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東京・春・音楽祭 ニュルンベルクのマイスタージンガー [国内クラシックコンサート・レビュー]

カラヤン、バーンスタイン、そして小澤征爾さんもそうであるが(小澤さんはリアルタイムでしたが。)、みんな自分が生まれたときからスーパースターだった。そういうスターに心を寄せていく、応援していくというのもクラシックのスタンダードなファンの在り方だと思う。またクラシックを勉強していく上では逆にそういうスタイルのほうが入りやすいことも確かであろう。


でも自分にとって、マレク・ヤノフスキという指揮者は、自分と一緒に育ってきた、自分と一緒に成長してきた、自分と一緒に同じ時代を見てきた、そういう同越感があり、それが、よくここまでやってきたなぁ・・・というなんとも言えない気持ちと、他の指揮者とは違う特別な運命の絆のようなものを感じて感慨深いものがある。


もちろん自分は最初から狙っていた訳では全然なく、まったく意識することなく、本当に偶然の偶然もいいところなのであるが、自分のクラシック人生の中で、マレク・ヤノフスキという指揮者と不思議な絆で運命をともにできたことを誇りだとと思っている。自分の人生の誉としたい。音楽の神様の粋なプレゼントだったと思いたい。


ヤノフスキという指揮者はキャリアはかなり長いが、下積みもかなり長く、陽の目を見始めたのが、手兵ベルリン放送響を率いてベルリンフィルハーモニーでワーグナー10大楽劇の演奏会形式コンサートのツイクルスをやったときからだったであろう。このツイクルスをPENTATONEが収録していた。


自分もこれをきっかけにヤノフスキを知り、彼のバイロイト・デビューのときも追いかけた。そこから現在に至る活躍、すっかり大巨匠となっていったのはご承知の通りである。


当時のヤノフスキは、ワーグナー音楽について自前の理論を持っていて、一種独特の雰囲気を醸し出していた。


「ワーグナーの楽劇は、演奏会形式が一番いい。昨今のオペラ形式の過剰な演出は、ワーグナーのもつ素晴らしい音楽性を堪能するには邪魔である。純粋にワーグナー音楽の美しさ、素晴らしさを堪能するのであればコンサート形式が一番いい。」


日本ワーグナー協会の例会でのインタビューでもこのように発言をして、物議を醸したというか、大騒動だったような記憶がある。


自分はなんとも頑固なオヤジ風な印象を抱いたが、実際のベルリンフィルハーモニーでの実演を拝見して、聴けばその実力はわかる、という感じで納得できた。ニュルンベルクのマイスタージンガーとタンホイザーだったが、舞台は本当にシンプル、オーケストラの前に独唱ソリストを立たせて歌わせる。歌手は自分の出番になると舞台袖から静かに登場して、そして歌う。出番が終わるとそのまま舞台袖に下がる。


本当にシンプル。これがヤノフスキ流なのである。現在の東京・春・音楽祭に至るまで、このヤノフスキ流は終始一貫している。


そして驚いたのがその快速テンポである。ヤノフスキのサウンドは、非常に引き締まった筋肉質な音で、とにかくその疾走感に驚く。それは速すぎるだろう?と思うくらいすごい快速で進んでいく。


従来のワーグナー・サウンドといえばじっくり歌わせる、いわばうねり感のようなどっしり座ったような深みで演歌のこぶしではないけど、そういう節回しを丁寧に歌い上げる演奏が多かったと思うが、その伝統の演奏観をいっさい無視するかのようなどんどんすごい速さでサクサク進んでいく快速テンポで、ある意味淡白すぎると揶揄されることも当時は多かったように思う。


でも自分はこの疾走感こそが、なんか新しいワーグナーサウンド像を象徴するような感じがして、すごく新しく、格好良く感じたものだった。そしてなにを隠そう、自分はヤノフスキの演奏が速いという認識が当時の自分にはあまりなかった。(笑)自分には、あくまで普通で、とてもちょうどいいテンポのように思い、周りがみんなヤノフスキは速すぎると言うのを聞いて、あれ?そうなのかな?と思ったことを正直に告白しよう。(笑)



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東京・春・音楽祭2023はニュルンベルクのマイスタージンガー。


自分が初めて生のヤノフスキを観たのが、海外音楽鑑賞旅行と謳って初めてベルリンを旅行した2011年。ベルリンフィルハーモニーで観たときのマイスタージンガーが最初だった。あれから12年経過した今。ふたたびこの楽劇で原点回帰、先祖帰りする。。。そういうことなんだろうな、となんとなく直感的にそう感じた。運命のようなものを感じ感傷めいてしまった。


東京・春・音楽祭もリング指環四部作、そしてローエングリン。途中他の指揮者によるN響ワーグナー演奏も途中で挟んだが、やはりヤノフスキでないとダメだと思った。これは自分だけではなかったようだ。他指揮者ではみんなN響の演奏力にガッカリする声が多く、ヤノフスキを望む声が多かった。ことワーグナーに関しては、指揮者が変わるだけで、こんなに変わるものなのか、というほどN響の演奏もヤノフスキのもとでは本当にすごい鳴りっぷり、演奏パフォーマンスに豹変する。


なんでここまで豹変するのか?

