心臓破りの坂 [クラシック雑感]
サントリーホールの行きが超苦手である。サントリーホールは1986年の開館時はそれこそ交通アクセスの便がかなり不便な中途半端な場所にあった。いまでこそ、最寄り駅として銀座線の溜池山王と、南北線の六本木一丁目という2つの駅ができたことによって、随分助かっているところがある。
よって、いまサントリーホールに電車で行こうとするならば、銀座線の溜池山王を選ぶか、南北線の六本木一丁目のどちらかを選ぶという選択肢になる。
人によって、そのアクセスは様々だと思うが、自分の場合、行きは溜池山王、帰りは六本木一丁目なのである。1987年の東京への上京以来、この慣わしを変えたことはない。一貫してずっとこれである。
行きに溜池山王を選ぶ場合、いわゆる「心臓破りの坂」があるのだ。
これが自分は大の苦手。
今日はサントリーホールでのコンサートだなと思うと、家を出かける前に、かなり憂鬱でブルーな気分になる。「はぁぁぁ~」という感じである。
でもこの心臓破りの坂を上っている間、周りの景色はとてもお洒落なのである。植樹などの緑が美しく調和されていて富裕層、高級ブランド・エリアという、さすが、赤坂・六本木という佇まいで、自分はこの坂を登っている間、息ははぁはぁぜぃぜぃで苦しいけれど、その目に入ってくる景色の美しさで癒されているところがあって、苦手だけどじつは大好きというとても複雑な心境になる。
溜池山王からサントリーホールへは結構歩く。でも六本木一丁目からはサントリーホールはすぐである。
それであるならば、行きも帰りも六本木一丁目にしてしまえば、いいだけの話ではないの?と思うかもしれない。でもそんな単純なことでもないのである。
自分が住んでいる最寄り駅から都心に出る場合、東横線で渋谷に出て、渋谷から銀座線で溜池山王に行くのが1番スムースだし、気持ち的にストレート。なによりも電車を待つ必要がない。行けばかならず待たずしてその目的の電車がやってくる感じである。
でも六本木一丁目に行こうとするならば、途中駅で東急目黒線~南北線に乗り換えなえていかないとダメなのだが、まずピンポイントでその電車を待たないといけない。なにも考えず行けば、かならず待たずしてやってくる、という電車ではないのだ。そうすると、事前に時刻表でジャスト・タイミングで抑える必要が出てきて超面倒くさい。
自分はこういうのは苦手である。なにも考えずに電車の乗り換えはしたいものだ。
あと、昔、ちょっと試しにサントリーホールへの行きを六本木一丁目にしてみたとき、慣れないせいか、地下鉄の地下改札から地上に出るまで迷った経験がある。ホールはすぐ近くなのに、随分迷路で悩んでしまった。
やっぱり苦手だなぁと思った。六本木一丁目は、やはり終演後の帰路だな、と思った。
そしてなによりも行きに溜池山王を使う理由は、銀座線を使うからである。銀座線を利用すると、あのレトロ車両に出会うかもしれない、というワクワク感があって、もし出会ったときの幸福感など、他に替えがたい楽しみがある。
自分が銀座線を使うのは、サントリーホールで溜池山王に行く場合と、京都銀閣寺ますたにの日本橋本店に行くときの2つの目的のときのみである。
このなにげない”プチ幸福感”、”小幸福感”が人生にとってはとても大事なことで、そのために銀座線を利用しているようなものだ。だからこそサントリーホールの行きは絶対、溜池山王でないといけないということになるのである。
この溜池山王から、そして途中にある心臓破りの坂、そして美しい植樹の緑で整えられたエリアの景観、そこを通ってこないとサントリーホールにやって来た、今宵はサントリーホールでコンサートという気分になれないのである。
そんなプチ幸福感、小幸福感、そして大の苦手の心臓破りの坂、でも緑で美しい高級街の風情を写真で紹介してみよう。先日は、このためだけに、ここの写真を撮るためだけにサントリーホールに行ったのであった。(笑)
銀座線・溜池山王駅・地下改札口。
目指すは13番出口である。
こんな一直線の長~い長~い地下通路に出くわす。ひたすら歩きます。13番出口は、この1番端の行き着いたところにあります。
サントリーホールへの行きに溜池山王駅を使うと、こういう楽しみがありますね。その長い地下通路にこういう電子掲示板があって、よくコロナ以前の昔は、外来オケの来日に合わせて、その公演の宣伝がされています。この掲示板を見るのが結構楽しみだったりするかな?
