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米元響子 ヴァイオリン・リサイタル [国内クラシックコンサート・レビュー]

自分のクラシック鑑賞人生の中でまさにこれぞ経験則だと思うのは、百聞一見にしかず、ということである。何度くり返し聞いても、一度でも実際に見ることには及ばない。 何事も自分の目で確かめてみるべきだという教えである。


つくづくそう実感する。


ピアニストもそうだが、ヴァイオリニストは必ず1回は実演に接しないと絶対ダメですね。いくらプロフィールやCDなどの音源を勉強してもダメなんです。


それじゃわかんない。
1回の実演に勝るものはないです。

1回観たら、すべてわかります。

たった1回観るだけで、そのアーティストのことがわかります。

実演に勝るものなし!


実演に接して初めて、その奏者のプロフィールや音源に繋がっていきます。音を聴いてるだけじゃ絶対わかんないだよね。全世界のオーディオマニアに言いたい!です。


たしかに音を聴いて、いろいろ想像を張り巡らせる楽しみも確かにある。
それもたしかにオーディオならではの醍醐味であろう。


でも本当にそのアーティストのことを知りたいのなら、絶対ステージを観ることをお勧めする。1回観たら、いままで辺り一面に霧が張り巡らされているようなどんよりした世界が一気に払拭され、くっきりとそのアーティスト像が浮かび上がってくるし、いっぺんにすべてが見えてくる。


なにをいままでいろいろ悩んでいたんだろう、と思うくらい、はっきりそのアーティストのことがわかるものなのである。


それはたった1回観るだけでいい。


もちろん何回も観れば、それだけ、そのアーティストのいろいろな側面も新たに発見できて、新しい側面を垣間見ることができるが、まずは1回観ること。


これはオペラ歌手などの歌手についてもあてはまるし、クラシックに及ばず、ジャズ、ロック、J-POPS、すべての音楽にあてはまることだと思う。


自分の知らない米元響子というヴァイオリニストは、いったいどういう奏者なのだろう、とずっとそのイザイ音源と、プロフィールを一生懸命勉強していろいろ想像を張り巡らせてみても、結局1回実演、その奏法を見たら、あ~こういうヴァイオリニストなんだ、ということがいっぺんにわかってしまうのである。


米元響子というヴァイオリニストのすべてがわかってしまったような。。。
それだけ視覚の訴えてくる衝撃は大きい。


昨晩つくづくその想いに感嘆としてしまい、思わず無意識につぶやきで吐露してしまった、というのが真相である。


昨日は、ハクジュホールがお届けするプラチナ・コンサート・シリーズ「ヴァイオリン・リサイタル」という企画で、米元響子さんが出演するということで、急遽チケットをとって馳せ参じたものである。2019年の20周年記念コンサートを逸してしまった自分にとって、同じ失敗は二度と出来ないという背水の陣で臨んだ。


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ハクジュホールは、白寿生科学研究所の所有しているホールで、健康器具など健康ビジネスを主体としている企業だけあって、絶対にコロナ罹患者、クラスターは出せないというプライド、面目があるのであろう。


チケットには、来場者カードのようなものがペアで連なって、座席番号、住所、氏名、連絡先電話番号などを書くようになっていた。


さすが!


ホワイエもこんな感じで、レセプショニストもフェースシールドなど完全装備、入り口の手の消毒、検温など万全態勢で臨む。


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緊急事態宣言の中、ホール座席もこのようにSocial Distancing対応で間引き対応である。収益的にもかなりダメージになると思うが、仕方がないであろう。それでもこの緊急事態宣言の中、コンサートを開催してくれた勇気に本当に感謝したい。


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ハクジュホールは、自分の大のお気に入りのホールである。
芸術的で実験的なその空間内装デザイン、そして抜群の音響の良さ。
都内屈指の室内楽ホールである。


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ハクジュホールといえば、このN801くん、なんだよね。(笑)
相変わらず美しいフォルムです。


