SSブログ

リヒテル イン プラハ チェコ ライブ [ディスク・レビュー]

鉄のカーテンの中の伝説のピアニスト。自分の世代では、とても神格化されたヴィルトーゾ的な存在だったスヴャトスラフ・リヒテル。


richter.jpg


自分は晩年にはその存在を、あの有名なラフマニノフ ピアノ協奏曲第2番の名盤の名手として聴いたことがあり、その名盤でリヒテルのことを認識したのだが、リアルタイム世代というよりは、どちらかというとクラシックを一生懸命勉強している時期に、過去のアーティストとして学び崇拝していく、そういう位置づけのピアニストだったように思う。


自分にとっては、音源、オーディオで聴くピアニストである。

もちろん実演の経験もない。


謎が多くて、神秘的なピアニストだった。


長らくソ連で活動していたため、情報遮断で謎が多く、その実像がよく知られていなかったピアニストだった。まさにピアニストとしての晩年、ようやく西洋諸国でも活動できるようになり、その実像が知れ渡ってくると、いわゆる20世紀を代表するヴィルトゥオーゾ的な扱い、評判を受け、まさにピアノ界の巨人で、ウラディミール・ホロヴィッツと並び称されることも多かった。


まさに玄人筋のピアニストであった。


自分のイメージの中にあるリヒテルというのは、まさにそんなイメージであった。ピアニストとしてヴィルトゥオーゾで、圧倒的な存在感があり、そしてややミステリアスで、その実像がわかりにくいピアニスト。


ずっ~と、そんなイメージを持ち続けたピアニストだったように思う。


e06323e3438fa7a6287bd440adaeba05.jpg


スヴャトスラフ・リヒテル(1915年3月20日 - 1997年8月1日)は、ソビエト連邦のピアニスト。ドイツ人を父にウクライナで生まれ、主にロシアで活躍した(ただし在留ドイツ人として扱われた)。その卓越した演奏技術から20世紀最高のピアニストの一人と称されている。


幼少時代はスターリン時代のソ連で過ごし、父親はスターリンの粛清により逮捕され、そして処刑されている。リヒテルは、ラフマニノフのように、そのようなソ連、ロシアの政権下での芸術家としての活動に危機を感じて、他国に亡命する、という選択肢をとらなかった。


一生涯ソ連でその演奏活動を全うした人なのである。だからこそ、その情報遮断の中、神秘的で謎も多く、”鉄のカーテンの中の伝説のピアニスト”などと呼ばれていた。


母親はその後、作曲家のセルゲイ・コンドラチエフと再婚し、スターリンによる迫害を逃れドイツへの亡命を果たした。


リヒテルは独学でピアノを始め、1931年に15歳にしてオデッサ歌劇場のコレペティートルに採用され、多くのオペラ曲の初見を経験した。1934年、19歳の時にショパンのみのプログラムによる小規模な初リサイタルを開き、成功を収めた。


1937年、22歳でモスクワ音楽院に入学。ウクライナ生まれのドイツ系ピアノ教師ゲンリフ・ネイガウスらに師事。このモスクワへの移住が、ドイツ系ルター派教会の信徒であったという、共産党独裁体制下のソ連における危険な立場からリヒテルを救うこととなる。


リヒテルはモスクワ音楽院に入学した時点ですでに完成されたピアニストだったといわれ、ネイガウスからはリヒテルを天才であるといい、時に荒削りの演奏をあえて直そうとはしなかった。同門のエミール・ギレリスは1歳年下だが、モスクワ音楽院では2年先輩にあたる。


リヒテルはネイガウスの紹介によりセルゲイ・プロコフィエフと親交を持つようになり、1943年1月18日にはモスクワでプロコフィエフのピアノソナタ第7番を初演し、成功を収めた。翌1944年にはプロコフィエフの3曲の戦争ソナタによるリサイタルを行った。以後、ソ連国内で活発な演奏活動を行うようになり、1945年には30歳で全ソビエト音楽コンクールピアノ部門で第1位を受賞した。プロコフィエフが政府から反革命的と批判されたときも、常にプロコフィエフと活動を行った。



