美食倶楽部 人形町今半のすき焼き [グルメ]
人形町という町はとても素敵な風情の景観である。江戸時代からの昔風の面影を残しながらも、可愛らしいというか、なんか面白い町である。なんか、きゅっとこう丸い感じでカワイイのである。食べ物屋さんが非常に多くて、食の誘惑がとても多い。なんかかわいいよな~。
自分がいままで歩んできた人生で巡り遭ってきた町とはちょっと違う、いままでに体験したことのないような新鮮な街並みであった。
今度来たときは、休日の昼間にでも街歩きをしたいなーと思った。新しい日記のジャンルに、”街歩き”というコーナーをまた新たに作りましょうか?(笑)
吉田類さんの酒場放浪記や、倉本康子さん等のおんな酒場放浪記でいつも本番の酒場体験の前にその酒場がある街をちょっとふらっと散策するコーナーである。
本当に緩いコーナーでほのぼのとして好きである。新しかったり、カッコいい必要は全くない。ちょっと寂れていて、昭和の昔が垣間見えるようなそんな緩さがいいのだ。
なんといっても街歩きはお金がかかりませんね。出費をしなくてもほのぼのと楽しい。
”街歩き”という日記ジャンルはぜひ今後新設したいと思います。
予約していた時間よりかなり前に到着してしまったので、ちょっとそのあたりをぶらぶらと散策してみた。
人形町。
そんな印象を抱いた。
人形町は自分にとって昔からかなりなじみが深い町で、あの親子丼の元祖「玉ひで」でかなり頻繁に通っていた町である。
でも通っていたというほど偉そうではなく、東京メトロの人形町で下車して、そのまま玉ひでに直行するというだけであるから、人形町に詳しいとはとても言えない。
でも玉ひででもいつも開店前よりずいぶん先に到着するので、その周辺をぶらぶら、そして喫茶店、それも純喫茶といわれるような昭和色全開の喫茶店でよく時間をつぶしていたもんだ。
そのときから人形町は古くて下町風情があっていい町だな~とは思っていた。
よし!決めた。人形町の街歩き日記をぜひやってみよう。
人形町今半は、東京メトロの人形町今半のA2出口からすぐそばにある。
じつにひさしぶり!いったい何年ぶりだ?
かなりご無沙汰しておりました。
この場所は明治~昭和の名席浪曲寄席「喜扇亭」の跡地だそうである。下町風情が残る人形町の街並みの一画に歴史と共に佇んできた。建物に風格がありますね。
人形町今半は、1階は鉄板焼ステーキ、2階はすき焼・しゃぶしゃぶをはじめとした日本料理を提供、というようにフロアによって分担分けしている。
今半さんはけっこう手広く商売をやっていて、単なるすき焼き・しゃぶしゃぶ、鉄板焼きの飲食店だけではないのだ。
よく覗いてみると、どうやらすき焼きやしゃぶしゃぶのお肉を販売している。精肉屋さんとしても商いをなさっているんですね。
どれも高級の黒毛和牛A5ランクの最高級のお肉です。サシがびっしり入っていて、見ているだけでも美味しそう。食べるとなんともいえない甘さなんだろうな・・・。お値段的には、1枚スライスあたり大体1500円から2000円くらいでした。
今半さんは、なんと惣菜屋さんもやっているんですね。本当に手広いです。今半さんは宅配や通信販売もやっています。抜かりはないです。
そしてここが今半の飲食店です。おひさしぶりです。ご無沙汰しておりました。
変わっていない表玄関。
やっぱり仲居さんが素敵です(惚れ惚れ)。日本人女性の和服姿というのはなんと素敵なんでしょう。日本人に生まれてよかったとつくづく思います。
思うのは、代々伝わる老舗中の老舗、名店中の名店。やっぱり接客業のなんたるかをびっしり仕込まれているんだろうなと思います。和服姿の仲居さんは、非常に立居姿、振舞など上品で優しく美しく、受け答えなど超一流だと思いました。
