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PENTATONEの新譜:アラベラさんのバッハ・コンチェルト [ディスク・レビュー]

あぁぁ~どうしよう~~ってな感じです。

アラベラさんの新譜にはぶったまげたっス。(笑)


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ちょっとほかのフォトも見てみますね。


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・・・(^^;;


女性アーティストは、あるときを境にガラチェンしたくなるときがあるんですよね。いつまでもお嬢様イメージではいけないという。。。


女性アーティストの場合、若いときは美人でどこかカッコよく尖った感じで売っていき、いわゆる勢いのようなものがありますね。でも経年ととともに、年輪を重ねていき色褪せない美しさというか、人間味溢れる優しさ、落ち着いた美しさが滲め出る路線に変更していきます。こういうイメチェン路線がスタンダード路線だと思います。


自分は若いときの勢いのあるときもいいと思いますが、やはりどうしても自分の年代に合った女性がいいと思ってしまいます。精神的に落ち着くというか、目線が同じ高さであることの安堵感というか。。


アラベラさんはもう中堅に差し掛かったキャリアを積んできているベテラン。SACD/CDもOLFEO時代から現在のPENTATONEに至るまで膨大なアルバム数を出してきた。コンチェルト、ソナタなどのソロなどレパートリーも、もうほとんど弾いていない曲はないのではないかと思うくらい広い。


アルバムをリリースするたびにフォト・デザイナー、スタイリスト、カメラマンと相談しながら、つぎにリリースするSACD/CDのカバーデザイン、ライナーノーツに収めるフォトショットをどうするか、アラベラさんとともに相談しながら決めていくに違いない。


清楚なお嬢様イメージはもう十分やってきた。おそらくおよそこの10年間。そして次、ということになったときに、またいままでのイメージの延長線上だと、やはり戦略的に停滞感、マンネリ感がでてきてダメという判断で、一気にイメチェンしようということなのだと思う。


長いヴァイオリン奏者としての人生の中で、ひとつのターニングポイントだと考えたのだろう。プロデュース的には極めて正しい、と思う。至極真っ当な考え方である。 


自分がいままで慣れ親しんできたアラベラさんのイメージはこうである。


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・・・だとしたらだ。


このように路線変更するとなると、なんかこの路線でいいの?これからこれでやっていくの?という感じです。(笑)自分は、やはりお嬢様イメージのときがいいです。いつまでもそうあってほしかったです~。(笑)


ファン心理というのはそういうものです。



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でも反面、ジャケット写真はすごいカッコいい。

これはかなりイケてます。かなりカッコいいと思う。初めて見たとき、うわっアラベラさん、ついにやってしまいましたか、でも最高じゃないですか! こういう切れる感じ、切れるセンスがすごくいい。


今ではすっかり、いままでリリースしてきたアルバムのどれよりもフォトジニックなのではないか、と思っている。



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バッハ:ヴァイオリン協奏曲集、ペルト:フラトレス、鏡の中の鏡 

アラベラ・美歩・シュタインバッハー、クリストフ・コンツ、

シュトゥットガルト室内管弦楽団




アラベラさんは、過去の膨大なアルバム数、ライブ数で、かなりレパートリーが広くてメジャーどころはほとんど網羅しているのではないか、と思っているのだが、バッハのコンチェルトとは驚いた。まだ未収録だったんですね。


SNSの投稿などでライブでは、よくバッハをやっているのを知っていたので、まだ録音していなかったとは思っていなかった。日本ではバッハはまず記憶にないです。日本のプロモーターさんはメンデルスゾーンが好きですね。(笑)集客戦略、お客さんの満足度から一番のキラーコンテンツなのでしょう。もちろん素晴らしい曲です。


ライナーノーツの中でアラベラさんは、4歳のときにバッハのヴァイオリン協奏曲(Minor)第2番の第2楽章を聴いて以来虜になったという。バッハの音楽の美しさと深さに圧倒され、導かれるようにヴァイオリニストになったという。これまで自身の最重要レパートリーとして頻繁に取り上げてきたバッハの協奏曲、ついに録音を実現したのだ。



1. ペルト:フラトレス~ヴァイオリン、弦楽オーケストラと打楽器のための

2. J.S.バッハ:ヴァイオリン協奏曲第2番ホ長調 BWV.1042

3. J.S.バッハ:ヴァイオリン協奏曲第1番イ短調 BWV.1041

4. J.S.バッハ:2つのヴァイオリンのための協奏曲ニ短調 BWV.1043

5. ペルト:鏡の中の鏡


アラベラ・美歩・シュタインバッハー(ヴァイオリン/グァルネリ・デル・ジェス、1744年製作)

