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ヤノフスキのローエングリンの聴きどころはどこなのか。 [クラシック雑感]

人それぞれだと思うが、自分の経験によると、クラシックのコンサートの予習はあまり根をつめて綿密にやらないほうがいいと思う。あまり杓子定規にやってしまうと、自分の中でひとつのリファレンスというか物差しを作ってしまい、本番当日に聴いたときに、その通りになっていないことに、不満を感じてしまい、その意外性を受け入れない傾向がある。


生演奏は、水ものなのだ。意外性があることが90%以上だ。だからこそ実演、生演奏は面白いのだ。


その意外性があるからこそ、驚きがあるし、新鮮に感じるのだ。同じ演目を過去に何回聴こうが、毎回違った解釈に出会うものなのだ。だからクラシックのコンサートは奥が深いといえる。


そんな想いもあって、最近は自分はコンサートに行くときの予習はほとんどしない。ぶっつけ本番で臨む方が多い。


ぶっつけ本番で、驚きとともに受容せざるを得ないその感動は、それだけ心底感動したのだ、というニュアンス、驚愕に満ち溢れていて、それだけ臨場感があって、本物の新鮮さが漂うものだと思っている。


もちろんアプローチは人それぞれなので、綿密に楽曲を解析して打ち込んで、本番に臨む手法もあると思う。やはり人間って、とても楽しみにしているコンサートほど、綿密に準備しておきたいという衝動は必ずありますね。


ぶっつけ本番の手法だと、実演を聴いて驚き、感動して、日記を書くときに調べると、思わず真実を知って、あ~これは事前に勉強しておいてから、聴けばその習得具合もずいぶん違っていたんだろうなと後悔することもある。


鑑賞方法に正しいという論法はない。


東京・春・音楽祭2022のN響・ワーグナー。今年はローエングリン。


自分はコロナ禍になった2020年から、オペラには1回も行っていない。2020~2021年は、コロナ禍で公演すら満足に開催されなかった。2021年後半から、いろいろ工夫しながら興行するようになってからも1度も新国立劇場に足を運んでいない。


東京・春・音楽祭のN響・ワーグナーも2019年の「さまよえるオランダ人」以来の3年ぶりだ。自分自身、演奏会形式とはいえ、オペラを鑑賞するのは、じつに3年ぶりである。


先の日記でも書いたが、やはりオペラは予習、準備したほうが、本番を有意義に過ごせる。終演後の充実感、実りが多いのだ。


なによりも自分の中で、きちんとけじめをつけて、しっかり予習して臨みたいという気持ちがこみ上げてくる。


マエストロのマレク・ヤノフスキも無事来日した。


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よかった!!!


ヤノフスキは、2020年予定だった「トリスタンとイゾルテ」、そして2021年予定だった「パルジファル」。いずれもコロナ禍の外国人来日制限の規制にあい、開催中止となった。そうすると、2017年のリング・チクルスの最終「神々の黄昏」以来、じつに5年ぶりの再会になる。ヤノフスキもそうだが、自分たちにとっても、3度目の正直のようやくの心願成就。いろいろ想うところが多い。


マレク・ヤノフスキこそ、お互いいつ最後になるかわからない一期一会となる相手であり、これからは1公演1公演が勝負である。悔いを残さないように、しっかり足を運びたいと思っている。


さっそくその翌日からN響と練習に入る。また音を出す前から、「諸君、音が大きすぎる!」という笑いを取っているのだろうか。(笑)


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(C)東京・春・音楽祭 Twitter


東京・春・音楽祭では、2018年にローエングリンの演目をやっている。ワーグナーの楽劇10大作品は、トリスタンとイゾルテを除いて、全部完遂済みで、これからは2巡目となる。うれしい。10作品上演が終わったらシリーズ終わるのかな、と心配していたが、何巡でも繰り返しは大歓迎である。そのたびに新しい感激、出会いが待っているはずだ。


2018年のローエングリンは、クラウス・フローリアン・フォークトがローエングリンのタイトルロールであった。まさに彼の18番である。過去にオペラ形式と演奏会形式で2回、フォークトのローエングリンを体験できた。