そして1番端の13番出口について、まず階段を昇らないといけない。これも結構きついです。
そしてエスカレーターで地上出口にでる。
そうすると左側にドトールコーヒーがある。これが最初の目印である。
このドトールコーヒーの角を曲がったところに、じゃぁ~ん。ついに遭遇。「心臓破りの坂」。
「桜坂」というらしいです。この標識はここからその坂が始まるよ、という意味です。
自分はこの桜坂の標識を見た瞬間、一瞬心構える。くぅぅ~これからきつい、はぁはぁぜぃぜぃの苦しい時間がやってくるなぁという感じで。。。
日本に桜坂という名所の坂は、これだけ存在するそうである。
・桜坂 (名取市) - 宮城県名取市相互台東の愛称 → 相互台
・六本木さくら坂 - 東京都港区の六本木ヒルズ内にある坂
・桜坂 (東京都港区) - 東京都港区の赤坂アークヒルズにある坂
・桜坂 (大田区)
・さくら坂 (川崎市)
・さくら坂 (河南町) - 大阪府河南町の地名
・桜坂 (福岡市)
・桜坂 (西海市) - 西海市松島にある桜の名所
・桜坂 (那覇市) - 沖縄県那覇市牧志に所在する歓楽街
自分が言及している桜坂は、東京都港区の赤坂アークヒルズにある坂のことを指しているんでしょうね。
大昔の2000年頃に、歌手の福山雅治が、「桜坂」というシングルをリリースしましたね。いまでもよく覚えています。彼の場合の桜坂は大田区の桜坂のことを言っているんだそうだ。
秋田県大館市の映画館で撮影された柴咲コウのカバーアルバム「こううたう」からも「桜坂」をリリース。これ、YouTubeで彼女が歌うプロモビデオ見ましたが、ここで歌われている「桜坂」も、福山雅治氏の「桜坂」のカバーでしたね。やっぱりこの曲は名曲なんですね。
この曲が大ヒットしたときのことをよく覚えているので。。
自分が、サントリーホールに行く途中の桜坂の標識を発見したとき、まず自分が思ったことは、あっあの福山雅治の桜坂ってここだったんだ?という認識だった。
実際は違ったわけですが。
では、その赤坂アークヒルズの桜坂をこれから紹介します。
この標識を通ったところから、もうこんな緑の植樹エリアにガラ変します。本当にここからガラッと景色が変わってしまう。そしてここからすでに心臓破りの坂が始まるのです。もう最初のこの上り勾配から自分はかなりはぁはぁぜぃぜぃで辛いかな。気分はかなりブルーですが、でも目に飛び込んでくる景色は美しくて癒されます。
突き当たったところを右に曲がります。そうすると、またさらに緩やかだけれど、長~い、長~い坂が続きます。このときの自分は、はぁぁぁ~という感じで、これから長いなぁ~と溜息です。
途中のこのエリアを通過する頃になると、かなり心臓の鼓動が速くなり、体力的にかなりキツク感じてくるところになります。
自分が桜坂を昇って行って、一番疲労が蓄積されてきて、そのキツさ加減が一番ピークに達するのが、このさらに突き当りを左に曲がるとこをに差し掛かったところです。心臓だけではなく、足も棒状態になってかなりつらいところです。でも視界に飛び込んでくる植樹の緑、高級エリア感に心は最高に癒されているところでもあります。
この歩道橋が見え始めると、ようやく道半ばという50%まで達成した感を得ます。
この突き当りを右に曲がる頃になると、もう事実上の心臓破りの坂はお終いで、平坦な道になるのですが、そんな急に言われても、心臓のほうは、依然としてバクバクの鼓動は収まらないのです。
そしてサントリーホールをここから入っていく。なんか裏道みたいで心引けますね。(笑)もっと堂々と正面から入りたいものですが、自分は東京に上京して以来、サントリーホールへの行きは必ずこの裏口からコソッと入ります。
そしてこんな通路を通っていきます。
階段を下りていきます。
カラヤン広場が見えてきます。
そして右手にサントリーホールが見えてきて無事到着。
でも自分の心臓のバクバクの鼓動はまだ止まりません。そして足も棒になっていてかなりつらいです。到着したとともにやっと着いたかと気持ちは安堵しますが、心臓バクバク感と足棒状態は相当自分をむしばんでおり、安堵感と共にその疲労はここでぐっと自分に襲い掛かってきます。
そこで、ホール前にある陳四川飯店や昔カフェのあったテラスの前のテーブルと椅子に座って、休憩してその鼓動と疲労を癒すのです。
自分がサントリーホールにやってくるとき、行きの場合、このテラス席での休憩は相当重要な時間となります。
少なくとも鼓動が収まって、平常の自分に戻るまで1時間はかかると思います。
自分はコンサートにギリギリのタイミングで入るのはあまり好きではありません。余裕をもって少なくとも1時間~2時間以上前に入ります。
サントリーホールの場合、こういう理由により、そのマージンの時間が超大切になります。もしギリギリだったら、はぁはぁぜぃぜぃの状態でコンサート開演を迎えることになり、かなり精神上よくありません。
こんな感じです。だからサントリーホールの行きは超苦手です。
この日はこの写真撮影のためだけにやってきたのに、思わず予想だにしなかった音楽の神様のご加護を受けてしまい、ついふらふら~とダブルヘッダーを堪能。(笑)
やはり音楽は素晴らしい!