クリストフ・コンツ(ヴァイオリン:4)

ピーター・フォン・ヴァインハルト(ピアノ:5)

シュトゥットガルト室内管弦楽団(1-4)

ラヴァー・スコウ・ラーセン(コンサートマスター:1-4)



今回のアルバムはシュトゥットガルト室内管弦楽団をバックにJ.S.バッハのヴァイオリン協奏曲とペルトの2作というプログラムである。



バッハは30代のころ、ケーテンの宮廷学長を務めていた。教会や宗教に関係する立場ではなく、そのため器楽曲も多く書かれた。その時期は「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ」などが特に有名である。


バッハ、生涯においてヴァイオリン協奏曲を3曲残している。ヴァイオリン協奏曲第1番と第2番、そして2つのヴァイオリンのための協奏曲である。


ヴァイオリン協奏曲もケーテン宮廷楽長時代の1717~1720年ごろに作曲された。いずれも有名なヴァイオリン協奏曲である。アマチュアに人気がある。第1番はMajor調で書かれ、第2番はMinor調で書かれている。そのような関係から第1番は明るく晴れやかな曲であるのに対し、第2番はやはりどこかマイナー調の哀愁を浴びた調べとなっている。


世間的には1番が圧倒的に知名度があると思う。



また「2つのヴァイオリンのための協奏曲」は非常に人気があり、スズキメソード教本にも掲載されているため、ヴァイオリンの発表会などで良く演奏される。またヴァイオリン協奏曲第1番もスズキメソード教本に掲載されている。


「2つのヴァイオリンのための協奏曲」は愛称ドッペルコンチェルトといわれる。ドッペルというのはドイツ語で「2」という意味で、2つのヴァイオリンの掛け合いから、こういう親しみを持った呼び方をされている。


そのとにかく冒頭の親しみやすい旋律に、誰もが聴いたことのある曲だと思う。バッハのヴァイオリンの曲といえばこの曲というくらい圧倒的知名度だ。


自分はバッハのドッペルコンチェルトといえば、思い出すのが、この曲のオーボエ独奏版である。いまから10年くらい前、オーケストラの首席オーボエ奏者が、自分のソロを出すのがひとつの主流のような流れがあった。普段は自分のオーケストラの首席を務めながら、かたやソロを出すことで、より一層スター性が磨き上がるという戦略である。


オーケストラの首席だけでなく、ソリストのオーボエ奏者はこぞって自分のオーボエソロ作品集を出したものだった。オーケストラの曲はもちろん室内楽、ヴァイオリン、ピアノどのような曲でもオーボエ1本で編曲して、オーボエで演奏してしまうのだ。


これがめちゃめちゃ格好良かった。親しみやすい名曲をオーボエ1本で奏でるのって本当に素敵なのですよ。自分は名だたるオーボエ奏者のソロ作品を夢中になって集めていた時期があった。いまでも自分の宝物である。


常日頃、木管楽器というのはオケの顔、というか華というか、そんな華やかなイメージを受けるのである。

要所要所で、その嫋やかな音色がスパイスのように、オケのような大編成の音を引き締めているように思えるのである。


また映像素材などの演奏風景でカメラワークでフルートやオーボエ奏者などをショットで抜くシーンを観るとすごくイケているし、カッコいいと思ってしまう。


オーボエ奏者は憧れたなぁ・・・。


そんなオーボエ奏者にとって、バッハ、モーツァルトのオーボエ作品集を録音するのは、ひとつの登竜門というか、晴れ舞台、一流の証なのだ、と思う。普段は超一流オケの首席オーボエ奏者という立場で演奏し、その一方でソリストとして、このバッハ、モーツァルトを出すというのはオーボエ奏者として、まさにエリートの道まっしぐらとも言え、オーボエ奏者として選ばれし者だけが得られる特権のような感じがする。


自分にとって、この分野の最初のトリガーであったのは、ベルリンフィルの首席オーボエ奏者であるアルブレヒト・マイヤーのバッハアルバム。


イタリア協奏曲、オルガン・コラール、フルートソナタ、マタイ受難曲、カンタータなどなど。バッハの曲にオーボエの音色というのはホントによく似合う。


その中に、このドッペルコンチェルトもあったのではないかと思う。



バッハのヴァイオリン協奏曲は3つともイタリアのヴィヴァルディらが生み出したソロ・コンチェルトの様式に従って書かれている。全て3楽章構成で、急-緩-急の構成をとっている。ただし、バッハのほうがより複雑で高度な対位法を使っているのが特徴で、和音進行も複雑でバッハ特有のエネルギーのあるドラマティックな曲となっている。