今回はローエングリンは、フォークトではないのだ。はたして、フォークトでないローエングリンは、acceptableなのか。


いまからすごい楽しみである。違ったタイプのローエングリンを受容できる新しいチャンスでもある。どんな感動が待ち受けているか、はたまたガッカリするのか(笑)。生演奏は、水ものである。


2018年のときは、ライプツィヒ歌劇場の総監督であるウルフ・シルマー氏が指揮であった。そんなに悪くないと思ったが、ただその前の4年間、ヤノフスキのN響へのドライブ力、推進力を体験してきただけに、やはり聴き劣りするところが多かった。N響の鳴りという点で及第点であった。


やっぱりヤノフスキでないとダメだという印象を持った。これは自分だけではなく、その聴衆の一般的な感想だったようだ。クラシック界にそんな声が溢れた。


だから今年は、そんな想いを一気に昇華してくれる絶好のチャンスなのだ。


ヤノフスキの造る音楽は、非常に引き締まった音造りをする人で、テンポもものすごい快速テンポで速い。速すぎる、という評価も多い。とにかく硬質なサウンド造りで、きびきびしていて、聴いていてとても気持ちよく快感なのである。自分のサウンド指向に合う指揮者である。


自分は、ご存じのように、ヤノフスキとの出会い、それイコール、ワーグナー溺愛の日々、と重なる運命の人で、自分のクラシック人生の中で避けて通ることのできない人である。


ヤノフスキの音楽に陶酔している1人である。


だから、今年2022年の東京春祭のヤノフスキのローエングリンは、積年の爆発する想いに溢れかえっているのだ。だからこそ、気合を入れて臨みたい。後悔しないように、万全の準備をして臨みたいという気持ちになった。


ヤノフスキのワーグナーといえば、PENTATONE録音だ。



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「ローエングリン」全曲 

ヤノフスキ&ベルリン放送響、

K.F.フォークト、ダッシュ、他(2011 ステレオ)(3SACD)





当時の手兵、ベルリン放送響とタッグを組んで、最前線のワーグナー歌手勢ぞろいという顔合わせでベルリンフィルハーモニーホールでツィクルスで演奏されたライブ録音である。


ワーグナー録音史上、燦然と輝く優秀録音である。


東京春祭のワーグナーシリーズのコンサート前は、いつもこれで予習である。


さっそく超久しぶりに聴いてみた。


クラウス・フローリアン・フォークトやアネッテ・ダッシュなど蒼々たる顔ぶれで聴いていて身震いするほど感動する。やっぱりワーグナーはいいなー。


それでは、今年2022年度の東京・春・音楽祭でのヤノフスキのローエングリンの聴きどころはどこなのか、自分なりに推敲してみることにする。



まず歌手陣を紹介していこう。


ローエングリン(テノール)役

ヴィンセント・ヴォルフシュタイナー(テノール)


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ミュンヘン出身のテノール歌手。ニューイングランド音楽院でウィリアム・コットンに学び、グラニット州立オペラの《ラ・ボエーム》ロドルフォでデビュー、その後《カルメン》ドン・ホセ、《カヴァレリア・ルスティカーナ》トゥリッドゥ、《海賊》コルラード、《道化師》カニオ等を、マサチューセッツ、ニューヨーク、フロリダ、ニューハンプシャー等で演じた。


キャリアから、純粋なワーグナー歌手でもなく、もっとイタリア・オペラ、ウィーンもの、ヴィリズモなど幅広い役が歌える歌手のようだ。キャリアとして申し分ない凄さである。ワーグナーであれば、トリスタンとイゾルテ、さまよえるオランダ人、ワルキューレなどを歌ってきている。


自分はおそらく聴いたことがない初めての体験の歌手である。どのような声質&声量、はたまた声色なのか、とても楽しみである。今回の公演が成功するかどうかは、このヴォルフシュタイナーにかかっていると言ってもいい。自分はローエングリンである、と名乗る、名乗りのアリアなど、ローエングリンの魅せ場のアリアは多い。


白鳥に乗った王子様というエレガントな雰囲気を出せるのか。演奏会形式であるから、声だけでそのオーラを醸し出せるのか。フォークトの立ちはだかる壁は高い。フォークトのローエングリンとは違った新しい魅力、発見があるのか、である。ぜひ期待したい。