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なぜホワイエにN801があるか、というと、遅刻でホールに入れなかったお客さんがホワイエで待機している訳だが、そのホール内の演奏の模様(音声)をホワイエに流すモニタースピーカーの役割なんだそうである。モニターSPにB&W N801を選ぶのは古のオーディオマニア心を刺激してナイスです。


この日の公演は、テレビ&ラジオで放映されます。

撮影入っていました。


日時はまだ未定ですが、

NHK-BS クラシック倶楽部
NHK-FM ベストオブクラシック

で放映予定です。楽しみです。絶対録画です。


おそらく5.0サラウンド音声、2K/4K/8Kのハイビジョン画像であろう。カメラがそのカット割りシーンに応じて5台、全体の空間をキャプチャーする天吊りマイク5本、そしてヴァイオリン、ピアノにそれぞれステレオのスポットマイク、とまさにクラシック番組を撮影するサラウンド収録の典型的で王道の配置であった。


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カメラは、レンズがCANNONで、本体が池上通信機のようです。
ステージ後方の正面に、正面からアングルを撮るメインカメラ。


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そして、ステージに向かって、右側にヴァイオリニスト、ピアニストを右横側面のアングルから撮るカメラ。床もケーブルが汚く見えないように処理してあります。(笑)


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ピアニストを横のアングルから撮るカメラ。


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ヴァイオリニスト、ピアニストを左側面そして、ちょっと下から覗き上げるようなアングルで1台。


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これらの5台のカメラで録りっぱなしにして、あとで各々カット割りシーンをつなげて1本の作品にしますね。


音声マイクのほうは、まず全体の空間をキャプチャーする、音場を録るマイクですね。天吊りマイクで、L,C,Rのフロント3本。


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ふつうのオーケストラを録るときのL,C,Rマイクアレンジに対して、ちょっと、L,C,Rの間の距離がすごい短いな、と思いましたが、オーケストラは大きいエリアを占有するのに対して、室内楽の規模だとこれくらいの距離でいいのでしょうかね。


そしてサラウンドL,Rの天吊りマイク。


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この5本の天吊りマイクで全体の音場をキャプチャーして、そしてヴァイオリン、ピアノの各楽器の音像は、それぞれスポットマイクで録るという感じ。


ヴァイオリンのスポットマイク。譜面台の横にあります。オーケストラのスポットだとモノラルがよく使われたりしますが、さすがバシッとステレオでした。


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ピアノのスポットマイク。こちらもバシッとステレオ・タイプ。ピアノの場合は、ピアノの弦がハンマーで打たれ、その響きの音が響板に反射されて、右側に流れますので、そこにスポットマイクを置くのが、一番ピアノの音を満遍なく上手に録るマイク配置ですね。もうこれは常識ですね。


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まさに5.0サラウンド音声のクラシック番組を撮る王道の配置ではないでしょうか?(笑)


ひさしぶりに生音を聴いたときの衝撃。とは言っても、正月のニューイヤーコンサートからまだ1か月くらいしか経っていないのに、あまりに驚きであった。


とにかく音が大きい!
生音ってこんなに大きい音だったのか!


そしてSocial Distancing対応されたホールの響くこと、響くこと!
ずっとこのままがいいです。(笑)


いやぁじつに素晴らしい音響、これぞ、ホールの響き!という感じである。


これはちょっと家庭内のオーディオで実現するのは、無理というか、厳しいものがある、と実感とため息。もちろんビフォー・コロナのときは、そんなことを意識することは全然なく、”技術は必ず追いつきます”と豪語していたわけで、もちろん自分はオーディオファイルの味方である。


実演とオーディオ・ビジュアルの世界は常に両輪で発展してきたもので、どちらかが欠けても現在のようなクラシック業界の発展はなかったと断言できる。


それはいままでのクラシックの歴史が証明してきている。


それを生演奏だけが音楽である、なんていうのは言語道断である。


オーディオ・ビジュアルの世界はつねに実演のレベルを目標に追いかけてきた立場である。これからも本物求め、ずっと追いかけます。


このホールの響きを体験したら、この四方八方から全身に音のシャワーのように浴びせかけられるこの体感。この体感の違いこそ、これからのオーディオの突き進む道標があるのだろうと確信した次第である。