反面、新人として入ったときは、相当厳しく訓練されるんだろうな。名門だからこそ、そういうお店の顔になる役割には、相当厳しく教育、訓練されているんだ、と自分は思いました。笑顔の奥に、厳しい訓練をかいくぐってきた苦労がある。そんな想いがしました。
これは別に今半の仲居さんだけでないです。接客業のなんたるか、一流のお店、そういう職業ほど、その教育が厳しいんだと思います。
人によって向き、不向きって絶対あると思います。人間の種類からすると、自分なんかもっともそういう接客業に向いていない人種なので、とてもじゃないけど自分には無理だな~といつもそのたびに思っています。
そんな厳しい訓練に耐えられないで、いつもへたってしまう人種です。
今半の玄関口は変わっていませんでした。
すき焼きの割り下とか販売もしているようです。
人形町今半は明治28年創業。もう何年になりますかね。軽く127年ではないでしょうか。自分が思うのは、これだけ歴史があると、建物はどんどん老朽化していく一方でメンテナンスとか大変なんだろうな、すごい出費になるんだろうな、と推測します。
ものすごい歴史のある建物ですが、中はもうピッカピッカに掃除で磨き上げられていて、清潔感溢れる和の空間でした。
仲居さんともお話しましたが、自分が昔通っていたときに比べて、ずいぶん客間の様子が変わっています。自分の記憶にあるのは、大広間で畳敷きのところに囲炉裏があって、そこに足を入れて座るスタイルでした。そしてその囲炉裏の上にテーブルがあるのです。
でも畳を全部敷き替えたときに、この囲炉裏スタイルはやめたそうです。囲炉裏ってすごい大変らしいです。仲居さんにとっても。自分はもう歳なので、正座ができないし、座敷に座るより、テーブル、椅子のほうが楽でいいです。
今半は外国人のお客さんも多いので、外人さんにとってもテーブル、椅子のほうが評判いいとか。。。
仲居さんにとっても同じで、囲炉裏スタイルの場合、中腰でサービス提供するのは、本当に腰にきて大変だったようです。
現在の今半は大手術ということで、どの和室も全部、テーブルと椅子というスタイルに様変わりしました。これが自分が通っていたときと今の大きな違いだと思います。
予約をしていったほうがいいと思います。自分も予約をしましたが、大部屋は満員で、個室なら用意できる、とのことで、別途チャージがかかるけど、個室にしました。
竹の間を用意していただきました。今半でこんな素敵な和空間の個室で特別おもてなし待遇なんて、なんて素敵なんでしょう!
ただ、この竹の間、薄い襖を通して隣の部屋とつながっているので、隣の部屋のお客さんの会話が丸聞こえなんですよね。(笑)法務省~とかなんとか、かなり上級国民的な雰囲気ありありの会話で、お~さすが今半、ふだんご利用なさるお客さんのグレードはやはり高いんだな、と感心しました。
マスクはこの中におしまいください。これはいいですね~。優しい心遣いが感じられます。
メニューはもう行く前にWEBで調べていて、なにを頼もうか決めていました。
その前にお飲み物はいかがですか?
下戸なのでお酒はやめたほうがいいと思い、ほんの軽い気持ちでウーロン茶でいいです。ウーロン茶ですと、ここにございます。
なんと!1800円もするウーロン茶である。ウーロン茶に1800円も出すのか、と思ったが、引くに引けず頼むことにしました。
メニューは、自分はコースを頼むことにしました。すき焼き、しゃぶしゃぶのコースには、月、星、宴というコースがあります。それぞれのコースで肉が特上と極上を選べるのです。
自分は豪勢に楽しみたい、でも予算も心配。。ということで、真ん中ら辺のコース星にしました。お肉は120g。1スライス40gを3枚です。せっかく来たのだから3枚では物足らないと思い、追加で特上のお肉を2枚追加オーダーで合計5枚のお肉です。
コースですからメインのすき焼き以外にも、前菜・小吸物・お造り4点盛・焚合などがあります。
まず前菜から。
美しすぎます!