非常に親しみやすい曲で誰もが知っている、そんな名曲だ。


アラベラさんのバッハは、非常に正統派というか折り目正しい優等生的な演奏であった。これはアラベラさんの演奏全般に言えることであるが、自分の容姿・フォトジニック全体のイメージに合うように、演奏も極めて優雅で繊細で正統派である。


ステージ上でのボーイングなどの演奏スタイルも非常に聴衆から観られていることを意識した美しいものである。


演奏・フォーム・ビジュアル、この3点において全体的に美しく統一感を持たせる、ということを意識したヴァイオリニストだと思う。それが彼女の自分を売り込んでアピールしていくための戦略なのだと思う。


ヴァイオリニストの演奏は、本当に十人十色だ。ヴァイオリンの曲って、同じ譜面なのに、もうフレージングやアーキテキュレーションのその解釈の違いでこんなに別物になってしまうのか、と思うほど奏者によって別物の曲になってしまう。


自分はいままでもう数えきれないくらい体験してきた。その結果どのようなことが起こるかというと、このヴァイオリンの曲は、この奏者の演奏のみ受け入れる。絶対受け入れられない奏者の演奏もある、という選り好みが出来てしまうことだ。


フレージングなんぞガンガンに個性を剝き出しにして、かなりクセの強い演奏をする奏者もいる。本当に十人十色の世界なのだ。ヴァイオリンの世界は。


ベートーヴェンのスプリングソナタなんか自分にとって代表例。樫本大進氏のソロ時代のソニー録音が好きで、非常に正統派の演奏でこの曲の自分の基準だった。


そのほか、同曲のいろいろな演奏家の演奏を聴いてみるのだが、たとえばものすごい高名なヴァイオリニストの演奏。名前は控えさせていただくが、あまりにクセの強いフレージング、節回しの強烈な個性剥き出しの演奏に自分は辟易してしまった。自分の感性に合わなかった。


だからヴァイオリンの曲に関しては、演奏家ごとに、ほんとうにいろいろなカラーの出やすい楽器なのだと思う。


そういう点で自分は、アラベラさんの演奏がいいと思うのは、非常に正統派で優等生的な演奏なので、自分の中でスタンダードになりやすい、基準になりやすいというところだと思う。


PENTATONEなので、録音もいいし、新しい録音でクセのない正統派のヴァイオリンの演奏を聴けるという点がアラベラさんの最大の魅力なのである。要は外れがないのである。


もちろん奏者にとって得手不得手というのはどうしてもできてしまう。本人がわかっているかどうか、意識しているかどうか不明だが、聴衆の立場から言わせてもらうと、アラベラさんの最大の得意な分野は、じつは現代音楽だと思っている。現代音楽、21世紀の音楽流派の作曲家を演奏するときのアバンギャルドで野性的で音が化けるというか、すごい音を出す、あの才能はすごいものがあると思う。


古典派、ロマン派などの曲は、非常にクセのないスタンダードな演奏をするので、ある意味想定内というか驚きも少ないのだが、現代音楽を演奏させると、とにかく想定外の驚きがあってかなり野性的な演奏パフォーマンスとサウンドなのである。


本人にこんな才能があるとはな~といつも思っているのである。


バッハのコンチェルトは第1番、第2番とも非常にスタンダードで正統派の演奏であった。ある意味驚きも少ないかもしれないが、自分の基準、教科書になるような永久保存版となりうる、演奏会の前に予習するための教材となるようなそんな模範演奏であった。


ドッペル・コンチェルトの共演はクリストフ・コンツである。


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ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の第2ヴァイオリン首席奏者をつとめる傍ら、ソロ活動も積極的に展開している。コンツはウィーン国立音楽大学でヴァイオリンを学び、2011年にウィーン・フィルに入団しているが、その後、指揮活動も始め、2013年には、ザルツブルク・モーツァルト週間で指揮者としてデビューした。


これまでに、さまざまなオーケストラに客演しており、2022年の5月には、オーケストラ・アンサンブル金沢も指揮しているのだ。また、2019年からは、ドイツ・カンマーアカデミーの首席指揮者を務めている。


