DX時代のコンサートホール:電子チケット(e-ticket) [コンサートホール&オペラハウス]
DX時代のコンサートホールを語るうえで、システムアーキテクチャ、信号処理という重い部分は前回でひととおり終了である。今回からは比較的身近で親しみやすいテーマ、でもとても大事なことについて考えていきたいと思っている。
クラシックに限らず、コンサート全般に言えることだが、チケットはとても重要な役割でかならず必要になるアイテムである。
いままでは紙のチケット。もう長年の歴史がある。いまのクラシック業界も、ぴあやイープラスでも紙チケットでの販売が絶対的である。なにを隠そう自分も紙チケット派である。やっぱり安心するし、信頼度がある。紙チケットの入手方法は、郵送かコンビニ発券である。ぴあの場合はCloakという間にクッションが入りますね。
このチケットの部分を電子チケットにできないか、というお話である。
電子チケットは、欧州、ヨーロッパのほうでは数年前からかなりの頻度で進んでいる。欧州では電子チケットのことを、e-ticketと呼びますね。
自分が盛んにヨーロッパに海外音楽鑑賞旅行に毎年出かけていた頃、そのコンサートのチケットは大切な重要な公演、争奪戦が考えられるような失敗が許されないような公演のチケットについては、旅行会社にお任せしていた。でもそれ以外の軽いウエートの公演は、自分で海外のサイト(オーケストラのサイトであったり、ホールのサイトであったり。)で自分で取ることも多かった。
旅行会社にとってもらう大事な公演のチケットは、紙チケットである。
そして自分がとる公演のチケットは、e-ticketが多かったように思う。
というのは、海外のサイトは、チケット購入サイトにおいては、チケットを郵送するか、e-ticketにするかの選択ボタンがあるのだ。これは十中八九そうである。
紙チケットを選ぶと決済後、郵送で送られてくることになるが、郵送だと、海外、欧州からの郵送だから時間もかかるし、郵便事故がすごく怖い。だから自分は自分でチケットを取るときは、まず郵送は選ばなかった。かならずe-ticketにしていた。e-ticketにすると、買ったと同時にチケットが手元に持てるからである。
e-tikcetにすると、どんな感じに進んでいくかというと、そのe-ticketの送り先をスマホにするかPCにするかの選択を聞いてくるのだ。
スマホを選択すれば、スマホにe-ticketが送られ、ホールのゲートでは、そのスマホの管面に提示されているe-ticketのQRコードを見せて、レセプショニスト、女性スタッフはQRコードリーダーを持っていて、それで読み込んでOK、はい、どうぞ、となるわけである。
あるいは、ゲートのところにQRコードリーダーが設置されていて、ゲートを通るときに、スマホe-ticketのQRコードをかざして、OKではい、どうそ、てな感じである。
もしPCを選択すれば、PCにe-ticketが送られ、それをプリントアウトして紙状態のe-ticketとして所有するのである。プリントアウトしたe-ticketには、QRコードがあって、それをQRコードリーダーで読む。あとはスマホのときと同じである。
これは幻となってしまった2020年にアムステルダムで開催される予定であった、マーラーフェスティバル2020のe-ticketである。
e-ticketの転送先としてPCを選択し、送られてきたe-ticketをプリントアウトしたものである。だからe-ticketなんだけど、紙なのである。(笑)右上にQRコードが見えるであろう。レセプショニスト、女性スタッフ、あるいはホールのゲートのところにQRコードリーダーがあって、そこにこのe-ticketのQRコード部分をかざして、はい、OK,どうぞ、となるのである。
このように、e-ticketの利便性は、購入と同時にすぐに自分の手元にチケットを入手することができるという安心感である。
ここで大切なことは、海外、とくに欧州のチケット購入サイトでは、かならず紙チケットにするか、e-ticketにするかの選択肢があるということだ。そしてe-ticketにした場合は、さらにスマホに転送するかPCに転送するかの選択肢がある。
2016年にバイロイト音楽祭に行ったとき、ホールへの入り口のところにいる女性スタッフは、みんなバーコードリーダーを持っていた。
バイロイト音楽祭のチケットは、紙チケットであるのだが、そのチケットの下端にバーコードが書いてあるのだ。そして入場するときに、そのチケットのバーコードを、女性スタッフが持っているバーコードリーダーでスキャンする。(赤い光でスキャンする。)
そうすると、そのバーコードリーダーには表示画面がついていて、そこにOKかNGかの結果が表示されるようで、はい、OK、どうぞ、という感じなのである。
