろうか。


裁判所に訴えられたライセンス訴訟は、下手すると、差止請求で自社製品の市場での流通を禁止されるばかりでなく、巨額な賠償請求、裁判費用、弁護士費用などの支払いを命ぜられ、会社の経営を揺るがすだけの莫大な影響を持つので、とてもセンシティブな問題、ある意味血生臭いドロドロした世界である。


どこの企業でもかならず顧問の弁護士を抱え、その弁護士を通じて訴訟にあたるものである。


よくこの訴訟の類のニュースで、”和解した”という表現があった場合は、”金を払った”という意味なのである。その金額が両者との交渉で落し処というか、納得いく金額で収まったという意味なのである。



アップルがiPhoneを英国から撤退って、かなり大きなことではないだろうか?販売済みのiPhoneのサポートまでやめてしまうとなると英国市民の悲鳴が聞こえそうだ。


アップルは、それ以外にもかなり多数の訴訟問題を抱えて、なかなか火の車のような感じである。


自分が今回の日記で、ぜひ取り上げたいと思っているのは、そしてぜひ知ってほしいと思っているのは、パテントトロール、特許トロールという輩たちである。


この”パテントトロール”、”特許トロール”という言葉は、いわゆる英語でいうところの蔑称で、蔑んだ言葉使いなのである。


パテントトロールの意味を解説したイメージビデオもネットにはいろいろ公開されているようで、そこに使われている画像をピックアップすると、こんな感じである。


動画ムービー.jpg


パテントトロールのイメージ.jpg


knight-3376073_640.jpg


蔑称で、蔑んだ言葉遣いであるとともに、この画像のイメージの悪さ。

いかに彼らが悪者扱いのイメージなのかがよくわかるであろう。


コロナ禍で、自主警察とか、自称摘発ポリスとかが、ある意味悪い産物の象徴として流行ったが、それのライセンス版と考えてもらっていい。


自分は、このパテントトロールが昔から苦手である。(感覚的にですが。。)自分の中でかなりイメージが悪い。


どれくらい前からだったかなぁ?10年くらい前に突如ライセンスの世界に登場して、そのあくどいというか、非常に計算され尽くしたその手口に、生理的に反感を抱いていた。


うちの会社も随分このパテントトロールには痛い目にあってきたし、そしてパテントトロール対策・保険をしている。


これはうちだけではなく、技術系の会社、ハイテクの企業は、みんなこのパテントトロールには、散々痛い目にあって、その対策をやっているのではないだろうか。


●パテントトロール、特許トロールとは


パテントトロールまたは特許トロール(英: patent troll)は、自らが保有する特許権を侵害している疑いのある者(主にハイテク大企業)に特許権を行使して巨額の賠償金やライセンス料を得ようとする者を指す英語の蔑称で、その多くは、自らはその特許を実施していない輩たちである。(特許に基づく製品を製造販売したり、サービスを提供したりしていない)



●パテントトロールの特徴


パテントトロールは小規模な企業であることが多い。パテントトロールは、元来メーカーであり自社製品の製造販売のために特許権を取得した企業が、製品事業の中止や売却により保有特許が死蔵特許化したことによって、それを活用してライセンス料獲得をはじめたのが起源であるとの分析がある。


しかし、その後パテントトロールの事業性が知られるにつれて、パテントトロール自身は当初から研究や製造の設備を持たず、自らの研究開発によっては特許権の取得を行わないことが多くなっている。


自ら発明を行って特許権を取得することよりも、特許権を侵害している企業を見つけて権利を行使し、巨額の損害賠償金やライセンス料を得る目的で個人発明家や企業などから安価に特許権を買い集め、いつでも特許権侵害訴訟を起こせるように、特許ポートフォリオの拡充に努めているとされる。


当然のことながらパテントトロールとよばれる者自身が自らパテントトロールと称することはなく、表向きはソフトウェア開発などの事業を会社の事業内容として掲げていることもある。


これは利益目的ではなく、裁判に備えて自社実施をアピールするために製品開発を行っていることをアピールする目的が大きい。 




●企業がパテントトロールの攻勢に弱い理由


通常、同業の製造業・サービス業の企業同士(例えば自動車メーカー同士や電機メーカー同士)では、同業他社が自社の特許権を侵害している疑いがある場合でも、損害賠償や製造差止などを要求することは少ない。


