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体験!浜離宮朝日ホール [国内クラシックコンサート・レビュー]

築地市場にある浜離宮朝日ホールは、かねてより自分のお気に入りのコンサートホールのひとつで、室内楽専用のシューボックスというまさに”究極の音響”が得られるホール形状が、気に入っている理由のひとつであった。


かなり自分のお気に入りのホールで、その昔、かなり通い詰めた想い出深いホールである。


1992年にオープンし、客席数552席、世界で最も響きが美しいホールの一つと評価されるシューボックスの室内楽専用ホール。


単に、個人的にお気に入りというだけではない。正式な箔もついている。


1996年、米国音響学会は世界22カ国の76ホールを調査。その結果、ウィーンの楽友協会ホールなど3ホールが最高の「Superior」の評価を受け、浜離宮朝日ホールやニューヨーク・カーネギーホールなど6ホールが「Excellent」に挙げられた。


この調査は、残響・聴衆とステージの関係の親密度・音のバランス・音色の輝き・透明感・温かさ・質感などを技術的に測定する一方、演奏家や音楽評論家の意見も取り入れて総合的に判断されたものである。


一度、自分の日記でこのホールのことを、自分の印象、自分の言葉でぜひ語ってみたいとかねてよりずっと考えていて、そこにピアニスト浦山純子さんのピアノ・リサイタルがあることを知り、そのコンサートに行くことを決めた。


数年前にもこの浜離宮朝日ホールで浦山純子さんのピアノ・リサイタルを聴いており、これもなにかの縁なのだろうと思い、今回のコンサートを以て、正式にこのホールのことを自分の日記で語ってみたい、と決意したのだ。


これを決めたのは、入院真っ盛りの9月のことであった。病院のベッドの中で決めた。


あと2か月でちゃんと復活できるのだろうか、駅からコンサートホールまで、ちゃんと自分の脚で歩いて行けるのであろうか、そんな不確定要素がたくさんある中、決断した。


コンサートホールに通う日常を取り戻すための自分の決意表明のようなものであった。これを決めてから、日々のリハビリに気合が入ったことは言うまでもない。(笑)


およそ6年ぶりの築地市場。築地市場には朝日新聞東京本社がある。


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朝日新聞は、自分の人生に縁がある。自分の実家がずっと朝日新聞をとっていた。そして自分が就職して上京して1人暮らしをし始めたときも、朝日新聞をとっていた。毎日きちんと新聞に目を通すというそんなあたりまえの日常生活を送っていたが、電子版などが普及していくにつれ、紙媒体で読むことが億劫になっていった。


あとこれが一番の理由だけれど、若いときは、社会人として仕事に慣れる、そういう社会人生活のサイクルに慣れるまでいっぱいいっぱいで、心に余裕ある生活を送れなかった。電子版で十分と思っているところがあった。


その影響が後押ししてか、あの古新聞を定期的に処分するあの手間が面倒になってしまい、その後、紙媒体の新聞をとらなくなってしまった。


でも自分の心の中では、やはり新聞はちゃんと読んだ方がいいと思っている。社会の常識、見識を身につけるには新聞を読むべきである。もういまは社会人生活として余裕のある生活を送れているので、また近いうち、復活しようかな。



浜離宮朝日ホールは、その朝日新聞社のホールなのである。朝日新聞は、音楽・文化活動に熱心な媒体なので、そこが世に問うた、「元祖良質のリサイタルホール」ともいうべき立ち位置のホールである。


朝日新聞社東京本社新社屋新館2階にある。この音楽ホールとリハーサル室、多目的イベント会場としての小ホールの3つの施設を備える会館。


国内外のアーティストやアンサンブル団体がこぞって東京公演のコンサート会場に指名する人気ホールでもある。東京の中規模コンサート専用ホールの草分けとして1992年の開館以来、首都圏有数のリサイタル・ホールとして、海外のアーティストにも知れ渡っており、出演者からも評判は高い。


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ビル内は内装壁は白い大理石でできていて、階段、エスカレーターで2Fにあがると、そこにホワイエ空間が現れる。浜離宮朝日ホールのホワイエは、この階段、エスカレータを上がったところの大きなエリアと、ホール前の小さなエリアと2か所に存在する。


まず、階段、エスカレータを上がったところの大きなエリア。


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コロナ禍が鎮静ムードであることもあり、超満員御礼の混雑ぶりであった。確固たる、そして暖かいファン層に囲まれていることがよくわかる。



そしてホール前の小さなエリア。


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花束も贈呈されていた。


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白い内装壁に赤い絨毯。とても清潔感溢れる明るい雰囲気があって、素敵なホワイエである。


そして、いよいよホール空間。


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ステージ正面の上空間。


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天井


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ブラウンを基調とした白とのツートンカラーで落ち着いた雰囲気の内装空間である。