エルザ(ソプラノ)役

ヨハンニ・フォン・オオストラム(ソプラノ)


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南アフリカ出身。R.シュトラウス、ワーグナー、ヤナーチェク、モーツァルトの主役として引く手あまたのソプラノ歌手である。バイエルン国立歌劇場の《ローエングリン》エルザでは、聴衆と批評家の心を掴んだ。また、エクス=アン=プロヴァンス、ブリュッセルのボザール、アン・デア・ウィーン劇場、パリのシャンゼリゼ劇場、ロンドンのバービカン・センターではウェーバー《魔弾の射手》アガーテに出演した他、グラーツ歌劇場でリヒャルト・シュトラウス《サロメ》タイトルロール、リモージュ歌劇場でコルンゴルト《死の都》マリエッタ、バイエルン国立歌劇場で《フィガロの結婚》アルマヴィーヴァ伯爵夫人を歌った。



紙面の関係上、とても紹介しきれないが、彼女のキャリアも素晴らしすぎる!


オペラ歌手に限らず、クラシックの演奏家のキャリア・経歴記載は、いままでどの指揮者、オーケストラ、そしてオペラ公演を演じてきたのか、それをそのまま列記すること、つまりその経験数が多いほど、大きな勲章を意味している。だから省略・略記できないのだ。羅列しか方法がない。その羅列が長いほど、そしてその競演相手がビッグネームであるほど勲章なのだ。だからキャリア・経歴記載は、とても読みずらいけど、これは仕方がない。


彼女のキャリアを読んでみると、もうクラクラするくらい凄い。名前や顔写真から、自分は体験したことがないような記憶なのだが、ひょっとしたら知らずに体験しているかも?


とにかく引く手あまたの大人気者である。


これまでに、サー・サイモン・ラトル、アラン・ギルバート、アイヴァー・ボルトン、ヤニック・ネゼ=セガン、アダム・フィッシャー、アントネッロ・マナコルダ、オクサーナ・リーニフ、ベルトラン・ド・ビリー、ロランス・エキルベイ等の指揮者や、ハリー・クプファー、バリー・コスキー、トビアス・クラッツァー、ヴェラ・ネミロヴァ等の演出家と共演してきた。


《ばらの騎士》元帥夫人は彼女の代表的な役柄となり、サイモン・ラトル指揮でアムステルダムのオランダ国立オペラ、アラン・ギルバート指揮でスウェーデン王立歌劇場に出演した他、ベルリン・コーミッシェ・オーパー、モスクワのボリショイ劇場でも演じている。



もう目眩が・・・(笑)


どんな声、歌い方をするのか、とても楽しみである。エルザはローエングリンではもちろんヒロイン。エルザの夢で、白鳥に乗った王子様が助けに来てくれる、その願いから物語は始まる。エルザのアリアも魅力的だ。




テルラムント(バス・バリトン)役

エギルス・シリンス(バス・バリトン)


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今後の出演予定は、ベルリン国立歌劇場でバラク、ハンブルク州立歌劇場でアムフォルタス、ラトビア国立歌劇場で新演出の《さまよえるオランダ人》オランダ人、ビルバオ・オペラ(ABAO)の《フィデリオ》、バイロイト音楽祭ツアーの《ワルキューレ》ヴォータン、アヒム・フライヤーによる新演出『ニーベルングの指環』ヴォータンとさすらい人、ナポリのサン・カルロ劇場と東京の新国立劇場で《ワルキューレ》ヴォータン、ウィーン国立歌劇場でテルラムント、バイロイト音楽祭に再登場して《ローエングリン》、《パルジファル》等となっている。


キャリアとしては、ワーグナー歌手というか、ワーグナー演目を中心に活動されている歌手である。この方は、2018年のローエングリンのときもこのテルラムントの同役で出演されている。


自分はそのときの印象として、このように日記に書いていた。


フォークト、アンガーについで、素晴らしかった歌手。今年は本当に男性陣歌手が素晴らしかった!安定した声量、豊かな低音域に、その発声能力にとても感動した。テルラムントという、この演目では、要所を締める大切な役柄を見事に演じ切っていた。