1950年に初めて東欧で公演も行うようになり、一部の録音や評価は西側諸国でも認識されていた。しかし、冷戦で対立していた西側諸国への演奏旅行はなかなか当局から許可が下りなかった。当局としては西側への旅行を認めた場合に彼が亡命することを警戒していたともいわれる。


西側諸国ではその評判が伝わるのみで実像を知ることができず、「幻のピアニスト」とも称されるようになる。ソ連の演奏家としては最も早い時期から国際的に活躍していた一人であるギレリスが、演奏後に最大の賛辞を贈ろうとしたユージン・オーマンディを「リヒテルを聴くまで待ってください」と制したことも、この幻のピアニストへの期待をかき立てた、といわれている。



1958年には、同年2月25日にブルガリアのソフィアで行ったリサイタルの録音が西側でもレコードとして発売された。ムソルグスキーの『展覧会の絵』などを含むこの録音は名演奏と称えられ、リヒテルの当代一のピアニストとしての真価を知らしめた。同年に第1回チャイコフスキー国際コンクールが開催され、この大会を制したヴァン・クライバーンが滞在中に聴いたリヒテルの演奏について「生涯で聞いたなかでもっともパワフルな演奏であった」と帰国後に語ったことで、このピアニストの評判はさらに高まることとなった。リヒテルはこの第1回チャイコフスキー国際コンクールで審査員を務め、クライバーンに満点の25点をつけ、他の全てのピアニストに0点をつけたそうだ。(笑)


翌1959年にはドイツ・グラモフォンのスタッフがワルシャワに乗り込んで録音が行われ、数枚のレコードが発売された。その中でも特にスタニスワフ・ヴィスウォツキ指揮のワルシャワ国立フィルハーモニー管弦楽団と共演したラフマニノフのピアノ協奏曲第2番の録音はこの作品の名演と称えられ、その評価は現在に至るまで揺らいでいない。



RICHTER_Sviatoslav.jpg


1960年5月にようやく西側での演奏を許可され、ヘルシンキでのコンサートに「伴奏者」として派遣された。


ここからようやく西欧諸国におけるリヒテルの活躍が世に知れるようになる。


同年10月から12月にかけてはアメリカ各地でコンサートを行い、センセーショナルな成功を収めた。このアメリカ・ツアーでは10月15日のシカゴ・オーケストラ・ホールにおいてエーリヒ・ラインスドルフ指揮シカゴ交響楽団との共演によるブラームスのピアノ協奏曲第2番でデビューを果たし、さらに19日にはニューヨークのカーネギー・ホールでソロ・コンサートを行っている。


この時に録音されたブラームスのピアノ協奏曲第2番(共演はラインスドルフ指揮、シカゴ交響楽団)やベートーヴェンのピアノソナタ第23番のレコードも評判となり、いよいよ西側でも本格的にその実像を知られるようになった。1962年にはウィーンでヘルベルト・フォン・カラヤンとチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番を録音、諸事情から珍しくウィーン交響楽団が起用されたが、今日に至るまで高い人気を誇るロングセラーとなった。


その後は名実共に20世紀を代表するヴィルトゥオーゾとして、世界を舞台に精力的に活動した。同時代にアメリカを拠点に活動したウラディミール・ホロヴィッツと並び称されることもあった。



日本へは飛行機嫌いのためなかなか訪れることがなかったが、1970年の日本万国博覧会の際に初の訪日が実現した。それ以降はたびたび来日してリサイタルを開き、日本の音楽ファンにもなじみ深い存在となった。


これには行けなかったんだよな~。



リヒテル-1.jpg


リヒテルのレパートリーはバッハから同時代(20世紀)の音楽まで多岐にわたる。特にチャイコフスキーやラフマニノフなどのロシアものや、ベートーヴェン、シューベルト、シューマン、リスト、ショパン、ブラームスなど古典派からロマン派にかけてのピアノ曲がその中核にあると思う。その一方でドビュッシーやシマノフスキ、バルトークなどでも名演を聴かせた。