これは紙チケットであるのだけど、さらにそのチケットが偽造チケットではないか、ちゃんとバイロイト音楽祭の発行したチケットなのかどうか、バイロイト祝祭劇場の座席情報とマッチングするかどうかの確認する機能がそのバーコードリーダーの中に組み込まれていると思われる。
けっして電子チケットじゃないんだけど、そういうセキュリティ機能がついているのである。
さすが難関中の難関のバイロイト音楽祭である。
自分は軽いカルチャーショックを受けたものである。さすがだなぁ・・・てな感じで。
そして日本にもそのようなe-ticket、すなわち電子チケットがお目見えするようになった。
東京交響楽団の電子チケットである。
東響の電子チケットは購入サイトは東響サイトによる電子チケットオンリーの限定利用だったように記憶している。
東響の電子チケットは、スマホ転送型で、ホール側、ホールの女性スタッフ側でバーコードリーダを必要としない認証方式であった。スマホの電子チケットの管面を指で丸くなぞると、OKの表示がされるというものである。
もしそれが偽造の電子チケットであるならば、そのような行為をしてもOKの表示が出ないので、ちゃんと認証方式として成立している。ある意味、ホール側、女性スタッフ側にバーコードリーダーというツールを必要としないコストダウンな電子チケットであった。
その電子チケットが本物かどうか、ホールの座席情報と合致するかどうかの正確な照合としては、やはりバーコードリーダーをホール側、女性スタッフ側が持っているスタイルのほうが、セキュリティ面的にも精緻な保証付きという感じはする。
ここまでは自分の体験談であるが、その後電子チケット(e-ticket)のクラシック業界への浸透はなかなか素晴らしいものがある。
それが電子チケットteketである。
自分は利用したことはまだないですが、これは凄いです。驚きました。
単にチケットがe-ticketである、というばかりではない。コンサートを開催する、イベント管理などコンサート主催者側の立場で必要な機能を全部盛り込んだようなアプリで、アーティスト1人でコンサートをやりたい、と思ってもそのまま開催できてしまう、それだけトータルソリューションなアプリなのである。
イベント・顧客管理
電子チケットの販売・管理
チケット販売数・売上管理
QRコードによる入場管理
入場数のリアルタイム確認
チケット販売履歴のダウンロード
●イベント作成に関するサポート
イベント集客に強い魅力的なイベントページ
安心で使いやすい、電子チケット
リアルイベント・ライブ配信のチケットを並行販売
座席指定、ライブ配信の不正視聴防止などの要望にも対応
マーケティング
チケット購入者へメール送信
公式HPやSNSとの連携
メール・SNS等のシェア促進
EC連携(BASE連携することで商品連携可能)
応援コメントやギフト(投げ銭)の収集
アンケート
・・・ここまで網羅した完璧なビジネスパッケージソリューションとしてのツールと言っていいと自分は思います。
チケット購入者側だけでなく、イベント主催者側の利便性も考えており、ある意味電子チケットビジネスの理想形に近いような感覚をもつ。
電子チケットteketは、大手プロモーターによる大規模なコンサート運営はもちろんのこと、もっと小規模な運営母体、たとえばアーティスト本人でも簡単にコンサート運営ができる、というところがメリット。そして電子チケットのみでの販売を前提としていて、顧客管理、マーケティング解析など、チケット購入者が全員電子チケットを購入するという前提で、こんなメリットがたくさん生まれるというコンセプトである。
この電子チケットのみで成り立つ世界、というところがミソのように思う。
自分はこれは素晴らしいな、と感心しました。
素晴らしいアプリケーションだと称賛の声をかけてあげたいです。
ちなみに、ホールへの入場は、チケット購入者側は、スマホのQRコードを係員に見せて、係員のほうも同様のスマホを持っていて、そのスマホで、そのQRコードを読み込んで、正しいチケットかどうかを判断するという仕組みである。
スマホであれば、いわゆるパソコンと同じですから照合機能としては十分すぎるくらいですね。係員側のスマホには、その照合専用のアプリがインストールされているのでしょうね。
こういう現状の状況も踏まえ、紙チケット中心の大手チケット業者としてこのように進むといいなーというようなアイデアを考えてみる。いきなり全部、電子チケットteketのようには難しいと思う。
●大手プロモーターによるコンサート運営の場合は、チケット販売はやはり紙チケットと電子チケットの併用で段階的に進めていくのが無難である。(チケット購入者は、クラシックの場合、実際高齢者がかなり多い。)
●大手プロモーターによるコンサート運営の場合は、イベント作成などからの全部電子化というよりは、まずはチケット購入のフェーズだけでの電子化を考え、いきなりではなく、徐々にすべての電子化を進める段階的なステップアップのほうが望ましい。
