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デジタル法隆寺宝物館 [美術]

東京国立博物館に新たな展示室として「デジタル法隆寺宝物展」が開室された。先月2月18日に観に行っていたのだが、お腹の体調不良や北海道帰省など重なりなかなか日記にできなかったのだが、ようやくご紹介できる。


これは素晴らしいです。人間の心の持ちようとして、やはり美術・古典鑑賞というものは高貴で一気に自分を高みに持って行ってくれるような不思議な力がある。


とくに自分が惹かれたポイントは、保存上の理由で常時展示がかなわない貴重な作品をデジタルを活用した技術で復刻させようという試みである。


やはり歴史・美術作品の最大の問題点は、その保存であろう。美術館好きな方であればよくお分かりになると思うが、展示室というのはつねに照明は暗く、湿度もかなり厳密にコントロールされている。これはひとえに、何百年という時代が経過している作品を破損しないように細心の注意を払う必要があるからである。


時代が古い作品につれ、常時展示というのはまず無理である。何年間隔で展示する、そのときはもう大イベント、そういう配慮が必要なのである。


そういう美術界において、最近の流れとして、原画をデジタル技術で複製、復刻して常時展示を可能にする。そういう方向性にあることは間違いないようだ。


聖徳太子の発願で7世紀初頭に建立された法隆寺ゆかりの名宝を、先端技術を駆使したデジタルコンテンツや複製でくわしく鑑賞、体験する展示室が東京国立博物館に完成した。


新しい展示室は、東京国立博物館 法隆寺宝物館に設けられる「デジタル法隆寺宝物館」。


法隆寺宝物館は、同寺に伝来し、皇室に献納された宝物300件あまりを収蔵・展示することを目的として、昭和39年(1964)に開館(平成11年(1999)に建て替え)。


「デジタル法隆寺宝物館」では、保存上の理由で常時展示がかなわない貴重な作品を、デジタルを活用した最新技術で紹介する。


2023年1月31日(火)からは国宝「聖徳太子絵伝」をテーマに、臨場感あふれるグラフィックパネル(複製)と、大型8Kモニターで絵の詳細まで自在に鑑賞できるデジタルコンテンツを展示する。


自分は、この8Kで復刻というところに猛烈に反応。すごい素敵な試みで心揺さぶられた。まったくそんな情報を持っていなかったのだけれど、朝たまたまSNSで偶然にこのことを知り、もうすぐに即決。すぐに観に行こう!でその日に行ってきた。


法隆寺は、聖徳太子の発願により17世紀に建立された名刹である。その西院伽藍のうち、金堂・五重塔・中門・回廊などの建物は、現存する世界最古の木造建築物として知られている。明治11年(1878)、法隆寺に伝来した宝物300件あまりが皇室に献納された。


これらの宝物すべてを収蔵・展示することを目的として、昭和39年(1964)、東京国立博物館が開館し、平成11年(1999)の建て替えを経て今日に至る。


国宝「聖徳太子伝」は、かつて法隆寺の絵伝を飾っていた大画面の障子絵である。平安時代・延久元年(1069)、絵師・秦致貞によって描かれた。10面からなる横長の大画面に、聖徳太子の生涯にわたる50以上ものの事績が散りばめられている。数ある聖徳太子絵伝のなかでももっとも古く、初期やまと絵の代表作にあげられる。



この法隆寺宝物館には、その障子絵の原画があるのである。でも長い年月を経て、画面の痛みがひどく、肉眼で細部まで鑑賞することは難しいそうだ。


これが東京国立博物館にある聖徳大使絵伝の原画だそうである。保存上の理由により年間の展示日数が限られている。展示されるときは、このような感じなんですね。本物見てみたいです。


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これのデジタルコンテンツ<8Kで文化財 国宝「聖徳大子絵伝」>は、この本作品の高精細画像を、大型8Kモニターに映し出すアプリケーションだそうである。