かなり幅広いレパートリー、芸風だった。



リヒテルのピアノ演奏は、ダイナミックで雄渾な情感と緻密にコントロールされた技巧を両立させた感じ、まさに極致の領域にまで達観していたと自分は思う。後世に残された彼の作品を聴いていくと、これがよくわかる。一聴してダイナミックな豪放な筆致なのだが、同時に情感などのエモーショナルな部分もうまく融合されていて、そして指がとき放つその技巧的なタッチ、豪快と緻密が融合している感じで、じつに驚きでもある。


聴いていると、鉄人といっていいほど、完璧な打鍵なので、強すぎてある意味面白みもない、もうちょっと人間的な側面を見せてくれるようなそんなヒューマンらしさ、人間的な弱さも欲しいな、と思うこともしばしばあった。



それだけ鉄人的で完璧な技巧派、豪放さを兼ね備えて達人、ヴィルトゥオーゾだったように思う。


リヒテルの芸術性が発揮されたのは、技巧的な難曲においてばかりではなかった。ピアニスティックな技巧の効果に乏しく、以前はプロのピアニストが取り上げることの比較的少なかったシューベルトのピアノ作品を、早い時期からレパートリーに採り入れていた。





クラシックファンの在り方は、それこそ十人十色で、人それぞれのクラシック音楽に対するアプローチがあって当然しかるべきだと思う。趣味の世界なのだから、そこを他人に強要される必要はないと思う。


でも、自分の経験から、そしてクラシック音楽を好きになりたいと思うなら、まずクラシック音楽史に渡る名指揮者、名演奏家、そして名演奏、そして名音源、これに興味をもつべき、そして一生懸命勉強するべきだと自分は思う。


懐古主義といってバカにする風潮もあるが、自分は全然合点が行かない。クラシックを勉強していくと、そういう過去の名指揮者、名演奏家、そして歴史に残る名演奏というのに、もう猛然と興味が湧くはずなのである。それらを猛烈に知りたい、という時期がかならず来るのである。クラシックファンにはそういう時期がかならずある。いわゆる修業時代といっていい。かならずそういう時期を経てきていまの自分があるのである。


そういうのにまったく興味がもてない人というのは、やはりある意味、どこか本物のクラシックファンにはなれない、そういう素養がないと言わざるを得ないのではないか。若い年代層の人たちにもあてはまるニューエイジ、新世代のクラシック音楽のあり方を探る必要があるのだろう。


古い時代の伝統に捉われない、まったく無関係の新しい時代のクラシック音楽。


そういうのを突き詰めていくのもひとつのアプローチであろう。


でも自分が意味するところの真のクラシックファンだったら、あるいはそのファンになれる素養のある人ならば、かならず名指揮者、名演奏家、そして過去の名演奏を徹底的に知り尽くしたい、調べ尽くしたい、その名盤の音源、映像素材を徹底して蒐集したい、こういう欲望が湧き出て当たり前だと思うのである。


クラシック音楽というのは、長い年月の間に、そういう過去の偉大な歴史のもとに築かれ、いまの基盤となって出来上がっているものなのである。


クラシックファンならばかならず通る道なのである。


あとは、この思春期ともいえるべきこの時期を乗り越えたら、あとはその人その人の自由である。

自分はやはり昔の指揮者、演奏家、演奏、そして古い音源が好きだと思う人は、その道をそのまま邁進するのもよし。この時期は十分に勉強できた。これらの歴史に尊敬と敬意を表しつつ、新しい時代の指揮者、演奏家、演奏にチャレンジしていく。これもありだろう。自分はどちらかというと後者かな。(予算体力があるなら、前者もやりたいですが。。。)