ワーグナーという超長尺の演奏をここまで豹変させる、これがヤノフスキという指揮者の経験値と推進力なのだろう。N響がまったく別のオーケストラと思うくらい豹変する。


今回のマイスタージンガー。最初のあの有名な前奏曲から心を持っていかれる。


この重厚感と切れ味、そしてこの鳴りっぷり、弦の分厚い位相の揃った和声感のあるハーモニー、ワーグナー旋律を歌わせるその雄弁さといい、その大地を這うような、うねるような歌わせ方といい、ほんと聴いていてうっとりしてしまった。すごいな、と思った。


テンポは相変わらず速い。


今回は、バンダも大活躍で、かなり大編成スタイル。舞台いっぱいに編成が広がっていた。


コンサートマスターは、ライナー・キュッヒル。彼がコンマスだとやはり推進力が全然違う。自分は前方中央7列目ど真ん中とかなり前で聴いていたので、ライナー・キュッヒルのヴァイオリンの音色がグイグイとオーケストラを引っ張っていっているのがよく聴こえた。やはり彼はすごいと思う。


バンダだったか、一瞬金管が裏返ったこともあったが、それは木を見て、森を見ず、ということと同じ。全体の完成度からすると大したことではない。


もう100点満点といっていいほど完璧な演奏であった。こんな素晴らしいマイスタージンガーの演奏を聴いたのは、自分の鑑賞史上でも初めてである。おそらくいままでの、もうゆうに10年以上ある歴史ある東京・春・音楽祭 N響ワーグナーの演奏会の中でもベストワンと言っていいと思う。それほど圧倒的な完成度と大感銘を受けたパフォーマンスであった。


終演後、自宅に帰った自分は、溢れ出るこの感情を抑えることができず、思わずヤノフスキPENTATONE盤をもう1回聴き直してしまった。そしていまもであるが、数日間頭の中をあのメロディが延々とループしていて、ずっとあの旋律が鳴り続けているのである。


ワーグナー恐るべし!


東京オペラシンガーズも相変わらず素晴らしかった。今回はオーケストラの背後にスペースをとって、そこで整列して歌っていた。あるいは、舞台中に左右の入り口付近に小編成で並んで歌う、その2通りであった。


東京オペラシンガーズのすごさを実感するのは、毎年この東京春祭のN響ワーグナー演奏会のときである。やはり合唱というのはかなり自分にとってグッとくる。人の声が幾重にも重なって折り合うハーモニーの美しさというのは、筆舌に尽くしがたい美しさがある。この美しさはちょっと言葉では表現できませんね。じかに体験してみないとわからないと思う。


東京オペラシンガーズは、日本のトップのプロ合唱集団。まさに合唱という芸術の極みを見せつけてくれる。。そんな感じである。






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独唱ソリスト歌手陣もレベルが高かった。

限られた予算の中で、そして出演者のタイムスケジュールの調整、そんな苦労もありながら、これだけの粒ぞろいのレベルの高い歌手陣を集めてこれるのは、本当に東京春祭スタッフのご苦労が頭が下がる思いである。


特に圧倒的な存在感、アピールをしていたのは、意外やザックス、ヴァルターの主役2人ではなくベックメッサーであった。このワーグナー唯一の喜劇であるこのマイスタージンガーの中にあって、じつはこの悪役のベックメッサーの役割というのは非常に重要なのである。このベックメッサーの出来具合によって、そのマイスタージンガーの出来も決まってしまうほど重要な役割だと自分は思っている。


これがもう驚きであった。歌手陣の中でただ1人オール暗譜。そしてその卓越した演技力。自分はこれは只者ではないと思った。瞬時にこの歌手さんは、このベックメッサーでずっとご飯を食べてきているその道のプロの歌手さんに違いないと確信した。それほどまでにこのベックメッサーという役を自分のモノにしている。完璧だった。