デジタル法隆寺宝物館は、法隆寺宝物館の中2階にある。


東京・上野である。


上野の東京国立博物館の中の一角に法隆寺宝物館があって、その2階にコーナーという形で展示されているのである。


ここが法隆寺宝物館。

ガラス張りの近代的な建物で驚く。手前には水が張られていてとても素敵である。もちろん自分は初めて来る。


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中はすごく天井が高く、無駄なものはいっさいない。これこそ博物館の基本というような空間に思える。


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2階に上がると、ありました。デジタル法隆寺宝物館。

いわゆるコーナーという感じの展示ですね。


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館内はとても静謐な空間で、静かなクラシック音楽が流れておりました。この効果はまるで精神医療のようなセラピティがあって、このBGMが背後に流れながら、この美術鑑賞するときのこの精神的な穏やかさ、心地よさなどとても素晴らしいと感じました。


中に入るとまず圧倒されるのは、壁面としてコの字に10面の壁画が展示されていることだ。このコの字に展示されているというのは、法隆寺の絵伝にあった時と同じようにしている、という配慮なのだそうだ。


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自分は、これが聖徳太子絵伝の原画なのか、と思い、スタッフに聞いてみたら、これは複製画だそうだ。原画はとてもでないが、いまは展示できるような状態ではないという。


過去の展示の際には、国宝「聖徳太子絵伝」を紙に印刷した原寸大のパネルを掲示していたが、今回、美術印刷専門のサンエムカラーに依頼し、人工絹にカサネグラフィカと呼ばれる独自の特殊技術を用いた印刷を行ない、一級表具技能士の手による表装を施した、一層「リアル」な複製パネルに生まれ変わったものだそうだ。


つまり今回8Kのデジタルコンテンツのみならず、この複製パネルによるリアルな「聖徳大使絵伝」も観れるということなのである。


これは圧倒されますよ!なんせ、原寸大ですから。

正直言いますと、今回の70インチモニターでの8K静止画より、こちらの原寸大複製パネルのほうがずっと感動しました。(笑)自分の仕事柄、8Kうんぬんというのはあまり珍しくもなく、NHKの技術展示でもよく拝見しているので、インパクトとしてはもう断然こちらの複製パネルのほうが圧倒されました。これは素晴らしいです。


この聖徳太子絵伝というのは、いわゆる聖徳大使の生涯、事績、成し遂げてきた50以上の業績をこの10枚の絵画に全部絵巻のように描き連ねたということなんですね。


聖徳大使ってそもそもどんな人なの?

我々の世代ですと、子供の頃の1万円札が聖徳大使でしたね。


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聖徳太子は、飛鳥時代の皇族・政治家。


叔母の推古天皇の下、蘇我馬子と協調して政治を行い、国際的緊張のなかで遣隋使を派遣するなど中国大陸を当時統治していた隋から進んだ文化や制度をとりいれて、冠位十二階や十七条憲法を定めるなど天皇を中心とした中央集権国家体制の確立を図った。このほか仏教を厚く信仰して興隆に努め、後世には聖徳太子自体が日本の仏教で尊崇の対象となった。


・・・だそうです。小野妹子を遣唐使として唐に派遣したのも聖徳太子でした。


よく俗的な話では、いっぺんに10人以上の話を聞きとれた、とか、空を飛んだとか、いろいろ逸話あります。そんな逸話もちゃんとこの絵伝に描かれているのです。


こちらが、8Kのデジタルコンテンツバージョンです。

こちらが今回のメインの展示物になります。


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70インチのシャープのモニターです。

さすが8Kといえばシャープというところですね。どうしてもそこに目が行ってしまいます。


8Kの画質そのものは、思ったほど高精細、高画質という印象もなく、これはいつもの理論ですね。8Kの撮像素子のカメラで撮影した画像の8K再生画質はそれはすごいと思います。でも、もともとの原画の解像度に限界があるものを8Kで復元してもなかなかそんなに現代の画質並みという訳にはいきません。アップコンバージョン技術としてどこまで、というのもありますが、でも飛鳥時代の絵画です。


でもやはり国宝、文化財をデジタルコンテンツとしてアーカイブするなら、もう現時点での最高画質の8Kでアーカイブするのは当然のことですし、有意義なことだと思います。そんなうがった見方をしないで、純粋な鑑賞眼という目で見るならば、じつに原画のクオリティをそのまま再現できる最高の画質であることは間違いないです。