やはりこのときのテルラムントの評判が良かったんですね。再登板となりました。





オルトルート(メゾ・ソプラノ)役

エレーナ・ツィトコーワ(メゾ・ソプラノ)


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ベルリン・ドイツ・オペラでプロ・デビューし、バイロイト音楽祭に出演。クラウディオ・アバドに招かれ、演奏会形式の《パルジファル》、シューマン《ゲーテのファウストからの情景》、ベルリン・フィルハーモニーでの彼のお別れコンサートに出演。同劇場には、ニコラウス・アーノンクール指揮のヘンデル《イェフタ》で、再び出演した。



自分はこのエレーナ・ツィトコーワのポートレート肖像写真を見て、あれ?どこかで見たことがある、遠い昔だけど絶対体験したことがある!どこのオペラだったっけ?


ベルリンフィルで招聘されているソリスト歌手関係?


随分と悩んだが、いまひとつ思い出せない。でも絶対観たことがある。自分の記憶の深いところに刻まれているのである。プロフィールを深く読んでいくにつれて、やっとわかった。


小澤征爾さんの当時のサイトウ・キネン・フェステエィバル松本である。(現在のセイジ・オザワ松本フェスティバル)あのバルトーク・イヤーのバルトークのオペラ「青ひげ公の城」でユディット役で主演していた歌手である。2011年のフェスティバルである。


やっとすっきりした。


スカラ座には、バルトーク《青ひげ公の城》ユディットでデビューし、大成功を収めた。同役は、ロンドンのバービカン・ホールでもヴァレリー・ゲルギエフ指揮のロンドン交響楽団で演じた(CDに収録)。マリインスキー劇場で演じた《青ひげ公の城》ユディットに対しては、ロシアの最優秀女性歌手として「ゴールデン・マスク」賞が贈られた。同役は、小澤征爾指揮のサイトウ・キネン・フェスティバルでも招かれて歌った(こちらもCDに収録)。



これがいまから11年前の2011年のサイトウ・キネン・フェスティバル松本での「青ひげ公の城」のときのカーテンコールである。


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自分が撮影した写真です。彼女がエレーナ・ツィトコーワです。小澤さんはこのときは、癌療養で欠場で代わりに、ピエール・ヴァレー氏が代役を務めたのでした。


まさか、11年ぶりに東京春祭で再会できるとは思いもよりませんでした。嬉しいです。2018年のときは、ペトラ・ラングが演じ、まさに悪の強い個性的なオルトルートを歌い上げ、主役のエルザを完全に食ってしまうほど大活躍でした。


カーテンコールでのブラボーが凄かったのを覚えています。


今回のローエングリンでも、このエレーナ・ツィトコーワが歌うオルトルートに注目である。今回も主役を食うほどの大活躍かもしれません。


ざっと歌手を調べてみるだけでも、こんなに魅力的。本当に本番が楽しみで仕方がない。


いつも疑問に思うのだが、東京春祭の歌手陣の選択は誰がやっているのだろうか。東京春祭実行委員会がやっているのであろうか。出演交渉はそうかもしれないが、歌手として誰を選ぶのかは誰がやっているのか、いつもそこを疑問に思っています。


たとえば今回ならワーグナー歌手ならヤノフスキが専門であるから、ヤノフスキの推薦であるとか・・・。歌手のグレードに応じて、ギャラも高額になってしまうから、安価で高水準の公演を、がモットーの東京春祭にとって、その歌手としての国際的なグレード、出演料、そして実力、この3つをいつもいい塩梅でバランスを取って選ばれているのは本当に感服するのである。


ローエングリンは、約3時間30分の楽劇。ワーグナーのオペラは4時間、5時間なんて当たり前だから、それと比較したらワーグナーにしたら比較的短い部類のオペラだろう。でも本番当日の実演では各幕間ごとに30分は休憩を取るから、休憩だけで1時間半。合計5時間はかかる。夕方5時にスタートして終演が夜の10時。家に着くのが夜中の0時。もうクタクタである。(笑)