自分にとって、スヴャトスラフ・リヒテルというピアニストは、もう完全に、自分の修業時代のときに、一生懸命勉強したピアニストなのである。そういう自分のクラシック音楽の修業時代のピアニストなのである。


そしてその修業時代だからこそ、そのアーティストの名盤という名盤はぜんぶ蒐集する。そういう時代が必ずあるものなのだ。


リヒテルは大変音源が多いピアニストで、それこそ録音は無数といっていいほど、膨大な録音量を誇っている。そして多大なレパートリー。まさに鉄人で、自分にとって、どこから手をつけていいか、見当もつかない、そういうピアニストだった。


だから意識、彼に対するイメージをここ!という感じで集中できないピアニストでもあり、なかなかその全貌を理解する、語り尽くすというのが難しいピアニストでもあった。


鉄人で、ヴィルトゥオーゾで、そしてその膨大な残された録音。。ここから自分が自分の想いに基づいてイメージを固定化させることが難しいそういうピアニストであった。


いわゆる百科事典といったらいいだろうか。百科事典はほんとうになんでも載っている。でも百科事典はなんでも載っている、万能であることに意味があって、それ自体に固有の色を持たせるということを目的としていない。そしてなによりも百科事典は味気ない。


自分にとって、リヒテルというピアニストはそんな百科事典的な存在だったような気がする。


リヒテルに、自分が色をつけられる、と思った最初の音源は、やはりこれである。


486.jpg



スタニスワフ・ヴィスウォツキ指揮のワルシャワ国立フィルハーモニー管弦楽団と共演したラフマニノフのピアノ協奏曲第2番。ラフマニノフの出世作、そしてラフマニノフのピアノ協奏曲の中で最高に人気のある第2番。


このリヒテルの演奏が、まさにラフ2の中で名演の中の名演ということで、後世語り継がれている名盤、名音源である。ラフ2を勉強するには、まずこれで勉強してください、というように。。


このラフ2の音源で、自分はリヒテルのイメージ固定化に大きく前進できたことは確かである。


でも、正直言って申し訳ないのだが、自分はラフ2の演奏としては、この名盤の演奏はあまり好きではない。テンポがゆったりすぎて、自分の好みに合わないのである。これがラフ2の名盤か~という感じで、ちょっとがっかりした記憶がある。(この盤が好きな人、ゴメンナサイ。もちろんいい演奏だとは思います。好みの問題です。)


自分はパッパーノ、アンスネス&ベルリンフィルのライブ録音のほうが全然いいと思った。ライブ録音という荒々しさはあるが、テンポが速く疾走感があって、こういうアレンジのほうがラフ2のイメージに合って、いいな~と思ったことがある。


なにせ、リヒテルは自分にとって百科事典的な存在だったので、もうその膨大な録音を片っ端から買え揃えていた時期があった。そしてそれを徹底的に聴き込む。そんな感じである。ある意味、そうしないとなかなかリヒテルという巨大なイメージ像を把握することが難しいピアニストであった。リヒテルを知りたいために、それこそ湯水のようにお金を使いまくり、彼の録音を片っ端から揃えていったのだ。


とくに全集物は重宝した。リヒテルの音源は、企画物としていろいろなコンセプト企画に応じて、全集スタイルで発売されているものが多く、それを片っ端から買い揃えて聴いていた。


その中で、どうしても忘れられないリヒテルの音源がある。

これが今回のこの日記のテーマでもある。


ずいぶん長い前ぶりであった。(笑)

この音源のことを語りたいために、ここまで長い前ぶりをやって来た。


それは


リヒテル イン プラハ チェコ ライブ(15CD)というものである。


917.jpg


リヒテル・プラハライブ.jpg



リヒテルが亡くなったのは1997年8月1日、その年の12月5日に予約が締め切られた限定盤。20世紀最大のピアニストの1人、リヒテルが54年から88年にかけてチェコ放送局に遺したライヴ録音が一挙にCD15枚のボックスである。すぐに廃盤となって”幻のピアニスト”の”幻の録音”となったのである。