●チケット販売の選択制:紙チケット(郵送・コンビニ発券)、電子チケット(PC印刷型・スマホ型)。海外(特にヨーロッパ)のチケット販売ページは、もう完全にこの4択ができるようになっている。
東響のように、現在は楽団が電子チケットの販売権を持っているような感じだが、やはり将来的には、電子チケットシステムの規格が標準化されて、ぴあやイープラスなどのチケット販売業者が電子チケットを売るような仕組みにしてほしい。
いわゆる海外のチケット販売システムのようなユーザによる選択制にする。そうすれば紙のチケットもなくならないし、すべてのチケット販売の選択肢が残る。
選択制:紙チケット(郵送・コンビニ発券)、電子チケット(PC印刷型・スマホ型)
ぴあやイープラスなどのチケット販売ページには、この4種類の購買方法が選択できるようにしてほしい。
いきなりすべてオール電子チケットというソリューションではなくて、このようにいまのビジネスに溶け込みやすいすんなり移行しやすい方向から入っていくべきである。
紙のチケットはなくさないでほしいです。たとえば、スイスロマンドのチケットホルダー素敵です。こんな文化もあるとやはりホッとします。また、やっぱり紙チケットのほうが安心するファンも多い。(高齢ファンも含め)
チケット販売サイトは、この従来の販路だけではなく、これからの時代いろいろな可能性がある。
今後、DX時代の有効なコンサート宣伝・広告ちらしと思われるWebページ。あるいは、従来の紙でのフライヤーや広告ちらしにも、QRコードが貼ってあって、それをスマホのリーダーで読み込むと、そのチケット販売サイトに飛べるようにするのも有効と思われる。
電子チケットに付帯情報を設けるURLリンク、QRコードをつけて、
・そのプログラムに書かれているその日に演奏する曲のストリーミングURL。コンサートに行くまでの間のその曲の予習ができる。どのオーケストラやソリストの演奏曲を選ぶかは、その日の公演のアーティストの判断に任せる。~自分の曲が録音されている場合は、自分の曲。あるいはお勧めの曲とか。自分がこれを聴いてほしい、好きなアーティストとか。
・あるいは公演前のフライヤーやホールに貼るポスターに記載されているQRコードにも同様の情報が入っていて欲しい。~そのプログラムに書かれているその日に演奏する曲のストリーミングURL。コンサートに行くまでの間のその曲の予習ができる。
電子チケットの利用方法としては、以下のような付加的なサービスも付属しているとビジネスの拡販になっていいと思う。アンケートなどは紙である必要はまったくなく電子データで十分。電子データであるほうがアンケート結果も集計、解析しやすいしメリットは大きいと思う。、
・電子アンケート(チケット購入者の分析~マーケティング解析に活用する。)
・投げ銭ができるようにする。(イベント中はもちろんイベント終了後も)=アーティスト側の臨時収入。
・終演後のコメントを投稿できるようにする。(アーティストにとってとても大事な情報、演奏のファンの受け取り方を把握できる。)
・アーティストのCDや関連グッズのEC販売とのリンク。その日の演奏曲のCDであるとか、もちろんそれ以外にも。
電子チケットteketはもちろん素晴らしいのですが、いきなり全部なにからなにまでオールインのデジタル化というよりは、大手チケット業者が入ってこれやすいように、チケットの販売のフェーズのみ電子化を取り入れて、しかも紙チケットとの併用で販売。そして電子チケットには、諸々の付加サービスをつけてくれると、いろいろ拡販サービスできていいと思います。現実的だと思います。
まずはぴあやイープラスのチケット販売業者の購入サイトでは、紙チケット(郵送・コンビニ発券)、電子チケット(PC印刷型・スマホ型)の4択にしてほしい。欧州の購入サイトに追いついてほしい。
海外、欧州、ヨーロッパのチケット購入サイトというのは、海外からヨーロッパにやってくるお客さん、外国からの購入者もきちんと考慮しているため、こういうe-ticketの選択肢を設けているんだと思います。日本のチケット購入サイトは、海外からの購入者、外国から公演にやってくるお客さんという発想が前提に全くないですね。だから別に紙チケット(郵送・コンビニ発券)だけでいいんだと思います。外国の人から言わせれば、コンビニ発券とか言われてもそりゃ無理だろ!という感じなのでは。(笑)
日本のチケット購入サイトもインターナショナルになる必要があると思います。
もちろんコンサートホールの購入サイトやアーティストHPの購入サイトでも同様です。
2023-01-25 15:16
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