ビフォー・コロナのときは、そんなに意識しなかったけれど、アフター・コロナになって、生演奏を体験できる機会が激減して、たまにしか体験しないと、この音の大きさ、体感の違いに愕然とするのである。そして、これは毎度思うことだけれど、本番の生演奏で大感動したそのコンサートが、収録され、NHKで再放送され、それを観たときのショック。あれだけ大感動したのにも関わらず、テレビ放映で見るとこんなに音の感動の波が平坦でつまらないものになってしまうのか。。


これは業界の永遠のテーマですね。
自分が昔からずっと感じていることだし、誰もが同じ印象であろう。


現在の放送という小さなD-Range、器にはやはりもう限界が来ているのではないか、と思うのだ。5.0サラウンドのD-Rangeでは、もう表現し尽せない世界、それを感じてしまう。


NHKの22.2chサラウンドが世の中にon publicになったとき、なにをたわげたことを!と一笑した。あのときは、9.1chなどのDolby AtmosやAuro-3Dを世の中に普及させることでさえ、しんどいことで、家庭にハイトチャンネルのSPを設置させること自体、抵抗があって無理があるだろう。


それなのに、22.2chなんて・・・という感じである。


でもなんかアフター・コロナのいま、それがわかるような気がしてきた。
なるべく実存する音空間に近いままをマスター音源とする考え。


一度削除してしまった情報は二度と復旧できないのであるから、マスターは限りなく実在の音空間と同じレベルで最高のスペックでアーカイブしておくこと。


それをあとで、Dolby AtmosやAuro-3Dにダウンコンバートすればいいだけである。マスターのフォーマットは下位互換があるようにしておくことが肝要。


マスターのためのフォーマットはあまり世の中に普及できるかどうか、などの心配をしないほうがいいという考え。


自分はなんかわかるような気がしてきた。


これだけリアルなホールでの響きを体感して、家庭内のオーディオとの差が大きいと、なんとかせな、いかんというところである。


スマン、コンサートの鑑賞日記の予定が、思わず脱線方向に・・・こっちのことを語らせると、つい熱く語ってしまい止まらなくなるので。(笑)


これくらいにしておこう。


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米元響子さんというヴァイオリニストを初めて体験して、感じたことは、女性奏者とは思えないくらい非常にパワフルで定位と音程の良さが素晴らしいヴァイオリニストだと思ったこと。パフォーマンスや虚飾といった類のものとは無縁の地に足がついた堅実な奏者だと思いました。


特に男性奏者並みのその定位と音程の良さに、自分は、なんかレオニダス・カヴァコスを思い出してしまった。

レオニダス・カヴァコス、日本ではたびたび来日してくれるのだが、自分が思うには、そのむさ苦しい風貌(失礼)からなのか、どうも人気がいまひとつのような気がする。

 
シャイー&ケヴァントハウスと良きパートナーで日本(サントリー)にも来日してくれて、聴きに行ったし、2012年の訪欧ではアムステルダム・コンセルトヘボウで彼らをシベリウスのコンチェルトで聴いたことがある。


そう言えばN響定期公演でもカヴァコス観たさにNHKホールで、これまたシベリウスのコンチェルトを聴きに行ったことがある。


結構自分にとって縁の深い奏者である。


彼の実演を観て圧巻と思うのは、そのボウイングとその音程の良さ。


右手の弓が弦に吸い付くようなボウイング。


一例をあげれば ヴァイオリンの重音奏法。
二つの弦を同時に弾けば、理論的には 音量が2倍にすることが可能のはず。


でも現実は そうではなく3度やオクターブの重音で動くパッセージでは、しばしばヴァイオリン独奏がオーケストラにもぐってしまうことが多い。 ところが カヴァコスの重音奏法は 音程が素晴らしく良いので本当に独奏ヴァイオリンの音量が2倍になったかのようにオーケストラを圧して くっきりと大ホールに響きわたるのだ。 


レコーディング、録音で聴くと 技術的な完璧さは あたりまえの成果のように思え、それほどビックリしないが、変幻自在のボウイングによる彼のダイナミックな表現力は、やっぱり生演奏を聴かないとそのスゴサはわかりえないと思う。