わかってはいたが、最後のカーテンコールでは、やはり最大の拍手と大歓声であった。ベックメッサーの歌にはリュートという楽器が使われるが、今回はハープの小型の特別な楽器が使われていた。確かに音色はリュートそのものの音であった。最後のカーテンコールでは、ベックメッサーが花束をこのリュートのハープ奏者に渡して笑いと大歓声を受けていた。こういうところのパフォーマンスも場慣れていて、さすがだと思った。


主役のザックス、ヴァルターは、最初は主役にしては、ちょっとオーラと言うか主張してくるものが少なくて不満なものがあった。ふつうは主役は、舞台前列で歌っている歌手の中でもやはり発するオーラや存在感、気が全然違うものである。そういうものが、自分には物足りなさを感じたが、歌唱力ふくめ歌手としての実力はやはり素晴らしいものがあると思った。


ヴァルターは、最初存在感薄いな、と思ったが、最後のヴァルターの一番の魅せ場のアリアである「朝はバラ色に輝いて」に到達するまでにどんどんその存在感を増してきて、最後は立派にそのアリアを歌い切った。自分はあっぱれだと思った。ブラボーを贈りたい。


ザックスは、自分がこの楽劇でもっとも大好きな役なのだが、歌唱力ともに申し分ない安定感だったが、如何せん譜面にかぶりつきという印象があって、演技力そのものに物足りなさを感じた。演奏会形式とはいえ、もうちょっと表情の変化をもって演技という側面で我々を楽しませてほしかったように思う。でも最後のマイスター芸術の価値を説く(ザックスの最終演説)はカッコよかった~~~。自分はこのが喜劇の中でもここが一番大好きです。


女性歌手陣2人も最高に素晴らしかった。特にエファが素晴らしい。基本はかなり高音域な声質だが、絶唱したときに、けっして飽和したり金切声になったりせずにきちんとした声帯の広さ、容量の大きさというのがあって、その歌声が飽和せずに突き抜ける感じでホール空間に声がきちんと定位するし、声の伸びや安定感がある。じつにすばらしい歌手だと思った。声量、声質ともに申し分がなく、抜群の歌唱力をもった歌手だと思った。


清純派のエファにしては、かなりセクシー系で色艶っぽい雰囲気で誘惑されそうになりましたが。(笑)


このように歌手陣はほんとうに素晴らしいレベルで驚いた。


第3幕の第4場、マクダレーネも交え、エファ、ヴァルター、ザックス、ダフィトはそれぞれの思いを歌い上げ、五重唱となる”愛の洗礼式”アリア。ここは最高の魅せ場でじつに美しい五重唱で毎回感動するところ。


自分も最後の歌合戦以外に一番好きなアリアで、ここは本当に楽しませてもらいました。


では、さらにそれぞれソリストごとにもう少し詳しく感想、気になった点を補足していきますね。


ハンス・ザックス役:エギルス・シリンス(バス・バリトン)



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経歴を見ると、完全なワーグナー歌手。最近の出演では、クリスティアン・ティーレマン指揮でバイロイト音楽祭にもデビューしている。


とてもいい声をしていて、バリトン声域のお手本のような声質をしていると感じた。声量も十分である。歌手としての才能、歌唱力としては申し分ないと思う。いい歌手だと思うのだが、如何せん今回のザックスでは譜面にかぶりつきという感じで、もう少し表情を表に出し、演技力を発揮してくれるといいのにな~と思った。演奏会式とはいえ、やはり歌手に演技力が備わっていると観ているほうも感動具合が全然違ってくるものである。




ヴァルター・フォン・シュトルツィング役:デイヴィッド・バット・フィリップ(テノール)


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今日の英国が誇る最もエキサイティングなテノールの一人であり、主要な国際舞台で早くも確固たる人気を獲得している。


非常に若々しい感じが伝わってきて、フレッシュな感じがよく伝わってきた。最初は主役ヴァルターとしての存在感がもう少し欲しいなと思ったが、幕や場が進むにつれて、だんだんとその存在感が大きくなってよかったと思う。声質は、自分が望んでいるような突き抜けるような高音というタイプではなく、やや籠るというか、もう少し突き抜け感があるともっといいだけどな~とずっと聴いていた。でもヴァルターの一番の魅せ場の「朝はバラ色に輝いて」では見事に歌い切り、場を制覇した感があってブラボーであった。将来のオペラ界を席巻するいい歌手に育って行ってほしいと思う。英国人だと思うけど、ドイツ語発音なかなかでしたよ。



ジクストゥス・ベックメッサー:アドリアン・エレート(バリトン)


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ベックメッサー役のアドリアン・エレートの大活躍はさきほど述べた通り。とにかくベックメッサー専門、その道でご飯を食べてきたプロに違いないと自分は確信し、帰宅後さっそくプロフィールを確認してみました。