客席552席という室内楽専用の慎ましやかな容積感もさることながら、やや横幅が狭いシューボックスである。これはウィーン楽友協会を思わせるところがあって、側壁からの反射音の到達もステージからの実音とそんなに時間差がないように思われ、座席の聴衆には、いわゆるいっぺんにドッと音がやってくる感覚なのだろうと思った。


だから、どちらかというと(もちろん側壁だけでなく、天井、床からもですが)音の包まれ感が豊かな凝縮された濃密な音空間なのだろうと思う。


空間感、ホールのボリュームによる残響感のある音とはちょっと真逆な感じですね。もっと凝縮された感じ。


自分がこのホールに入ったときに、まず感じたことは、ホールの壁面の凹凸がすごい少ないと感じたことであった。ホール内の音の乱反射をさせるための壁面の仕掛けが極端になさすぎる。


かなり平坦な感じで、バルコニー席の上部のほうに、定距離間隔で、とてもシックで大人の雰囲気のあるシンプルな彫刻がなされている程度である。(これは反響板の役割でしょう。)


客席すぐ横の壁面は、ツルツルテンである。


シューボックスの場合、その両端の平行面に起因する定在波という王様のような問題があって、その定在波対策のために、壁面に凹凸をつけたりあるいはそういう仕掛けをするのものだが、これだけ凹凸が少ないと、その定在波の問題が大丈夫なのかな、ブーミーな音響になっているのではないかというような心配をまずしたものである。



天井は、折上・格天井風に設えた反響板で表装されている。1次反射音を散乱するとともに残響音の拡散にも寄与する音響拡散体としての効果があるのだろうと推定する。


ステージの背面にある茶色の囲いもステージから客席への音を反射するための反響板の役割なのだと思います。縦に乱反射のためのスリットが入っていますね。


そのステージ上空の空間がよく理解できないところでもあった。室内楽ホールにそういうことはないと思うが、まるでパイプオルガンが納まるはずであったホール舞台背面の壁面は、その計画が資金難で頓挫してしまい、「ポッカリ」収納スペースが空いたままのような感じがして、その正面に三角錐の屏風型の反響板が設置されている。演奏者にお互いの反射音を、前方聴衆に初期反射音を返しているのであろう。



内装空間は、一見すると木造の木のホールのように思うのだけれど、1992年当時の昔に竣工されたホールなので、当時の建築基準ではステージの床以外での木材の使用が禁止されていたそうで、バルコニーから上の拡散デザインの壁には表面を波形に加工した大理石状の不燃性材料が用いられていて、それ以外の壁と天井は石膏ボード、もしくは不燃性材料が使われているのだそうだ。


床なんか、写真を見ると完全に木の床だと思うのだけれど・・・。


1992年というと、まだそんなに日本には、クラシック専用、室内楽専用のシューボックス・ホールというのがない時代でその頃に完成したこの「浜離宮朝日ホール」はその当時としてはものすごい画期的なホールだったのだと思います。


同時期頃にできた、大阪の「いずみホール」や、その後新しい時代にできた、「彩の国さいたま芸術劇場・音楽ホール」,「紀尾井ホール」,「トッパンホール」,「石橋メモリアルホール」などを見ると、シューボックス・タイプのホールの進化具合がよくわかると思います。


浜離宮朝日ホールはその元祖だったんだと思います。室内楽専用シューボックス・ホールの走り、元祖だったのです。


実際自分の耳で感じた音響であるが、ピアノとヴァイオリンの音での判断であるが、柔らかい暖色系の音質で、響きも豊かな素晴らしい音響であった。


傾向として、やはり包まれ感があって、ホールのどこの座席でもきちんと音が届く、それがpppの再弱音であっても、そんなホール音響の均一性を感じた印象であった。


素晴らしいホールだと思います!


ブーミーな定在波とは無縁のように思えた。内装空間を見て、自分の頭で理論づけても実際に聴こえる音は、その通りにはならないというよい例ですね。(笑)


この日は、浦山純子さんのピアノ・リサイタル。


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ヨーロッパデビュー25周年、日本デビュー15周年を記念する特別なリサイタルで、本来であれば去年開催される予定だったのが、コロナ禍で延期となってしまい、今回開催の運びとなったのであった。


仙台出身で、桐朋学園大学音楽学部ピアノ科卒業後、ポーランド国立ワルシャワショパン音楽院に留学。1995年ラジヴィーウ国際ピアノコンクール優勝、及び最優秀ショパン賞(ポーランド)、98年ポリーノ国際ピアノコンクール最高位(イタリア)を始めとする数々の賞を受賞。