そして終演後の帰路である。
帰路は素直に六本木一丁目のほうの駅を使います。もうこれは順路。シティーベーカリー赤坂の前を通っていきます。
そして突き当りを右に曲がります。そうすると長い一直線の通路に出くわせます。
その途中に階段の下り口があるのです。そこを降りていきます。
そうすると車道に出ます。
横断歩道で車道を渡ります。
そうするとすぐに南北線の六本木一丁目駅となります。
こんなに近くてすぐだったなら、行きも六本木一丁目にすればいいのに~と仰りたいのはよくわかりますが、やはり行きは溜池山王なんですねぇぇぇ、自分の場合。
以上サントリーホールのアクセスについて印象を述べましたが、日本にはたくさんのコンサートホールがありますが、その中にもそのアクセスが苦手という印象があるホールがいくつかあります。
その代表格が東京芸術劇場。
ここは自分にとってカオス。
慣れるまでずいぶん時間がかかった。アクセス的には池袋駅のすぐそばにあるので、なにがそんなに難しいの?と仰るかもしれませんが、自分はこの池袋駅に来るとその巨大さからどうしても方向感覚がおかしくなる。
ある意味コツがわかってくると迷わなくなりましたが、どうも昔から苦手意識があって、ここはどうもカオスだった。
一番の原因は池袋駅が巨大エリア空間であることと、池袋の地上出口に出たときの特徴のない雑多な街景観。
慣れてくると大体電車ホームのどこら辺の車両で乗るのか決まってくるから、ある程度パターン認識できるようになってくる。
池袋駅に着いたら、このお蕎麦屋さんの傍を通れば、もう自分の認識ロックオンである。
そして池袋改札口中央改札。これが間違って南改札を出てしまうと、これまたカオスである。ホールまでたどり着くのはかなり難儀である。
中央改札をでると、東口、西口と2方向に別れる。もうこの時点でいつも方向感覚がおかしくなる。どっちに曲がればいいのか、わからない。
正解は左に曲がるのだけれど、もし反対改札から出ているのであれば右に曲がるだし、かなりカオスなのである。核心を以て曲がるのだけれど、間違っていていつまでたっても辿り着かないことはよくあった。
簡単なのは駅員さんに聞いてしまうことだが、最近、行先掲示板の表示のところに東京芸術劇場の方角印字があることに気づいて、それからは間違わないようになった。
そしてその方向に、雑多な通行人の人ごみの中を通っていき、ひたすら一直線の通路を歩いていく。
そうすると、その行き切ったところに地上にでる階段があって、そこを昇っていく。
地上出口にでる。
これはラッキーなほうである。なぜなら景観の中に東京芸術劇場の姿が覗き見えるからである。
でもちょっと違う地上出口に出てしまうと、その姿が隠れて見えなくなり、その雑多な街の景観の中でどちら方向に行けば芸劇に行く方向なのか、わからなくなる。
歩いていて違う方向に行ったりすると時間の無駄なので、そのときはもう人に聞いちゃう。
こんな駅のすぐ傍に立地してあるのに、昔から芸劇へのアクセスが苦手なのは、池袋駅の巨大さということと、地上出口に出たときに目にする雑多な目印をつけにくい街の景観にあると言ってよい。
最近ようやく間違わなくすんなり行けるようになった。
最近発見したのは、池袋駅地下道から芸劇への1本道で繋がっているということである。
でもこれまたコツが必要で、池袋駅は巨大なので、何本も大通路が平行に走っているのだが、その1番端の通路を歩く必要がある。だからいったん左折して右折してをやらないといけない。
そうするとこんなゲートが出てくる。
そこの地下道をひたすら直線で歩き続ける。
そうすると左に曲がるところに東京芸術劇場への入り口が見えてくる。
左折するとこんな感じ。
階段を昇っていくと・・・
いつのまにか東京芸術劇場のB1Fの広場に繋がっているのである。
ここは池袋駅連絡通路だったんですね。ようやく自分も賢くなりました。
東京芸術劇場に行ったときは、必ず開演前の腹ごしらえとして、手造りおにぎり吾ん田のホッカホッカのおむすびをいただく。超美味しいです。
