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ムーミンの原作者 トーベ・ヤンソンの映画 [映画]

ムーミンの原作者 トーベ・ヤンソンの半生を描いた映画が公開された。ずっと昔から楽しみにしていた映画だったので、ちょうど退院後に封切りされたのでタイミングがよくて助かった。


いまの自分にとって一番大事なのは、とにかく歩くこと、脚を使うこと。休日は積極的にお出かけします。


さっそく渋谷Bunkamura ル・シネマまで観に行ってきた。


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いやぁ~よかった!間違いなく今年のノンノン・アカデミー大賞最有力候補である。今年の自分の大本命は、もちろんビートルズのGET BACKだったわけだが、まさかの暴挙に出られ、意気消沈していた。


今年に入って、ほとんど映画は観ていないのだけれど、でもこの映画は本当によかった。ムーミン・ファンには堪らないと思います。


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まず自分にとって新鮮だったのが、フィンランド語!ヘルシンキ・フイルムという映画会社によるフィンランド映画で、とにかく自分が普段聴いたことのない接したことのない発音、ディクション!


フィンランド語ってこんな感じの言葉だったんだ~。(フィンランド語というよりスウエーデン語ですかね。)


フィンランドをはじめ、スウエーデン、ノルウエイ、デンマークなど北欧は英語がすごい!というイメージが自分の脳裏に深く埋め込まれている。


昔、北欧に出張したとき、どこの国の販社(販売会社)に行っても英語がすごくウマくて、ネイティブなみの流暢さで、こっちがもうタジタジという感じだった。(笑)


いやぁ~北欧ってどこに行っても英語がうまいな~と心底感心した。


でもこうやってフィンランドにはフィンランド語というちゃんとした母国語があるんだし、他の国もそう。たまたま自分が相手した販社の人がアメリカ人だったのかもしれませんね。(笑)


それ以来、自分の頭の中には、”北欧=英語がうまい”という勝手な方程式ができてしまっていたのでした。



ムーミンの原作者のトーベ・ヤンソンの半生を描いた伝記映画なので、いわゆるエンターテイメントの映画ではないわけだから、ストーリーに創作、脚色はないわけで、ノンフィクションの実話である。


だから話に妙なふくらませ方もしないし、事実に基づいて淡々と描かれている、ある意味とてもシンプルな映画である。


もちろんフィンランド人役者による出演で、ハリウッド映画スターのようなギラギラしたオーラがあるわけでもなく、とても一般市民らしくて自分にはとても好印象だった。


普通っぽくてよかった。



ムーミンは、もうご存じ世界中の子供たちに愛されている子供向けの漫画、アニメである。いろいろなユニークなキャラクターがいて、ムーミンの谷は子供たちに愛されている可愛らしいワンダーランドである。


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自分のHNのノンノンもここからいただいている。(ノンノンはムーミンの彼女である。)こんな平和で愛らしい世界を創り出す人だから、きっと穏やかで優しい平和な人なんだろう、と自分の中で勝手にイメージを創り出していた。そしてムーミンの愛くるしい世界から、きっと内気な人なのかな、という勝手なイメージも・・・。


ところが映画が始まるなり、自分にビシバシとすごいカウンターパンチを浴びせかけてくる。


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まず、トーベ・ヤンソンは煙草を吸う。(笑)それもかなりのヘビースモーカーである。これは面食らった。確かにいまのご時世、禁煙の世の中だし、自分も煙草は吸わないのだけれど、考えてみれば、1930~1940年代の話だから、当時の時代背景からすると、煙草を吸うのは、ごく自然な営みだったのだろう。


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そしてなにより驚いたのは、トーベ・ヤンソンは同性愛者でもあった。自分は、どんどんそっちの方向に話の展開が進んでいくことに、驚きを隠せず、えっえっえっ~~本当にいいの~、という感じだった。


それで女性専科か、というとそうでもない。(笑)しっかり男性とも愛を育みあう。


トーベ・ヤンソンはバイ・セクシャル(Bi-Sexial)なのである。


ヘビー・スモーカーにバイ・セクシャル!


愛くるしいムーミンのイメージがぁぁぁあああ~。(笑)おそらく自分だけでなく、世界中のムーミンファンが原作者トーベ・ヤンソンに同じようなイメージを抱いていると思うのだが、実際のトーベ・ヤンソンは非常に活発的で積極的なある意味飛んでいる女性だったのである。


後世、その同性愛者の相手(舞台演出家のヴィヴィカ・バンドラー)から、”トーベの愛は眩しかった!”と言わしめるくらい積極的な女性だったのだ。


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トーベ・ヤンソンを演じたアルマ・ボウスティさん。もう素晴らしいです!全裸ヌードも惜しげもなく濡れ場を複数シーン披露して体当たり演技。わあ~ボクのムーミンが!!!もう自分のトーベ・ヤンソン像を完全にぶち壊してしまいました。(笑)