ワーグナー公演の場合は、これは毎度のこと、日常茶飯事である。



ローエングリンは、音楽としては全体的にそんなに明るい~暗いの起伏が少なく、非常に明るいテンポのいい小気味いい格好良さがある。誰でも親しみやすい旋律に溢れていて、取っ付きやすいオペラなのではないかと思う。


ワーグナーの作品の中では、ロマンティック・オペラと呼ばれる最後の作品である。


とにかく前奏曲をはじめ、アリアなど聴かせどころがたくさんあるオペラである。第1幕、第3幕の各前奏曲や、「婚礼の合唱」(結婚行進曲)など、独立して演奏される曲も人気の高いものが多い。


そしてワーグナーの作品では、どの作品もそうであるが、このローエングリンも合唱が大活躍する。特にこの作品で自分が大好きなアリアが、第2幕で演奏されるエルザの大聖堂への行列である。


ここは本当に美しい!この箇所になると、もう号泣で涙がドバーとなってしまう。合唱が美しすぎるのだ!本番では東京オペラシンガーズが大活躍するはずだ。東京オペラシンガーズの凄さは、もういままで何度も言及していていまさら説明する必要はないだろう。


このエルザの大聖堂への行列は、フランツ・リストがピアノ用に編曲した事でも有名ですね。


とにかく自分が一番楽しみにしているアリアである。号泣用にハンカチ、鼻水グスグスのためにティッシュを用意することを忘れずに、だ。


第3幕の前奏曲は超カッコいいですね。このオペラで一番カッコいい箇所です。ヤノフスキが振ると、メチャメチャ、テンポが速くて、ものすごいカッコいい感じがする。


この箇所は2018年の時は、なんかモタモタ感があってイマイチだったんだよね~。


結婚行進曲は、結婚式の音楽として、とても有名ですね。とても美しい旋律の曲です。ローエングリンのオペラを知らない人でもこの結婚式にかかるテーマソングは誰でも知っていると思います。でもローエングリンは、主人公のローエングリンとエルザは結局結ばれなくてハッピーエンドではないので、同じ結婚式テーマソングでもメンデルスゾーンのほうの結婚行進曲のほうを使うことが多いですね。


このローエングリンのハイライトとなるのが、ローエングリンが素性を明かす場面、グラール語りである。ここが一番のハイライトで、頭の頂点が突き抜けるような爽快感がある。


物語が一気に頂点に達するところである。


2018年のフォークトのこの部分の語りは本当に凄かった。自分がローエングリンである!と断言したときの、フォークトの啖呵を切ったような力感、迫力のある語りはいまでも忘れられないです。すごい勢いのある吐き捨てるような圧力だった。


今回のローエングリン役のヴォルフシュタイナーがどこまでやってくれるか、である。期待しています。


そしてヤノフスキに期待したいのは、N響を思う存分ドライブして、どんどん率先して鳴らしてほしいことだ。


ワーグナーの音楽の魅力というのは、そのオーケストラの重厚な響きと美しさにあるといっていい。同じ時代に活躍したヴェルディもその晩年においては独自のオーケストレーションを確立したが、ヴェルディのオペラにおいては、なによりも歌の旋律が物語を牽引していく。一方でワーグナーの場合は、オーケストラの和音進行が物語をすすめる上でのエンジンのような役割を果たす。


とにかくワーグナー音楽の場合は、このオーケストラの音をぐいぐい鳴らして、重厚なサウンドを鳴らし切るところがポイントだ。このオーケストラの音のハーモニー、音場という両面において、なんかこううねるような美しさがないとあのワーグナーの妖艶な魅力が発揮できないと思うのだ。


分厚いサウンドが必要なのだ。


2018年のローエングリンのときは、歌手は素晴らしかったけれど、オーケストラの鳴りがイマイチだった。このオーケストラの分厚いサウンド、うねるような美しさ、この鳴りがワーグナー音楽には絶対不可欠なのである。


N響からこの美しさを引き出せるのは、やはりヤノフスキしかいない。



2018年、2019年の落胆がそのことを証明している。


だから、今回そこを期待しているのだ。オーケストラに対する絶対的な推進力だ。楽しみにしている。


でも、生演奏は水もの。感動もあれば、ガッカリもあるということだ。(笑)


覚悟はしておこう。






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