オーストリア出身のバリトン歌手。長年にわたって、拠点であるウィーン国立歌劇場だけでなく国際舞台でも人気を博しており、その多彩な歌唱力で聴衆とマスコミを魅了してきた。クリスティアン・ティーレマン指揮でワーグナー《ニュルンベルクのマイスタージンガー》ベックメッサーを歌い、華々しい成功を収めたことから、2009年にはバイロイト音楽祭に招かれて同役を歌うことになった。以来、チューリッヒ、ケルン、ライプツィヒ、東京、アムステルダム、ドレスデン、ザルツブルク復活祭音楽祭でもベックメッサーを歌っている。


やっぱりね・・・自分は2012年の東京春祭のマイスタージンガーのときのベックメッサーもおそらくエレートだったとそのとき思いました。なんとなくそのときのイメージが自分の脳裏にこびりついていて、今回観たときもまったく同じだったので、ひょっとしてあの2012年のときのベックメッサーと同じではないか?と思ったのでした。自分は行きませんでしたが、新国立劇場でのマイスタージンガーをやっていて、そのときのベックメッサーもエレートだったそうです。




エファ:ヨハンニ・フォン・オオストラム(ソプラノ)


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南アフリカ出身。R.シュトラウス、ワーグナー、ヤナーチェク、モーツァルトの主役として引く手あまたのソプラノ歌手である。


自分はこのオオストラムがすごくいいと感じた。最高だと思いました。


ところが、もっと驚いたのが、この超素晴らしいと感動したエファ役のヨハンニ・フォン・オオストラム。なんと!去年のローエングリンのエルザ姫の歌手だったのだ!去年は、もう本当にお姫様みたいなルックスですごい声量、歌唱力に大ファンになってしまいましたが、今回のエファもまさか彼女だったとは!今年はもうイメージガラ変。セクシー系で誘惑系なのでまったく同一人物だとは気づかなかったです。


今回自分のチョンボで公演があることをその日の朝に気づいたので、ちゃんと歌手の経歴の予習もできていなかった。



この写真は去年のローエングリンのときのカーテンコール。一番右端がエルザ役のオオストラムでした。


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ご覧のように清純なお姫様容姿で、それでいて抜群の声量、歌唱力で自分はいっぺんに虜になってしまい、もっとその普段のオペラ界での活躍を知りたいと叫んでいました、去年。


まさかのあのお姫様容姿の彼女が、今年の超セクシーで誘惑系のスタイルのエファと同一人物とはまったく気づかず、女性歌手ってほんとうに恐るべし!(笑)


とにかく声が素晴らしい!歌がうまい!オーラがある感じでいい歌手だな~と思いましたが、同一人物とは知らず、2年間続けて大感動するということは、彼女はやはり本物だということですね。


ちょっと2年連続で、自分を魅了したヨハンニ・フォン・オオストラムという歌手、ちょっといろいろ追っかけてみたくなりました。去年のお姫様エルザで感動して、いろいろ作品探したんだけど、見つからなかったんだよね。ひさしぶりに自分を本気にさせてくれた女性歌手との出会い。いろいろ彼女のこと知りたいです。



確かにカーテンコールするとき、彼女の作法は、片膝を曲げつつその上に両手を添えるといういわゆるプリンセス・スタイル(あれ?正式名称はなんというの?)ですごく気品があるんだよね。あっ去年のエルザと同じだとそのとき思いましたが、まさか同一人物とは、まったく思いも寄らなかったです。




マグダレーネ:カトリン・ヴンドザム(メゾ・ソプラノ)


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その「美しく、みずみずしく、光り輝くメゾ・ソプラノ」(フランクフルト総合新聞)や、「芸術的な演技と歌」(ケルン日刊新聞)によって、一流の歌劇場やコンサートホール、音楽祭で名を知られるようになった。オーストリア出身で、これまでにベルリン国立歌劇場、ドレスデン・ゼンパー・オーパー、ハンブルク州立歌劇場、エルプフィルハーモニー・ハンブルク、ウィーン楽友協会、ブレゲンツ音楽祭、ザルツブルク復活祭音楽祭、インスブルック古楽音楽祭、グラフェネック音楽祭等に出演してきた。


自分は、最初彼女がエファだと思ってたんですよね。(笑)本物はかなりセクシー系、誘惑系のスタイルなので。自分の中でエファは純真派というイメージが定着していたので。エファがオオストラムだと分かったとき、はたしてこのカトリン・ヴンドザム演じるマグダレーネって女性役を想い出せなかったです。(笑)


