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三舩優子×堀越彰 OBSESSION [クラシック演奏家]

2022/12/25の茂木大輔さんののだめカンタービレ・クリスマスコンサートは、本当に新鮮な出会いと驚きの連続だった。ちょっとショックだったといっていい。のだめコンサートだから、やはりのだめに拘わる選曲だろうから、自分としては馴染み深いもので、ゆったり楽しめるだろうぐらいにしか思っていなかった。


でもいざふたを開けてみたら、のだめとはちょっと離れてしまうけど、茂木さんぜひお勧めということでいろいろ新しい出会いがたくさんあった。


この路線はすごくいいと思います。のだめの選曲も大切ながら、これからもずっと続けていくには、やはり聴衆を飽きさせない新鮮な音楽的出会いがあったほうがいいと思います。


茂木さんのセンスに合うものは、どんどん取り入れていった方がいいと思います。もちろんのだめはのだめとしてやって、のだめとは一線画して、新鮮な曲もどんどん取り入れていく。


去年ののだめクリスマスコンサートは、自分にとってはかなりショックだったです。(笑)茂木さん、勉強されてるな~。若いお宝発掘の未来の音楽家を日頃YouTubeなんかで研究しているんだな、と思いました。そしてこれはいい!と思ったアーティストは、どんどん自分ののだめコンサートに参加させていく。とてもいいと思います。


その中で自分が一番衝撃を受けたのは、三舩優子×堀越彰 OBSESSIONのデュオであった。


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ピアノとドラムスだけのユニット。史上最小にて最大のオーケストラ。


確かにジャズの世界では、ジャズピアノトリオといって、ピアノとベース、ドラムスというトリオのサウンドがある。自分はジャズの中でも女性ボーカルと並んで、このジャズピアノトリオが大好きである。ビルエバンスWaltz For Debbyのように酒場、煙草の煙が漂う、グラスの鳴る音、人の話し声・・・そんなリアルな酒場の暗騒音がある中で鳴るピアノ、ベース、ドラムスのサウンドは最高に格好良い。


でもこのOBSESSIONのサウンドは、さらにベースを抜いて、ピアノとドラムスだけなのである。このユニットでのだめコンサートで最初に聴いたのが、ボロディンのダッタン人の踊りであった。


これは鳥肌が立ちましたよ。

ひさしぶりの感覚。


なんとカッコいいんだろう!!


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ピアノとドラムスでどのように曲を構成・進行していくのか。基本の主旋律はピアノが担当する。ドラムスは要所要所にリズムパートや効果音を盛り込んでいってサウンドを豊かにしていく、という絡み方。


単にピアノ1台だけで、主旋律を描いていくだけならふつうありだと思うが、これに要所要所にドラムスを挟んでいくというのは、かなり音楽としてのスケール感が大きくなるし、ドラマティックになり、音楽としての表現力がすごく豊かになると思う。


そしてちょっとアバンギャルドでカッコいい。かなりカッコいいです。自分の感性のセンスにピッタリ。これはカッコいいなと思いました。


ピアノとドラムスのユニットって誰のアイデアだったのだろうか。クラシックの世界では、ピアノとヴァイオリン、ピアノとヴィオラ、ピアノとフルートという室内楽はごくあたりまえのように存在する。


でもピアノとドラムスという組み合わせはあまりないのではないだろうか。ドラムスが入ると、ちょっとジャズ的なアプローチと思うかもしれないけど、あくまでクラシックの範疇なのである。ピアノとドラムスでクラシックを奏でるのである。こんなサウンド、音楽があるなんて最高にびっくりである。


自分の感性に合うと感じた一番の理由は、空間、隙間に語らせる妙である。ピアノとドラムスだけで音楽を紡いでいく、というのは、ある意味スカスカで、空間、隙間をうまく利用しながら語っていくという音楽進行なのである。


自分はこれが最高にカッコいいと思うのである。


手前みそで、全然ジャンルの違う音楽を取り上げて申し訳ないのだが、ブリティッシュロックの世界でスティング率いるポリスという3人編成のバンドがいた。


自分は最高にファンだったのだが、彼らのなにが格好良かったかというと、ギター、ベース、ドラムスというロックバンドとして考えられる最小の楽器編成で、それでいながら、彼らのサウンドは、空間、隙間をうまく利用するサウンドで非常に立体感、膨らみのあるサウンドで、かなり他のバンドとは毛色が違うユニークなサウンドだったことだ。


それが最高にカッコよかったのである。


みんな、ギター×数本、ベース、ドラムス、ボーカルとなるべく音をたくさん鳴らして音をどんどん重ねようとする。でもそれってまったくの逆効果なんですよね。音を重ねに重ねて厚いサウンドにすればするほど、べったり系というかのっぺりとした平坦なサウンドになってしまうのです。