これは、同業者間では相互に同じような技術を有している可能性が高く、相手側の特許侵害を追及した場合、逆に相手側からも特許侵害で反撃されるリスクがある上、競合企業であっても部品購買などで互恵関係があることも多いため、紛争がこじれると互いに不利益になるとの意識が強いからである。


そのため、特許権侵害の紛争が起きても比較的友好的にライセンス料支払いの交渉をしたり、相互に自社の特許権をまとめて実施許諾するクロスライセンス契約に持ち込んだりするなどして円満に解決を図ろうとする。 


しかし、パテントトロールは自らは製品の製造やサービスの提供を行っておらず、他社の特許を侵害するリスクがないので、強気に権利行使することができる。


訴えられる企業の側としては、パテントトロールに対し特許侵害で反訴することはできず、パテントトロールは製品の製造販売・サービス提供を行っていないため差止請求による牽制もできないため、クロスライセンス契約による解決は実質的には不可能である。


また、売上が大きく幅広くビジネスを行っている大企業であるほど、特許紛争で負けて製造やサービスの提供が中止に追い込まれた場合の損害が大きくなる。


さらに、訴訟が長引くだけでも、新製品の開発の計画が狂ったり、顧客に不安感を与えて販売に悪影響があったり、人的リソースを訴訟に割かざるを得ない等の多大な不利益がある。


このため、パテントトロール側の要求が不当なものであったとしても、それに応じることが起こりうる。 


また、弁護士費用を含む訴訟費用についてみると、訴訟費用と同程度以下の実施料を求められた場合には、例え裁判で争って勝ったとしても求められた実施料以上の費用がかかることになるため、当初からパテントトロールの要求に応じて裁判を回避した方が損失を抑えることができることになる。


この傾向は、特に証拠開示(ディスカバリー)手続等によって弁護士費用が膨大になる米国において顕著である。



こんな輩たちである。(笑)


つまり自分たち自らはペーパーカンパニーのようなもので、他社から特許を買い漁って、特許ポートフォリオを構築して、その特許を使っていると思われる他社に権利行使して、莫大で巨額なライセンス料、使用料、実施料を得ることを目的に活動している会社なのである。


自分たち自らは、事業実態を持たないペーパーカンパニーなので、もし相手を訴えたときに、その相手からカウンターとしての反撃を食らうこともない。


結局、裁判費用、弁護士費用、商品の流通計画への影響を考えたりすると、悔しい、不条理・不当とは思いつつもパテントトロールの提示額で和解したほうが、全体として安上がりで収まるということから、和解締結してしまうことも多い。


ある意味彼らの思うツボなのかもしれない。


企業にとって、非常に厄介な存在である。いまのご時世、ハイテク企業ならつねに、このパテントトロールによる攻撃の危険にさらされている、と言ってもいいのかもしれない。


いまこのパテントトロールの餌食になっていく企業は年々増えつつある。


でもネットでの記事を斜め読みをしていると、このパテントトロールのやり方をフェアではない、と思ってるのは業界みんなそう思っているのであり、このようなビジネスが成り立つこと自体、問題あり、ということで世界中の知財法などで、このパテントトロールのやり方を禁じていく方向に持っていく、あるいは軌道修正するような流れはあるみたいである。


ぜひそうなってほしいです。


自社で開発した技術を特許出願し、それに基づいての事業形態がきちんと存在し、その事実に基づいて他社に権利行使する、という本来のライセンス供与の在り方に忠実にあるべき、その原点に戻るべきだと思うのである。


パテントトロールのやり方は、トンビに油揚げ的で、なんか感覚的に癪に障るんですよね。あくまで自分の個人の感覚なのですが。。。


今回のアップルiPhoneの特許料訴訟で英国撤退。。というニュースを読んだとき、その相手がパテントトロールであることを読んで、あ~やっぱりな、相変わらずやっかいな存在、奴らだなぁ~と思うことをしきりだったのである。


明日は、いや今もわが身ではありますが・・・(笑)


ライセンス訴訟、知財訴訟の世界では、こういう存在のカンパニーもいるんだということを知ってほしく、この日記を書きました。





 

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