マイスタージンガーでエファ以外に女性役って誰だったっけ?という感じで。マイスタージンガーしばらくご無沙汰でしたので。マグダレーネはエファの乳母でした。


このマグダレーネを演じたカトリン・ヴンドザムもすごく声色が美しく声量も申し分なくいい歌手と思いました。




ファイト・ポークナー:アンドレアス・バウアー・カナバス(バス)


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主要な役どころのシリアス・バスの役を8つの異なる言語で歌う特殊才能の持ち主。そのレパートリーには、ヴェルディのフィリップ2世(イタリア語及びフランス語)、ザッカリーア、フィエスコ、デ・シルヴァ、グァルディアーノ神父や、リリカルなワーグナーの役では、マルケ王、ハインリヒ王、ヘルマン方伯、ファイト・ポーグナー、ダラント等がある。


自分はこの人のバスの声質、声量は、まさにポークナーそのものだと思うんですよね。まさに自分のイメージ通りのポークナーそのものでした。マスクも端正で、いい歌手だと思う。最後まで安心して観ていられた最高のポークナーだったと思います。





ダフィト:ダニエル・ベーレ(テノール)


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歌手であり、作曲家でもある。自身のアルバム『MoZart』では、オーパス・クラシックの「シンガー・オブ・ザ・イヤー2020」を受賞した。コンサート、歌曲やオペラでも同様に成功を収めており、2020年初めにはローエングリンでデビューして高い評価を得た。レパートリーは、バロックの名曲や古典派・ロマン派のレパートリーから20世紀、21世紀の作品まで幅広い。


自分は第1幕の冒頭からもっとも活躍した、というか自分のカラーを出し切っていて、演技力もあってもっともアピールしていたのは、間違いなくこのダフット役のダニエル・ベーレだと思いました。


それほど目立っていたし、凄い存在感があって素晴らしかった。いいダフィト役だなと思いました。前半のMVPといっていいほどの活躍で自分へのアピールは大きかったです。経歴を見ると、すごい才人なんですね。驚きました。



東京・春・音楽祭2023 ニュルンベルクのマイスタージンガー。


東京春祭史上もっとも素晴らしいレベル、パフォーマンスであり、大感動を与えてくれた大伽藍であった。


マイスタージンガーの前奏曲は、毎年、東大、東京大学の入学式で、新入生の入学を祝って、東大のオーケストラ部が演奏する定番レパートリー曲なのだそうだ。


この前奏曲の明るい未来に託す、期待するような旋律は、これから明るい未来を目指して船出しようとしている新入生の門出を祝うには絶好の音楽なのだろう。


2023年4月。自分も明るい気分できっと素晴らしい未来が待っているに違いない、そう期待しよう!

そんな想いをさせてくれる素晴らしい演奏会であった。



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東京・春・音楽祭2023


ワーグナー:楽劇《ニュルンベルクのマイスタージンガー》(全3幕)

上演時間:約5時間30分(休憩2回含む)


2023年4月6日 [木] 15:00開演(14:00開場)

東京文化会館 大ホール



指揮:マレク・ヤノフスキ


ハンス・ザックス(バス・バリトン):エギルス・シリンス

ファイト・ポークナー(バス):アンドレアス・バウアー・カナバス

クンツ・フォーゲルゲザング(テノール):木下紀章

コンラート・ナハティガル(バリトン):小林啓倫

ジクストゥス・ベックメッサー(バリトン):アドリアン・エレート

フリッツ・コートナー(バス・バリトン):ヨーゼフ・ワーグナー

バルタザール・ツォルン(テノール):大槻孝志

ウルリヒ・アイスリンガー(テノール):下村将太

アウグスティン・モーザー(テノール):髙梨英次郎

ヘルマン・オルテル(バス・バリトン):山田大智

ハンス・シュヴァルツ(バス):金子慧一

ハンス・フォルツ(バス・バリトン):後藤春馬

ヴァルター・フォン・シュトルツィング(テノール):デイヴィッド・バット・フィリップ

ダフィト(テノール):ダニエル・ベーレ

エファ(ソプラノ):ヨハンニ・フォン・オオストラム

マグダレーネ(メゾ・ソプラノ):カトリン・ヴンドザム

夜警(バス):アンドレアス・バウアー・カナバス


管弦楽:NHK交響楽団(ゲストコンサートマスター:ライナー・キュッヒル)

合唱:東京オペラシンガーズ

合唱指揮:エベルハルト・フリードリヒ、西口彰浩

音楽コーチ:トーマス・ラウスマン

字幕:舩木篤也








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