こんなに美しい和料理の前菜を拝見したのは、遠い昔、2018年のときの北鎌倉の幻董庵いらいじゃないでしょうか。右のグラスに入っているのが超高級ウーロン茶です。
台湾のウーロン茶のようです。
青茶=凍頂烏龍茶という現地名です。
Fall In Love Deluxと書いてあります。まさにその通りだと思いました。とても素敵なネーミングです。自分は一口口に含むだけで、もうその芳醇な香りに驚いてしまいました。まるでワインみたいです。もうそのひとくちで恋に落ちてしまいました。
烏龍茶も突き詰めるとここまで達することができるのか!
台湾を代表する青茶(=烏龍茶)。「凍頂茶」。味は緑茶に近いが、水色(すいしょく)は稲穂のように黄金色、独特の爽やかな鼻腔を抜ける清々しい花の香り、濃くのあるまろやかなフルボディーの渋みは懐かしい味わいを誘い、後から心地よい余韻が喉の奥から返ってきます。魚料理と相性が良く、白ワインのように愉しめます。
まさにそのとおりでございます。透きとおった黄金色の見た目が美しく高貴な雰囲気を漂わせています。そしてその芳醇な香りは、もう完全に白ワインの世界で、こんな上品な烏龍茶が世の中にあるのか、と驚きを隠せなかったです。
なんでも商談の場でよく頼まれる飲み物だそうで、商談の場合、ビジネスですから酔ってしまうと困るので、ノンアルコールが望まれるとか。そのときに、このワインのような烏龍茶がよく利用されるのだそうです。
ANAのファーストクラスのドリンクにも採用されたのだそうです。
すき焼きを堪能しに来ましたが、まさに最初のドリンクでこんなノックダウンの衝撃を受けるとはまったくの想定外でした。
いい想い出になりました。
そして前菜やお造りの美しいこと。日本人に生まれてよかったという感じです。綺麗に盛られているのを取り崩して食べるのが、なんかもったいない気がしました。
コースのお料理がでてきたところで、若い仲居さんから交代になりました。いま思い出してみれば、おそらく女将さんだったのではないか、と想像します。
お店のことをいろいろ説明してくださったり、すき焼き、お肉のことについていろいろ詳しく教えてくださったり、いろいろ世間話が弾んでたいそう楽しかったです。
過分なまでにご対応いただき、誠に感謝いたします。
過日そのことに気づき、いま大変恐縮している次第です。
どうもありがとうございました。
これからは本番のすき焼きを焼いていくことになりますから、やはり腕の立つことが必要になりますので、女将さんなら最高でしょう。
今半のすき焼きは、テーブルで食べる訳ですが、すき焼き鍋の位置と食べる人の位置関係はこんな感じです。
食べる人からちょっと距離を置いて離れたところに鍋を置いて、お肉を焼きます。
今半のすき焼き鍋は本当にこぶりというか小さいですね。
そして溶き卵のある皿にお肉や野菜を盛り付けるのも女将さんがやってくれます。そして、はい、どうぞ、召し上がれ、という感じでお皿ごといただけるのです。
お肉や野菜を焼き、煮る、そして溶き卵のお皿に盛り付けるのは女将さんの仕事です。私は、そのお皿を受け取って、ただ食べるだけです。その繰り返しです。
まさに至れり尽くせり。王様になった気分です。
女将さんの溶き卵をお皿の中で溶く作業がすごいプロフェッショナルで驚きました。その手慣れた作業もさることながら、入念に長い時間をかけて丁寧に溶いていきます。あれは素人ではぜったいできない芸当ですね。
さぁ、いよいよメインの今日のお肉です。
黒毛和牛、山形産のA5ランクの特上のお肉、5枚です。
見てください!