とにかくいきなりの先制パンチでノックアウトされてしまった自分だが、もちろんそんな意外な一面だけではない。


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トーベ・ヤンソンはもともと偉大な彫刻家でもあった父、母は挿絵画家という環境に育つ。14歳で雑誌の挿絵を手がけ、以降挿絵画家としての仕事をするようになる。ストックホルム、ヘルシンキ、パリなどでデザインや絵を学び、風刺画家、短編作家としても活躍する。


芸術家の卵であったのだ。


でもご多分に漏れず、最初は売れなくて、金がなかった。


自分は、映画でも小説でもそうだが、芸術家、音楽家の売れない時代の描写が大好きである。人生万年貧乏の自分をそのまま投影してしまい、思いっきり感情移入してしまうからだ。


人間にとって、金がないときほど、精神的なダメージはハンパではない。本当にどうやって捻出するか、やりくりをいろいろ考えて、心身症になってしまう。そして臨時収入があったときに、いきなり感じるあのホッカホッカ感。あぁぁ~人間ってやっぱり金がないときが一番つらいな~ということは自分はよ~くわかっている。


貧乏だった芸術家が、成功をおさめ、一躍スターダムに上り詰めていくサクセス・ストーリーが大好きである。でもそのサクセス・ストーリーの中でも、その貧乏だったときの時代が大好きなのである。(笑)


同性愛者の相手、舞台演出家のヴィヴィカ・バンドラーや、男性との恋の相手、のちにトーベ・ヤンソンが正式に結婚する相手となる政治家、哲学者、作家、ジャーナリストとの出会いもそんな貧乏時代のときだ。


そのときの様々な心の揺れ動き、心の葛藤、人間模様が描かれて、物語は進んでいく。


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自分がこの映画を観て、つくづく考えさせられたのは、人生と言うのは、自分の思い通りには絶対ならないこと。思いもかけないところがキッケカで、人生花開くということだった。


芸術家として、売れない不遇の時代を何年も過ごし、ムーミンはあくまで本職ではない子供向けの自分の息抜きで個人的に書き溜めていたものだった。


それに目をつけたのが、同性愛者の相手の舞台演出家のヴィヴィカ・バンドラーだった。トーベ・ヤンソンの部屋に入って、その書き溜めてあったムーミンのスケッチを見て、ヴィヴィカはその才能に驚いてしまう。


ムーミンのいろいろなキャラクター、そして一面に広がるムーミン谷の世界のスケッチ。


自分は、このヴィヴィカがこのスケッチを見て、衝撃的な見てはいけないものを思わず見てしまったような驚いているシーンがすごい印象的である。ヴィヴィカは、愛の営みの中ではまったく知り得なかったトーベのその驚くべき才能に驚愕してしまったのである。トーベに気づかれないようにそのムーミンの冊子を自分の懐に拝借する。


自分はこのシーンがすごい好きなんですよね。印象的でした。


のちに、ヴィヴィカは自分の舞台でムーミンをやることを提案し、成功させてしまう。


そしてムーミンの人気を一躍決定づけた当時世界最大の発行部数を誇ったロンドンの夕刊紙 「イブニングニュース」での漫画連載。


その新聞社とのレストランでの面談で、週ごとに報酬を払うと言われて、ものすごい驚いた表情を見せるトーベ。自分はこのシーンも好き。サクセスストーリーの始まりですね。


売れなかった芸術家が、どんどん急スピードで成功の階段を駆け上っていくのを観るのは本当に楽しいし、爽快である。



人生と言うのは、自分の思い通りには絶対ならないこと。思いもかけないところがキッケカで、人生花開くということ。それに加えて、思ったのは、人間は自分の才能には気づかないものだということである。自分ではごく当たり前に振舞っていることでも、それがじつはすごい才能である、ということを自分は気づかない。


他人がその才能に気づき見つけるものなのである。


ムーミンは、あくまで子供向けの自分の息抜きのために書いていたもの・・・。それが自分の本職よりも、圧倒的にトーベの才能を光らせていた。


そのことは自分では気づかないのである。

他人がその才能に気づくものなのである。



トーベ・ヤンソンは自分のイメージしていた女性とは全然違い、飛んだ女性であったが、とても可愛らしいと思う一面もあった。


同性愛者のヴィヴィカの舞台で、舞台役者から質問されたときのこと。


ムーミントロールはどうして怒らないんだい?


彼は臆病な性格なの。優しい性格なの。


こう説明したトーベに、自分の息抜きで書いていたムーミンであるにも関わらず、しっかりそのキャラクターまできちんと設定していた原作者としてのプロ意識みたいなものを感じて、そのときトーベをすごく可愛い女性だと感じてしまったのである。



すみません。ネタバレ大展開で。(笑)でもこのシナリオをわかっていたとしても、劇場で見れば、もっと深く感動できます。


この映画「TOVE トーベ」


本国フィンランドでは公開されるや大絶賛で迎えられ、スウェーデン語で描かれたフィンランド映画としては史上最高のオープニング成績を記録。公開から約二カ月にわたり週間観客動員数ランキングで連続1位を維持するなどロングラン大ヒット。更に第93回アカデミー賞国際長編映画賞フィンランド代表へ選出されたのをはじめ、数々の映画賞を席巻したそうである。






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