ウィーンフィルでヴァイオリン奏者をしながら指揮者活動としても活躍する将来有望な若手音楽家である。


アラベラさんは結婚後、いままで生まれ故郷だったミュンヘンからウィーンに移住しており、そのような環境からクリストフ・コンツと知り合うことも必然だったのでしょうね。


2つのヴァイオリンのための協奏曲、ドッペル・コンチェルトは、独奏ヴァイオリン2人による合奏。対位法を正確に導入した作品で、2つのヴァイオリンと合奏部による「音の織物を編み上げる」ような構成となっている。


2つの独奏ヴァイオリンは、対等に扱われている。


この曲の場合、この2人の独奏ヴァイオリニストをどのように絡めていくか、が難しい問題で、録音の場合、2人のソリストをどのように起用するかが問題となることが多い。指揮者主導でオーケストラのトップ2人を起用することも多いが、高名なソリスト2人を起用した場合、様々な要因からバランスが悪くなることが多く、1人のソリストにその親族あるいは弟子筋を起用する場合が多いらしい。ハイフェッツが初めて多重録音を使った際は大変な反響があった。その後はクレーメルなども使っている。


アラベラさんとコンツのコンビネーションは、申し分なくこの曲にそのような難しさがあることなど微塵も感じさせない完成度だったように思う。2人の絶妙なかけあいは見事であった。この曲に華を添えたことは間違いない。


またスズキメソードなどで演奏機会も多く、短調作品でバッハの厳格な形式を感じさせるような雰囲気があることがよく伺える作品である。とにかく誰もが聴いたことのある親しみやすい素晴らしい曲である。



本アルバムで、3曲のバッハのヴァイオリン協奏曲を挟むように差し込んである曲が、アルヴォ・ペルトの曲。


冒頭に「フラトレス」を、最後に「鏡の中の鏡」を、まるでプロローグとエピローグのように据えており、アラベラさんのセンスの高さがうかがえる。


アルヴォ・ペルトはエストニアの作曲家で現在もご存命である。(現在88歳)


ペルトの作品は、一般的に2つの年代に分けられる。初期の作品群は、ショスタコーヴィチやプロコフィエフ、バルトークの影響下にある厳格な新古典主義の様式から、後期にはアルノルト・シェーンベルクの十二音技法に至るまで。


自分は録音にしろ実演にしろ正直あまり聴いたことがないかもしれない。でもこの影響を受けた作曲家の作風を鑑みるとかなり厳格で前衛的で現代音楽的なスタンスの作曲家のように思う。主要作品を俯瞰してみるのだが、特に交響曲全集というようなシリーズ完遂というタイプではなく、単発での作品が多いようだ。


今回のアルバムで取り入れられたペルトの2作は現代のヴァイオリニストの必須レパートリーといえる作品。


ことに「フラトレス」は頻繁に演奏され、アラベラさんは2021年6月の来日時に島田綾乃(ピアノ)との共演でテレビ収録、NHKの「クラシック倶楽部」で放映されている。


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自分はこれはよく覚えている。この年は読響とメンデルスゾーンをサントリーホールとミューザ川崎でやってくれたんですよね。自分がいままで15年間にわたって愛用してきたストラディバリウスのブース(Booth)を日本財団に返却しないといけなくその最後の公演だったのだ。


この来日のときに、演奏会ではないのだけれど、銀座王子ホールでNHKが「クラシック倶楽部」用ということで、収録をしたんですよね。それがアラベラさんと島田綾乃さんのデュオでの収録なのでした。


この収録の模様は放送されるのをすごく心待ちに待っていたのだけれど、なんとその年の8月に脳梗塞を患い2か月間緊急入院。その入院中に放映されたのでした。(笑)あのときの悔しかったことといったら。だから自分にとって幻の収録となってしまったのです。


その収録のときに、このペルトの「フラトレス」は演奏されているのです。


フラトレスは、アルヴォ・ペルトが作曲した室内アンサンブルのための作品である。

後にペルト自身によりいくつかの異なる楽器のために編曲されている。独奏ヴァイオリンと弦楽合奏の版や、ヴァイオリニストのギドン・クレーメルのために編曲されたヴァイオリンとピアノのための版が現在多く演奏されている。


本アルバム収録は、前者の独奏ヴァイオリンと弦楽合奏の版で、島田綾乃さんとのデュオは、ヴァイオリンとピアノのための版だと思います。


なにを隠そう!今回のアルバムでもっとも感銘を受けたのは、この冒頭に配置されたペルトの「フラトレス」なのであった。ペルトの作風からすると後期のような趣で、かなり前衛的で無調、シェーンベルクの十二音技法の世界なのだ。