アップ!サシ~~~~~。
女将さん仰るには、今半で扱うお肉は、どれも黒毛和牛A5ランクで雌牛(メス)、しかもお産を経験していない牛にこだわっているとのことでした。
お産をしてしまう、子供を産んでしまうと、やはり肉質が固くなったり、味が劣化したりでよくないんだそうです。
女将さんが鍋で今半流のすき焼きの焼き方を見せていただきます。もう目の前で実演してくださるのです。ショータイムという感じです。
すき焼きの焼き方には、関西風と関東風という流儀があります。
関東風というのは、割り下を使うことをいい、いわゆる”煮る”です。関西風というのが、調味料を直接入れていくやり方で、いわゆる”焼く”です。
今半では、薄く割り下を敷いた鍋に具を入れて、「焼くように炊く」。食べ頃を見逃さないよう、訓練を積んだ仲居さんが炊き上げるのです。
今半は関西風と関東風のいいとこどりの独自流なのです。「焼く、炊く、煮る」の真ん中の”炊く”なんですよ、うちは。そう女将さんが仰る。
こんな感じです。
女将さんから写真タイムにどうぞって。(笑)
人形町今半のすき焼き。
いま食します。
・・・・・・・(沈黙)
もう言葉にならないです。とにかく甘いです。そして柔らかい。口の中に入れただけでとろけてしまいそう・・・本当に香ばしい美味しさで、こんなに美味しい牛肉を食べたことはないです。
超一流の牛肉というのは、こんな味がするのか。。まさにそんな感じです。
もう女将さんにむかって、美味しい~美味しい~甘い~柔らかい~を繰り返していました。食べたあと、しばらく放心状態でずっと余韻に浸っている感じです。本当に幸せ~という感じですね。
音楽と食べ物は、人間を幸せにしますね。
もちろんごはんもいっしょにお供します。お味噌汁も備わります。溶き卵にまぶされた極上の牛肉で、ごはんをかっ込むあの悦楽はなにものにも代えられないでしょう。
これが人形町今半のすき焼きか~。ずっと余韻に浸っていました。もうだいぶ前にも経験していましたが、いまこうやって食すると、もう過去の記憶なんてそのまますっかり塗り替えられますね。もう新しく美味しいです。
女将さんから提案がありました。最後は、鍋に残ったお肉、野菜を煮た煮汁とで、その上に卵を溶き、ご飯を雑炊のようにからめていただく。
これを「ふわたまごはん」というらしいです。
もちろんぜひ、と自分。
今日は特別に、お肉を1枚残しておいて、その”お肉入りふわたまごはん”という特別メニューを召し上がってくださいね。お肉を入れるのは内緒ですよ。(笑)いつもはやらないです。
これが”お肉入りふわたまごはん”
上に山椒をまぶすのだが、これが絶品。この山椒のピリリとくるアクセントのある味がもう絶妙にウマい。そして煮汁と溶き卵で雑炊のようにからめたごはん。もうすごいしょっぱい塩分びっちり利いたウマさ。激ウマですね。そのしょっぱさに、あの山椒のピリリがめちゃめちゃ利くのですよ。
これは最高の一品でございました。
最高のシメでしたね。
このふわたまごはん、なにせ、あまりにウマいもんだから、もう自分は一口でペロリ。そのあまりの早食いに女将さん、驚き、爆笑してました。(笑)”早すぎる~~(笑)”って。
ふつうみんなゆっくり味わって食べますよね~。(笑)
自分はペロリとひと口ですから。
女将さん、笑いが止まらず、大笑いしていました。
すみません、育ちが悪く、食べ物は飲み物のような人なので・・・。
怒涛のお肉攻撃にシメのふわたまごはん。
もう食後ず~っと余韻に浸っていました。
最後はデザートです。パパイア。清々しい口直しでございました。
これだけの贅沢をして、3枚の福沢諭吉さんといったところでしょうか。ふだん貧祖な食生活をしている自分にとって、一瞬でなにかも吹っ飛ぶ気分転換になりました。本当に一瞬です。
やはりたまにこういう贅沢をしないと人間ダメですね。
女将さん、また来年年明けたらいらっしゃってください。(笑)
下町風情漂ういなせな人形町に、超一流のすき焼き、人形町今半あり、ですね。
記念すべき、美食倶楽部 第1弾となりました。
美食倶楽部、この企画を今後も継続的に続けていくには、やはりタニマチ、というかスポンサーが必要だな、とも思いました、です。(笑)
人形町今半