こういうデジタルコンテンツというスタイルであれば、常時展示は可能ですし、しかも原画同等、原画以上の画質クオリティ。これこそが、将来の美術展示の在り方、そしてそれに一石を投じた作品だと確信しました。


素晴らしいの一言です。



このようにモニターの下のほうには、ボタンを押す操作画面があり、これを操作することで、たとえば聖徳太子の事績が実際の絵画のどの部分に相当するのかを示してくれるようなナビゲーションがされるのです。


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これはものすごく重宝しました。

これが自分が一番感動した部分です。


つまり複製パネルはたしかに原寸大で感動しますけど、どこになにが描かれているのか、見ただけではよくわからないんですね。それで、いったんこちらの8Kデジタルコンテンツのほうで、操作パネルで事績と絵画の位置関係を確かめるという作業をやります。


操作画面の下の方に、聖徳太子の人生における事績があって、それで自分が興味のある事績のボタンを押すと黄色の矢印と枠が出てきて、この絵画のこの部分だよ、ということをモニターに映し出してくれるのです。


それから原寸大の複製パネルのほうで実際観てみる、ということをやるんですね。


そうすると、ものすごく理解できたような気がするし、この10枚から成る聖徳大子絵伝の聖徳太子の歴史と事績がよく理解できるのです。



ちょっとこの操作パネルで位置関係を確認してから、実際の複製パネルで確認した部分の写真をご披露しますね。

ちなみに、デジタル法隆寺宝物館は写真撮影は大丈夫です。



●こちらが10人以上の人の話をいっぺんに理解できた。驚異の記憶力の絵画です。


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●こちらが空中浮遊の逸話の絵画です。


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●こちらが十七条憲法制定の絵画です。


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これは素晴らしい試みだと思いました。まさにデジタル時代の美術鑑賞というスタイルですよね。デジタルにすると、いろいろな付加機能、操作の利便性が出てきます。そのデジタルドメインの中でコンテンツそのもの以外にいろいろなサービスがみんな同じ土俵上で実現可能になります。


絵画そのものをデジタル化するということは、保存の問題を解決して、単に常時展示を可能にするというだけではなく、このような同じドメイン上でいろいろな付加機能サービスが可能になるという可能性が広がることだと思います。


美術館賞は、その昔から保存されている展示物を鑑賞することに意義があるんだというご意見も出てきそうですが、もうそんなことに拘っている時代ではないですね。


お城の世界でも、タブレット端末をかざすと、VRでその当時の天守閣が浮かび上がってくるというのもあたりまえになってきますね。幻の安土城の天主なんかもそうです。


そういうデジタルの力を借りれば、本来かかるべきであろう費用もかなり抑えられるというメリットもありますね。歴史、美術は、本来の物に真の価値を見出すというほかにデジタルの力でもっと幅広い楽しみ方ができる、そういう時代になってきているのでしょう。



コーナーの外側も素敵な空間が広がっています。


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伎楽面〈呉女〉(飛鳥時代・7世紀)の複製です。



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デジタル法隆寺宝物館のパンフレット。多言語対応です。日本語、英語、中国語、韓国語ですね。


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デジタル法隆寺宝物館はいわゆる2階にコーナーというスタイルで展示されていますが、1階や3階には本来の法隆寺宝物館としての展示もたくさんあります。それもぜひお勧めです。素晴らしいです。


自分が心底驚いたのは、この3階からの入り口から入っていく暗室の世界。


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この阿弥陀如来像の陳列を観たときです。これは圧倒されます。もうびっくりしました。これ1体ごとに全部違うのです。まさに仏教芸術、仏教美術の極致といっていいのではないでしょうか。


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デジタル法隆寺宝物館、聖徳太子絵伝 ~7月30日(日)までやってます。

8月1日(火)~2024年1月28日(日)は、同じ8Kデジタルコンテンツ展示は展示対象が変わります。

「法隆寺金堂壁画 写真ガラス原板デジタルビューア」


ぜひお出かけください。







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