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知的財産ライセンス許諾 [ライセンス・知財]

いま我が社はライセンス監査を受けている真っ最中である。自分も毎日大変です。技術の権利を保有している団体、企業のことをライセンサーといいます。ライセンサーからその技術の使用許諾を得て、その代わりにその対価(ロイヤリティ)を払う側をライセンシーといいます。


ライセンス監査というのは、監査期間というのを設けて、その期間の支払い状況をチェックするのです。ちゃんとロイヤリティを払っているかどうかを精査することをいいます。きちんと払っていない場合は、その分の未払金+利息+追徴金を支払わないといけません。


もううちは過去の監査のたびに膨大な金額を払ってきたので(笑)、もう監査がやってくる、となるといつもビビってしまい、大変な一大事なのです。


実際の監査は、ライセンサーがやるのではないのです。監査を専門にやる監査法人という監査のプロがいるのです。ライセンサーはそこに依頼して(費用を払って)、いわゆる監査の代理人としてライセンシーと相対する訳です。



我々が監査で相手にするのはこの監査法人です。通称”監査人”といいます。


監査のプロですから、もう膨大な営業売上データを解析する、膨大な販売モデル名を瞬時に把握する、そういう才能に長けたプロの集団です。


監査人にはいろいろピンキリいるんですね。かなりラフでずぼらな監査人もいれば、かなり性格の悪い、見るところが細かくて、いかに我々からふんだくってやろうか、という意欲満々の監査人から、もうすごいバラエティに富んでます。


我々からいえば、今回あたった監査人の良し悪しによって、その監査が天国で快適か、地獄の相を呈するか分かれるのです。


監査のときは、もう大変です。会社の組織全般総動員で取り組む必要があります。監査人から、これらの提出データを提出してください、という要求があります。もう監査期間中の売上データ、それも単体だけでなく連結も含めて、とか。そのほか膨大な資料を提出します。


監査人って、ほんとうにすごいな、と思うのは、この膨大なデータ資料をぜんぶつぶさに解析するんですね。すごい能力です。


監査は、時間的工数だけでなく、費用的にもいろいろ大変です。いわゆる監査費用です。


どの技術契約もそうですが、監査で何パーセント以上の間違いがあった場合は、監査費用はライセンシーが負担するというような条項が契約書に記載されていることが多いです。


そうなるともう膨大な監査費用を請求されるのです。監査結果による未払金+利息+追徴金のほかに、この監査費用となるともう目も当てられない大変な出費です。


監査費用は、時給、日給になっていて、監査が長引けば長引くほどどんどん費用がかさんでいくのです。


監査結果がけじまって、監査人は監査報告書というのを作成して、ライセンサーに報告します。それでその報告結果に応じて、費用のやりとり、支払い関係をライセンシーと交渉するという感じでしょうか。


もうライセンス管理を仕事をする者にとって監査ほど恐怖なものはないですね。


いま音声圧縮技術AACの権利保有者であるVia Licensingによる監査を受けています。


自分も含めて、オーディオファンはAACをバカにする人多いじゃないですか。そりゃわかりますよ。音声のデータを間引いて圧縮するなんて音が悪くなる。。AACなんて普及レベルのコーデックということでバカにする人が大半だと思います。とくにオーディオ業界に従事している方々には。


でもですよ。いまのAACがいかに世界中で普及して、もうあたりまえの技術として、もうどんな商品にでも使われているかご存じですか?


USBメモリー、PC、デジタル放送の音声、Bluetoothの音声、欧州のデジタルラジオ、iPod/iPadの音声、カー製品などの車載機器・・・もうこれだけでは済まないくらい、もうあらゆるところに使われているのです。


技術を開発する権利側にとって、もっともその技術を活用できるやり方というのが、技術ライセンス許諾というやり方です。技術の使用を許諾する代わりにロイヤリティを払え、というお金儲けのビジネスです。


うちの会社だけで、このAACを使うことで、年間何十億以上払ってますから。そうしたら日本中の企業、世界中の企業でみんなAACを使っているんだから、Via Licensingは年間だけでも、いったいいくらの金を儲けているんだ?と思いますよね。


彼は本当に大金持ちなのです。


やれ、DSDだ、ハイレゾだ、とか高音質を謳っても、根本お金がなくて技術を維持していくのがだんだんジリ貧になっていく。。。そして消滅。


悔しいかな、金が稼げているというのが正義なのかもしれません。


AACなんて、AACなんて問題外、AACは音が悪い、なんて言ってたって、実際問題、世界中でありとあらゆるところで普及して、ライセンス契約でこれだけ膨大な富を得ているんですから、結局最終的な勝者は誰なの?という感じです。


こういうやり方こそが、知的財産の正しい活用なのではないでしょうか?


特許には自社権利の保護、新技術の出願などいろいろやり方がありますが、究極はやっぱりお金を稼げる特許になることが最終目的なのではないでしょうか?