このように芸劇はどうも苦手意識が昔からずっとありました。ようやく自分のマイテレトリーになってきたかな~という意識があります。
これと同様に苦手意識があるのは、トッパンホールとフィリアホールでしょうか。
トッパンホールはあまりに地の利、アクセス悪すぎでしょう。(笑)JR飯田橋からのあまりに歩くあのアクセスの悪さ。どこの駅で降りても、かなり歩かないといけなく中途半端で非常に難しいところに立地している。
でもトッパンホールはすごいいいホールなんですけれどね。
コンサートホールの立地条件に、昔、近くに休憩、憩いの場所などの商業施設があること、という条件を上げましたが、それと同時に交通アクセスの良さも大事な条件ですね。
コンサートホール、ハコは、そのガタイの大きさから巨大建築物なので、最初から駅の近くに意識的に建設するのは難しくて、あとから駅ができたり、ということが多いですね。
フィリアホールもなんか昔からちょっと苦手意識がありました。青葉台の駅改札をでて、向かいにある青葉台東急スクエアのデパートの中をエスカレーターで昇って行くその5Fにあったりして。
何か知らないけれど、アクセスの感覚的にちょっと苦手感があります。
フィリアホールは室内楽ホールとしては本当にいいホール。自分の大のお気に入りのホールでもあります。
今年の10月に諏訪内晶子さんの無伴奏ヴァイオリン・リサイタルがこのフィリアホールで開催される予定なので、それに行くつもり。いま予約抽選結果待ちです。
自分はフィリアホール会員でもあるので、このようにパンフレットがいっぱい送られてきて、一般発売よりもずいぶん先に情報を入手できます。
バッハのソナタ、パルティータ。シャコンヌ含め、無伴奏ヴァイオリンの王道ですね。楽しみです。
このように、サントリーホール、東京芸術劇場、トッパンホール、フィリアホールの4ホールは、どうしても先入観的にアクセスに苦手意識があります。家を出る前にはぁぁぁと溜息をついて、ブルーな憂鬱な気分になります。
行きだけですけどね。帰りは全然平気です。
逆にアクセスという点で、自分が一番得意で、もっとも悩まない、明るい気持ちになれるのは、ミューザ川崎と東京文化会館。
もうこの2ホールのときは、家をでるときからルンルン気分でなにも悩むことがありません。
初台の東京オペラシティと新国立劇場もそうですね。もう駅直結ですので、まず悩みませんね。
それでも東京オペラシティのほうは、昔ちょっと悩んだりすることもあって、地下改札からふつうの人が通う道でない変なところをグルグルしながら辿り着いたことがあって、苦手だなぁと思いました。
そのあと普通の人が通うアクセスを習得してからは苦手意識はありません。
こうしてみると、コンサートホールやオペラハウスって、交通アクセスの手段で、駅直結の通路や駅のすぐ傍という立地条件のところが非常に多いですね。そうやって建築計画のときから意識しているのでしょうね。交通アクセス条件は、必須事項なんでしょうね。
でもコンサートホールへのアクセスというのは、ドラマがありますね。その人の心の人間模様の中にその光景描写が刻銘に刻み込まれていきますね。
そのホールへの印象度合いにも大きく貢献しています。単にそのホールの内装や外装のことだけでなく、自分はどこそこのホールというとそこまでのアクセスの風景がどうしてもワンセットとなって心の中に刻み込まれています。
自分は今宵はサントリーホールのコンサートという日は、やはりあの桜坂の坂を登っていくあの体験がどうしても鮮烈な想いとしてワンセットでくっついてきますし、あの体験がないとサントリーホールに来たという印象がどうしても実感が湧かないのです。
あのテラス席で、心臓バクバク感、足棒状態を必死にリカバリーしているあの時間帯がとても貴重な時間なのです。
そういうアクセスへの想い入れというのは、首都圏のホールの場合、どこのホールであっても必ず固有の光景描写として自分の中に持ち合わせています。
2021-07-01 12:07
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