あまり弾きすぎないこと、音をたくさん鳴らさないこと、音に音を重ねないこと。うまく空間、隙間を利用すること、空間、隙間にものを語らせるようにしたほうが、音楽やサウンドって聴いている側ではすごい膨らむというか、立体的で、ふくよかで、空間感のすぐれた音楽になるのです。


ホール空間にいっぱいに広がる音楽、3次元的に立体的に広がる音楽というのは、あまり楽器の音を重ねないサウンド、空間、隙間をうまく利用する、空間、隙間にうまく語らせる音楽なのです。


自分は、OBSESSIONの音楽、サウンドを聴いたときに、まず思い浮かんだことはロックバンド・ポリスのサウンドの作り方で、まったく同じ理論があてはまるな、と思ったのである。



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ピアノ主旋律で、要所要所にドラムスの効果音、リズムセッション的なサウンドは、ホール空間にふわっと広がっていくような立体感や3次元的な空間感があって、空間、隙間にうまく語らせる妙があって、アバンギャルドでかなりカッコいいのである。


クラシックのオーケストラサウンドとまったく逆のアプローチである。オーケストラは、まさにたくさんの弦楽器、管楽器、打楽器の集合体で音に音を重ねて壮大なスケール感を作り出す手法。OBSESSIONのサウンドは、まったくその真逆を行くやり方。スカスカのサウンドで、ホールいっぱいのスケール感を出す手法なのである。


かなりカッコいいのである。

自分は、ボロディンのダッタン人のあの異国情緒あふれるなんとも切ないメロディを、このユニット、楽器の組み合わせで聴いたときは最高に痺れてしまった。なんと美しんだろう!そしてなんとカッコいいんだろう!


ダッタン人の踊りは、自分の大好きな曲なのだけれど、いつも聴いているのはオーケストラバージョンなんですよね。それをピアノとドラムスだけのユニットで聴くバージョンは最高に美しくてカッコいいと思いました。


”史上最小にて最大のオーケストラ”というのは最高に言い得ているキャッチコピーだと思います。


あと、茂木さんが仰っていたのは、ドラムスはいわゆるジャズ的な即興的な入り方ではなく、どのタイミングでどのような手数が入ってくるかをきちんと計算し尽くされたドラムセッションであること。


これは確かにそうですね。ドラムスというとどうしてもジャズのセッションのような即興的な入り方を想定する人が多いと思いますが、OBSESSIONは非常に計算され尽くした入り方である、ということですね。


いやぁ~最高にいけているカッコいいデュオだと思います。

2017年に結成なんですね。全然まったく知らなかったです。もっと宣伝してください。(笑)少なくともFacebook Pageは作ったほうがいいと思います。


それではメンバーの三舩優子さん、堀越彰さんの紹介をしていきますね。


三舩優子(ピアノ)


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幼少時代をアメリカ・ニューヨークで過ごす。ジェローム・ローエンタール、井口秋子、奥村洋子、安川加寿子に師事。桐朋学園大学在学中、第57回日本音楽コンクール第1位。同大学首席卒業後、文化庁派遣研修員としてジュリアード音楽院に留学、マーティン・キャニンに師事。91年にロス・アンジェルスにおいてアメリカデビューを果たし、LATimesにて絶賛、クラシックラジオ局WQXRにて全米放送、高評を得る。同年フリーナ・アワーバック国際ピアノコンクール、ジュリアードソリストオーディションで優勝。


帰国後は、リサイタルはもとより国内外の主要オーケストラとも共演を重ねる。海外公演も多数。これまでにCDも多くリリース、いずれもレコード藝術特選盤となる。ラジオパーソナリティー、NHK-BS2「週刊ブックレビュー」の司会を各6年間に亘り務めるなど、メディアなど多方面で活躍。マスタークラスやアウトリーチの教育活動にも力を入れる。


古典から現代音楽に至る幅広いレパートリーにも定評があり、華のあるダイナミックな演奏で聴衆を魅了しつづける、日本を代表するピアニストのひとりである。


京都市立芸術大学准教授。

HP:yukomifune.com





堀越 彰(ドラム)


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海老沢一博氏、村上“ポンタ”秀一氏に師事。’90年、「山下洋輔ニュートリオ」でデビュー。国内を始め、ヨーロッパツアー、南米ツアー、ベルギーの野外コンサート、日本全国縦断88ヶ所サバイバルツアー等に参加 。’94年新たに「山下洋輔デュオプラス」として活動を開始し、10年に及びレギュラーユニットとして活動。日舞家の父の影響から、ジャズのみならず邦楽、民俗音楽とのセッションなど、幅広いジャンルにおいて国内外で活動。伊藤多喜雄、チェンミン等とも共演し、イベント構成・演出も手がけ、楽曲提供も行なう。