リヒテルが亡くなった直後に企画された衝撃的なアルバムで。チェコ放送局が保存していた音源で、リヒテルのライヴ演奏がこれでもかとギッシリつまっている全15枚組。所要時間はトータルで約17時間。鉄のカーテンの向こうの「幻のピアニスト」といわれていた西側デビュー前の50年後半のものから、ピアノ芸術において唯一無二の境地に到達した晩年のまで、巨匠リヒテルの独壇場を時系列で俯瞰することができる。



ロシアが生んだ20世紀最高のピアニストのひとり、スヴャトスラフ・リヒテル[1915-1997]は、1950年から東欧圏にツアーをおこない、徐々にその声望を高めていったのは有名な話。実際、ネーム・ヴァリュー獲得の端緒とされる1960年のアメリカ・デビューよりも前にすでにドイツ・グラモフォンとレコーディングを行っていることからも、東欧楽旅で築いた名声は相当なものだったことが窺える。今回の15枚組のボックス・セットは、1956年から1988年にかけておこなわれたプラハにおけるコンサートをライヴ収録したもので、実演でのリヒテルの凄さがひしひしと伝わってくる名演がズラリと揃っていて壮観。音源はもちろん放送局による正規なもので、クオリティは当時のライヴとしてはかなりのもの。リヒテル・ファンはもちろん、ピアノ音楽がお好きな方にぜひ聴いていただきたいボックス・セットである。


このボックスセットは、売り出してから、すぐに廃盤になってしまったため、その後中古市場では大変なプレミアな商品となって取引をされるようになったのである。


自分はこのボックスセットを、ヤフオクで知った。

当時15万で取引されていたのである!(驚)


CD BOXに15万を費やすか!


そんな感じであるが、当時はイケイケなときである。

何度かスルーして見送ったのであるが、いろいろな出品者から何度も出品される度に、その値段が10万~15万なのである。


自分は不思議でならなかった。このリヒテル イン プラハ チェコ ライブはそんなに凄い演奏なのか、そんなに貴重な音源なのか、めったに入手することのできないレアな音源なのか。


これだけのプレミアがついているということは、やはりマニアの間では、じつに貴重な音源に違いない。


自分は意を決して、このチェコライブを15万で落札したのである。


それ以来、自分のリヒテル・コレクションの中では群を抜いて宝物、貴重品扱いとなった。

入手した時は手が震えた。


実際、演奏を聴いてみたところ、これがじつに素晴らしいライブ演奏で、往年のリヒテルの名演がすべて堪能できる素晴らしいコレクションだと思った。


それから何年経過したであろうか・・・。家の中に増え続けるCDコレクションを整理、処分するために、中古買い取りに出すことにして大半を処分することにした。その中にリヒテルのコレクションも大半が含まれていた。


そしてかなり悩んだのであるが、え~い!とこのリヒテル イン プラハ チェコ ライブも売却してしまったのである。


驚いたのは、その後日のことである。


中古買い取り査定額のお知らせが来る。通常CDの買い取りは、もう二束三文で買い取られてしまうのが通常だ。2500円~3000円のCDもそのレア基準から300円~600円こんなところまで値下げされて、雀の涙程度の収入にしかならない。


と・と・とっ・ところがである。


このリヒテル イン プラハ チェコ ライブは、なんと!買取価格が10万なのである!


10万!!!買取で10万!!


なんということ・・・CD買い取りで10万ということは、ほんとうに貴重なレア商品で滅多に出回らないCD BOXなんだな、ということをそのときに気づいた。でも、もう時すでに遅しである。


自分は、恐れ入った。このリヒテル ボックス、こんなに貴重で威力のあるボックスとは思いもよらず、売りに出してしまった自分の浅はかさを心底後悔した。


それ以来、自分の中には、このリヒテル イン プラハ チェコ ライブの亡霊が目の前を彷徨ったことが何度あったことか。じつに大変なものを手放してしまった・・・そういう後悔で数日間、いや数年間思い悩まされていた。


あれから何年経ったであろうか・・・すっかりそのことも忘れていたのだが、偶然Twitterでリヒテルのことをツィートしている投稿を発見し、急に、このリヒテル イン プラハ チェコ ライブのことを思い出してしまった。


思わずヤフオクで探してみた。


そうしたらあった!!!