96年よりロンドンを拠点とし、名門ウィグモアホールにてデビュー。ヨーロッパで数々の名門オーケストラ、名指揮者と共演。華麗な経歴とともに現在に至る。


ご覧のようにとてもフォトジニックな演奏家であるけど、まったく飾らない性格で、ファンとの交流をとても大切にする音楽家である。


定期的なリサイタルを、この浜離宮朝日ホールでおこなっている。



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ピアノはスタンウェイ。浦山さんはスタンウェイの専属アーティストである。


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ここの座席で聴きました。ホールの音が全体を俯瞰できる中間位置で、ピアノの打鍵の音が響板で反射され、右に流れていく方向を堪能できる、まさにピアノの音を堪能するには最高の座席でした。


この日は、チャイコフスキー、スクリャービン、ブラームス、そしてシューマンと、まさに浦山さんの世界を思う存分堪能することができた。


チャイコフスキーのくるみ割り人形は、あのミハイル・プレトニョフがピアノ版に編曲したバージョンで、かなりの大曲だと思った。


もちろん素晴らしくて感動したけれど、ピアノであの世界観を表現するのって、なかなか大変という感じで、演奏するのが大変そうに感じた。冒頭だったということもあってか、いつになくピアノの音が固くて、倍音が響き渡らないというか、ステージのところで音が固まっているような感じで、ホール内に響き渡らないような感じがした。


ところが、それ以降、ピアノの音がみるみるうちに変わっていき、音がどんどん柔らかくなっていって、響きも芳醇になり、最後のアンコールのシューマンではホール内に音が廻る感覚で、じつに素晴らしいと思った。


ピアノの音って、同じコンサートでもこんなに変わるものなんですね。まるで別人のようでした。


おそらくこのピアノは開演前のリハーサルでも試弾されていて、十分にウォーミングアップされているはずなのに、それでも本番で、最初と最後でこんなに音色、響きが違ってくるとはびっくりしました。


スクリャービンは素晴らしかったなぁ。オーディオではときどき聴いているけれど、実演で体験するのはほとんどない。レアな作曲家、曲だけれど、弾かれる前に、試弾しながらスクリャービンの和音進行について解説されていた。


その官能的な和音に思わず、ホロッとくるというか、心を揺さぶられる、心中穏やかでなくなる、なんともエクスタシーな和音である。


スクリャービンの練習曲と幻想曲であったが、じつに官能的な美しさで自分はひとめぼれ。この曲、CDで欲しいなとすぐに思いました。


ここらあたりからもうエンジン全開になってきて、どんどん吸い込まれるように惹かれていった。


後半は、ブラームス。桐朋時代の同級生のウィーン在住のヴァイオリンの前田朋子さんも加わって、ブラームスのヴァイオリン・ソナタ2番。ブラームスのソナタ2番は本当に名曲ですよね~~~。あのメロディの美しさは、ブラームスならでは、という感じですね。


ブラームスのヴァイオリン・ソナタ全集はアンネ=ゾフィー・ムターとオニキス爺さんのBlu-rayを狂ったように聴いていた時期があって、自分も2番はとくにお気に入りでした。


じつに素晴らしい演奏でした。


そして、アンコールにタイスの瞑想曲。もうこれはアンコールの名曲中の名曲。これを最後に持ってきたら、みんな必ず泣くでしょう。(笑)なんて美しい曲なんだ!


本当の最後のオオトリは、いままで登場してきたチャイコフスキー、スクリャービン、そしてブラームスに共通した作曲家としてシューマン。シューマンの献呈でありました。


もうこのときはピアノを弾くうえで、まさに脱力の極致といえる柔らかさで、ピアノの響きも柔らかくホール全体に響き渡る。美しさのクライマックスだと思いました。


最高のリサイタルでありました。


思えば、病院のベッドで、コンサートホールに自分で行けるかどうかもわからない不安の中で過ごしいたあの時分を考えれば、こんな有終の美、幸せな気分が待っていようとは予想もできませんでした。



2021年11月21日(日)14:00~
浜離宮朝日ホール
                                                  
浦山純子ピアノ・リサイタル
                                                  
ヴァイオリン:前田朋子
ピアノ:浦山純子
                                                 
チャイコフスキー(プレトニョフ編)
演奏会用組曲「くるみ割り人形」op.71
                                                
スクリャービン
練習曲 ニ短調 op.8-12
練習曲 ハ長調 op.2-1
幻想曲 ロ短調 op.28
                                                 
休憩
                                                 
ブラームス
                                                   
スケルツォ ハ短調 WoO.2
「5つの歌曲」op.105から 第1曲「メロディのように」
ヴァイオリンとピアノのためのソナタ第2番 イ長調 op.100
                                                  
アンコール
                                                   
タイスの瞑想曲
シューマン 献呈










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