これはかなり自分にとって衝撃であった。


アラベラさんは、やっぱりこの手のタイプの音楽はめちゃめちゃ強いというか凄すぎる。剃刀のように鋭利でエッジの効いた音、そして胸を搔きむしられるようで、たたみ込むように迫ってくるボーイングの連続技、かなり野性的で本能的で怖い感じ。聴いている側に威圧感を感じさせるというかそういう凄みがある。アラベラさんは、こういう音楽を弾くのがすごい得意というか素晴らしいと思う。


自分は過去の数多の録音や実演の経験で、実感していることである。

それをこの1曲目のフラトレスでやっぱりそうだったんだと再認識。


録音の良さもこのフラトレスでは際立っていたように思う。特にバスドラ、グランカッサのあのドスンという沈み込むような深さには、かなり震えがくるというか、いい録音だな~と思ってしまう。今回はSACDサラウンドではなく、CDステレオ2chなのだが、特に縦軸の振幅が大きく、立体的で深く沈み込むように感じて素晴らしいと思った。


やはり自分にとっていい録音と感じるものさしの基準は、周波数レンジ(Fレンジ)よりもダイナミックレンジ(Dレンジ)のほうに耳が敏感に反応するようである。


そしてなによりも空間が広く感じること。教会での録音なので、その感覚が十分伝わってくるような響き方、空間における音像のマッピングの仕方というか、痺れます。


野性的な演奏だけではなく、オーディオファンの心を掴むようなサウンドという意味から、自分は冒頭のペルトの「フラトレス」を筆頭にあげたい。


録音は、2022年6月21-24日、録音場所はドイツ、ロイトリンゲン・ゲニンゲンの聖ペーター&パウル教会でおこなわれた。


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日本財団から借りていたストラディバリウス「ブース」を返却した後、前回のモーツァルトアルバムのとき、今度はスイスの財団から1716年製のストラディヴァリウス「Ex Benno Walter」を供与いただけることになり、それでモーツァルトのコンチェルトを演奏した。


今回のアルバムでは、ストラディバリウスの1744年製デル・ジェス”Sainton"をスイス財団からの供与で使っているようだ。今回の録音は、BaselのWalterとEdith Fishliによるスポンサーで実現している、とのクレジットがある。


ストラドのデル・ジェスは諏訪内晶子さんもドルフィンから返却のときに新しいパートナーとなったヴァイオリンでしたね。


PENTATONEは、SACD戦略をやめ、主要ビッグアーティストのみSACDで、その他はCDとなってしまった。SACDはコストが高いことと、SACDのカスタマーのマーケットが小さくなってきていることに応じて、PENTATONEはディストリビューターやリテイラーから苦情をもらうことが多くなってきたため、CD戦略にせざるを得ない状況のようだ。


アラベラさんのアルバムも前作のモーツァルト・コンチェルトからCDになってしまった。今回もCDである。


やっぱりもったいないよな~。こんな素晴らしい作品をぜひSACDサラウンドで聴いてみたかった。2chステレオでこれだけ素晴らしい録音に感じるのだから、サラウンドで聴いたなら、もう別世界のすごいサウンドに感じるんだろうな、と思いながら聴いていました。


自分がPENTATONEに乗り込んで、日本マーケット用にSACDサラウンドを発売する戦略、販売ネットワークを交渉してくる。(笑)ディスク大国、CD大国の日本は、やはりSACDサラウンドに熱狂してきた世代の人が多いから需要は大きいような気がする。


録音のテイストは、昔のPENTATONEにあったような温度感のあるサウンド傾向は消え去り、非常に自然なテイストで音像は明晰、音場も広く、解像感も高くいい録音。なによりも自然に聴こえるのがいいです。いい録音だと思います。


ポリヒムニアは、長年のパートナーのエルド・グロートは、録音プロデューサーとして、そして録音エンジニアは、カール・シューバイヤーズ。ポリヒムニアも若手育成に余念がない。


本アルバム、まさに超カッコいいアルバムジャケットに、素晴らしい録音、演奏と申し分ない仕上がりになっております。


アラベラさん、去年は来日公演はお休みでしたが、今年は6月に大阪のシンフォニーホールで大阪フィルとコンサートやるみたいです。東京はまだ未定。あるいはないかも?


ぜひ大阪に行って、久しぶりにシンフォニーホール行きたいけど、時期的と予算的に厳しいかな~~~。


ぜひ東京公演追加してほしいものです。












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