3,4000円!


しかも残り5分。


高いけど、買えない値段ではない。あの頃の15万と比較すれば、それは相場が安くなっている。


思わず、自分は落札。


ついに買い戻した!


やっぱり自分のところに戻って来る運命だったんだね。


ひさしぶりのご対面。

もう心臓バクバク、ドキドキである。震えが止まらない。


DSC06023.JPG


ベートーヴェン、ブラームス、ショパン、スクリャービン、リスト、ラヴェル、ハイドン、モーツェルト、ラフマニノフ、ムソグルスキー、ウェーバー、シューベルト、シューマン。


リヒテルが1954年から1988年にかけてチェコ放送局に遺したライヴ録音。


これだけ多様な作曲家が並んでいるにもかかわらず、リヒテルにかかると、まさにベートーヴェンなら音階的な旋律で、ラヴェルなら浮遊的なフランス調で、そしてラフマニノフであればロマンティックに、その作曲家に合わせて自分を自由自在に変容させていける、まさに鉄人的なうまさである。そして1曲、1曲にリヒテルらしい求道的でありながらも、なおかつ遊び心にも溢れているような、そんなパフォーマンスを逐次確認することができた。ほんとうにじつに鉄人的なうまさである。恐れ入りました。


録音もそんなに極端に空間の広い録音ではなくてややオンマイクではあると思うが、ほどよい抜け感と空間感、輪郭、そして当時のライブ録音としては破格のS/N感の良さなど、当時の録音としては、じつにいい録音だなとあらためて思いました。


もう儲けもんのお宝CD BOXである。


もう手放さないぞ!


そう決意しました。(笑)



ストリーミングはアルバムというコンセプトがないので、シングル単位で好きな曲を探していく。当然アーティスト側ではこういう曲をこういう順番で、というアルバムコンセプトを考えるのが常だったが、ストリーミングの時代になるとこれもあまり関係なくなるように思われる。自分の好きな曲、お勧めで似たようなメロディ、リズムなどの音声波形特性を持ったリコメンド類似曲で合体したようなリマークのような感じ。もちろんアルバム単位でもマーキングできるけど、リスナーにとっては、パッケージ時代と違ってアルバム自体を作品として固執する度合いが少なくなるのではないか。


またクラシックの曲は長いので、あまりストリーミングに向いていないと思う。


自分の中では、クラシックはやはりアナログ、CDなどの音源を蒐集する、というコレクター魂を刺激するところに興味があって、モノとしての価値、商品としての存在感、それを伴わないクラシック音源って、ちょっといまの自分には想像できない。


そういうと、リヒテルのこういう廃盤で、コンセプチュアルな全集ものの音源って、今後は存在そのものが危ぶまれるような気がする。パッケージメディアが今後シュリンクしてくとなると、こういう音源って聴けなくなるのではないだろうか。こういう全集ものを全部ネットに音源として移行としてくれるのか?


ストリーミング時代は、クラシックにとって結構解決すべき課題が多い。

現に、自分はストリーミングの使い方は、完全にロック、ポップス、昔の歌謡曲、演歌専門になっている。ストリーミングで長いクラシックを聴こうという気があまり起きない。やっぱりクラシックは物理メディアで、いいシステムで、いい音で聴きたい、という気持ちが前提にある。


そんなストリーミング時代におけるクラシック音楽が直面する課題を浮き彫りにした、そんなことを思い起こさせてくれたリヒテル イン プラハ チェコ ライブでもあった。











nice!(0)  コメント(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。
飯守泰次郎さんDG STAGE+ ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。