個人レベルの特許でライセンスオファーしても、相手が簡単に応じる訳もなく、実際放置されるのがオチでしょう。(笑)


金を稼げる特許というのは規格必須特許である場合が大半です。


規格必須特許というのは、画像であればMPEGであるとか、音声であればAACであるとか、世界のスタンダード規格として普及している技術の特許です。


これらの特許は世界中の技術メーカーが特許を出していますので、それらの特許を管理する団体がいるのです。それがパテントプールという団体です。


たとえばMPEG画像圧縮にしたって、もう世界中、日本中の最先端の有名企業が特許を出願していますね。パテントプールというのは、その特許群を管理している団体です。


この規格必須特許のライセンス契約、使用許諾契約でロイヤリティを世界中の企業から徴収しているのは、このパテントプールの役割になります。


そして世界中から得たその膨大な収益をどうしているか、というと、そのパテントプールに所属している、つまりその技術の特許を出願しているメーカー達に分配するのです。お金を配るのです。


でも全員に等分で分配する訳ではありません。


出願特許の出願数の多い順に比例配分で分配されるのです。つまり特許出願で、より貢献している企業には、それだけの配分で収益金が分配されるのです。


だからパテントプールに所属している企業は、なるべく出願数を稼ぎたいがために、分割出願をどんどんやるのです。クレーム、請求項をいろいろ違うポイントから解釈して、ひとつの出願をどんどん分割していくのです。だから似たような特許がどんどん増えます。(笑)


これこそが、パテントプールに所属する企業の特許戦略です。分割出願をどんどんして、比例配分を多くする。


自分が知財にいたときはこのような感じだったのですが、いまは違うかもしれませんね。


パテントプールは、画像圧縮のMPEGであればMPEG LA、音声圧縮AACであれば、Via Licensing、日本のデジタル放送であればULDAGE(アルダージ)とかです。DVDのときは、DVD 3C/6C,Philips/Thomson 4C/3Cとかありましたね。


特許は、やはり発明というイメージがすごく大きくて、発明をすることで、特許出願しました、というポイントだけですげーとみんなから思われる。これが世間の特許に対するイメージですよね。


「特許出願する」


このことに最大な敬意を払う。


でも登録査定、特許査定になった特許は維持していくのが大変なのです。特許庁に毎年、年金を払っていかないといけないのです。支払いが滞ると特許査定取り消しになります。登録査定、特許査定の件数を自慢する、このテーマをこれだけ出願している!それで評価する傾向がありますね。


でも裏を返せば、それを今後維持していくのは膨大な金喰い虫である、ということですね。ただ、自社権利の保護だけじゃ無理ですね。死蔵特許ではだめですね。


やはりその特許を活用していかないとダメだと思います。

他社からお金を稼げる特許にならないとダメだと思います。


知的財産権のもっとも効果的な活用法はライセンス許諾契約だと自分は思います。そうなるような特許を出願できるといいと思います。個人レベルの特許ではなかなか難しく、やはり規格必須特許になりますね。こういうことができる特許と言うのは。。。


AACは音が悪いなんて、バカにするけど、これだけ金儲けしているんだから、最終的な勝者はじつは彼らなのではないでしょうか?(笑)


さて、いま自分がとりかかっている、その憎っくき相手、Via Licensingとはどんな団体なのか?ちょっと紹介してみます。



Via Licensing


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知的財産ソリューション企業


2002年の設立以来、Via Licensing はジョイント特許ライセンスソリューションによるイノベーションを可能にするための基準を設定してきました。Via チームは、何十年にもわたるイノベーションの歴史と業界のベストプラクティスを活用して、市場向けの創造的な新しい知的財産ライセンス許諾アプローチを継続的に開発しています。


Via Licensing の柔軟なソリューションは、従来のパテントプールモデルに基づいて構築されており、今日の複雑な IP市場に対応するプライベートな多極 IPライセンス許諾ソリューションを提供します。こうした公平、合理的で、高い透明性のある提供は次のような利点を含みます。


・新しい規格および技術の採用の加速

・グローバル エコシステム全体のコラボレーションの前進

・技術開発企業の継続的な収益化チャンスの育成

・ホールドアップとホールドアウトのリスクの軽減

・地域的 IP ライセンス許諾問題への対応


Via Licensing は、イノベーションおよび技術のライセンス許諾で 50 年を超える経験を持つ Dolby Laboratories, Inc. の独立管理子会社です。


なんと!Dolbyの子会社だったんですね!

自分は2016年にもDolby監査で散々な目に会いましたよ。


Via Licensing監査も今回で2回目。


こいつらには散々な目に会っています。(笑)


この人たちか・・・(^^;;


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経験豊富、高い透明性、信頼できる存在。


Via Licensing の連携ソリューションは、グローバルエコシステムを通して広範な業界の参加を促進します。1,000 を超えるライセンサーとライセンシーが Via Licensing の安定した知的財産ソリューションを頼りにしています。


Via Licensing は、メーカーが今日の製品の構築における基盤技術の実装に必要な知的財産の利用を合理化し、リスクと取引コストを削減できるようにします。また Via は、発明者がイノベーションにおける収益率を最大化し、開発した新しい規格や技術の適用を速めるように貢献します。


Via Licensing では現在、オーディオ、ワイヤレス、および他の産業で、影響力のある幅広い技術を網羅する 10 のライセンス許諾プログラムを提供しています。また当社は、IP リスク管理に関連する特許を取得して集約することにより Via のワイヤレスパテントプールが提供する価値の増大に取り組むパテントバンクを完全所有子会社として管理しています。



1,000を超えるライセンサーとライセンシーが、Via Licensingの知的財産IPを使っている???


我が社だけで年間10億以上としても、10億×1,000=10兆円!!!

なんと彼らは、自分のIPライセンスで、年間10兆円稼いでいるんですよ。


これこそが本当の勝者というものではないでしょうか?(笑)



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Via LicensingのIPライセンスの扱う分野は、


●オーディオ

Advanced Audio Coding (AAC)

MPEG-H 3D Audio

MPEG-4 SLS

MPEG Surround


●WIRELESS

WCDMA


●パテントバンク


●その他

OCAP tru2way

AGORA-C


●LEGACY PROGRAMS

LTE

4G Multi-Generational

DRM (レガシー)



あと何か月かかるだろうか・・・。いまのVia Licensing監査。。

この共同ライセンス許諾のリーダー、恐るべき相手であることがよくわかりました。






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