何回も彼の実演に接しているからこそ、わかるスゴサなのだ。


カヴァコスは本当に凄いです。
これは実演でリアルに体験しないとわからないと思う。
CDの音源を聴いているだけでは絶対わからないカヴァコスの凄さだと思う。


自分もオーケストラとコンチェルトで共演するカヴァコスを聴いたから、わかったことなのである。


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米元響子さんの奏法には、そんな定位と音程の良さが際立っているような気がする。
これはじかに観ないと絶対わからないことだと思います。


米元さんは、少なくとも商業スターという路線ではなく、もっと玄人筋で売っていくような奏者のような感じがします。


モーツァルト、イザイ、ドビュッシー、サン=サーンス、そしてフランクと、ヴァイオリン・ソナタのコンサートでは王道中の王道と呼ばれるレパートリーの中で、やはりイザイを演奏するときの殺気だったあの空気感は凄いものがあった。


もちろん他の演目も素晴らしいのだけれど、イザイを演奏するときは、譜面台をステージから撤収し、完全暗譜で1人、ヴァイオリン1本でそのホール空間を朗々と凍てつかせる、その恐ろしい空気感は圧倒されました。


米元響子にイザイあり!


という感じでやはり凄かったな。他の曲のときとは全然空気感が違ったです。


イザイ・ソナタの2番でしたが、やはり2番はいいですね。自分も6曲のソナタ全曲の中で1番好きです。一番コンサート向けかもしれませんね。


この日は、イザイ1曲だけでしたが、イザイの全曲+未完ソナタだけのリサイタルになれば、相当スゴい空気感のコンサートになるのでは?と思います。


ぜひ希望します。

この日はかなり痺れました。


空気を切り裂くような鋭利な感覚というか。自分は好きだなぁ。他の演目がかなり温く感じたくらいです。でもイザイだけだと集客の面でいろいろ問題ありますか?(笑)


とにかくこの日の演奏をじかに拝見して、いままで朦朧としていた米元響子というヴァイオリニスト像がはっきり見えたのである。




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終演後の記念撮影。
(C)ジャパン・アーツ(Japan Arts) Twitter



ハクジュホール プラチナ・コンサート・シリーズ Vol.5
米元響子 ヴァイオリン・リサイタル
2021年2月3日(水)19:00~21:15 ハクジュホール


モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ 第17番 K.296
イザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ 第2番 Op.27-2
ドビュッシー:ヴァイオリン・ソナタ


インターミッション(休憩)


サン=サーンス(イザイ編):ワルツ形式のカプリスOp.52-6
フランク:ヴァイオリン・ソナタ


~アンコール

イザイ:子供の夢
クライスラー:愛の悲しみ










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Shige

ノンノンさん、お元気なご様子で良かったです。
コロナで、思う様にコンサートに行けずに辛い日々ですね。
ブログを拝見して、私も行った気になっております。

現在、NHKでのサラウンド放送は、5.1か22.2で行われています。
中継機材のカメラですが、この時のものは、レンズはCanonのものですが、本体は池上通信機のものが使われています。
中継車の種類よっては、SONY製のものの場合もあります。
by Shige (2021-02-07 22:42) 

ノンノン

Shigeさん、

ご無沙汰しております。コメントありがとうございます。
本当にいやな世の中になってしまいましたね。
コンサートに行けないのは、生きがいを失った感じで本当に
キツイです。

そうなんですね。本体は池上通信機なんですね。
確かに思わずロゴを探したんですが、なかなか見つからず、当初
市販のものではないのか、とも思いましたが、ようやく
CANNONという文字を見つけたのでした。(本文を直しておきます。)

自分がソニーにいたときは、業務用カメラは圧倒的にソニー製だったような気がしましたが、いまはいろいろ群雄割拠なんでしょうね。

NHKのサラウンド放送は期待ですが、実演に行った公演がいかに感動を削がないように自宅でその体験を追体験できるか、に期待したいですね。
by ノンノン (2021-02-08 07:25) 

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