「The WILL」「東方異聞」「SOLO-ist 」などを主催した後、’12年尺八奏者小濱明人と「LOTUS POSITION」結成。’15年、山下洋輔も加わり、国際交流基金主催でチェコ・スロヴァキア四都市ツアーを成功させ、アルバム「LOTUS POSITION with山下洋輔」リリース。 デヴィッド・ルヴォー演出舞台「ETERNAL CHIKAMATSU」「黒蜥蜴」「道」に音楽メンバーとして連続参加。


シルク・ド・ソレイユで活躍したパフォーマー、フィリップ・エマールらと組む「INSTINCT」でも活動。都内に2カ所のドラムスクールのほか、日本工学院でもクラスをもつ。 


Canopusエンドーサー。

HP: akirahorikoshi.com



三舩優子さんは自分はよく存じ上げているピアニストでした。ミューザ川崎のホール設計をなされた建築家の小林洋子さんの自由が丘の建築事務所で小林さん主宰のサロンコンサートで川本嘉子×三舩優子のデュオでのヴィオラ・リサイタルの実演に接したことがあります。ブラームスの室内楽でした。あの東京・春・音楽祭でのブラームス室内楽の走りとなったコンサートだったと思います。もう何年前でしょうか。たぶん2013年か、2014年だったと思います。


三舩さんは全然変わってませんね。あれから10年も経っているのに、容姿、スタイルまったく変わらずお美しくて素晴らしいです。先日の小山実稚恵さんのときもそう思いましたが、やはり演奏家の方の日頃のプロとしての容姿スタイルの維持の努力は素晴らしいと思います。



堀越彰さんは、茂木さんの息子さんがおもちゃのドラム・セットを買ったときに、そのセッティングや叩き初めで茂木さん宅を訪れた間柄だそうです。茂木さんとの親交も深いジャズの山下洋輔さんのトリオでも活躍なされたベテランのドラマーですね。やっぱり男としてビジュアルがハンサムでカッコいいです。


OBSESSIONは、美男、美女のデュオなんです。


こののだめクリスマス・コンサートで自分は大ショックを受けて、さっそく家に帰ったら、ストリーミングで確認してみました。OBSESSIONとしては2枚のアルバムを出しているようです。



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『OBSESSION』三舩優子(ピアノ)、堀越 彰(ドラム)




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『OBSESSION II』三舩優子(ピアノ)、堀越 彰(ドラム)





いまSpotifyでヘビロテで毎日聴いています。(CDでも買いました。いまお取り寄せ中で時間がかかるようです。)のだめコンサートが12/25でしたから、今日まで10日連続して1日中OBSESSION聴いているのです。まっご存じ自分の性格ですから、嵌りだすともう徹底的に聴き込まないと気が済まない性格ですので、当然の結果です。


やはりピアノとドラムスというシンプルなサウンドが、非常にBGMとしては最高なんですね。ヘビーじゃなくて、ちょっと室内楽的でリラックスできるというか。。。


やっぱりボロディンのダッタン人の踊りが一番最高にいいです。美しいし心揺さぶられます。この曲は自分は大好きなので。でもいまダッタン人の踊りという曲名じゃないんですね。いまの時代での新しい曲名(”ボロヴェッツ人の踊り”)を聞きましたが、なんかまったくダメですね。(笑)心に全然響いてこないです。改名にはなんか理由があるのでしょうか。


ボロディンのダッタン人の踊り、3つのジムノペティ、ラプソディ・イン・ブルー、ラフマニノフの前奏曲”鐘”からパガニーニ・ラプソディの第18変奏、シベリウス フィンランディア、そしてバッハのカンタータ、コラール主よ、人の望みの喜びよ。。。


決してマニアックな選曲というアプローチではなく、若いクラシックファンにも受け入れやすい名曲ぞろいで素晴らしいと思います。


とくにラフマニノフの前奏曲”鐘”からパガニーニ・ラプソディの第18変奏の流れが感動しました。パガニーニ・ラプソディの第18変奏は誰しもが愛する甘美でせつないメロディ。でもこの第18変奏がより引き立つのは、その前の厳しい冬を思い起こすような第17変奏があるからなんですよね。だから第18変奏が、春の訪れのように際立つ。


その第17変奏の代替えとして、同じラフマニノフの有名な鐘を持ってくるのがさすがなのです。鐘~第18変奏もこれまたよく合うというか絶妙なつなぎ方なんですね。驚きました。自分の好きなところです。(すみません、いま聴いたら第17変奏入ってますね。。笑笑)


ピアノとドラムという異色のデュオ。

でもいざ聴いてみると、その予想だにしないカッコいいサウンドに驚くと思います。

ぜひ聴いてみてください。









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