DX時代のコンサートホール:配信プラットフォーム [コンサートホール&オペラハウス]
これが配信プラットフォームのブロックダイアグラムである。
キープレーヤーは5人である。
●コンテンツプロバイダ
コンテンツの著作権を保有している者である。著作権者である。ライブストリーミングの場合、各オーケストラ楽団が相当する。NHK交響楽団、東京交響楽団、東京都交響楽団、新日本フィルハーモニー管弦楽団、日本フィルハーモニー管弦楽団、京都市交響楽団、オーケストラ・アンサンブル金沢などなど。。。
●サービスプロバイダ
配信事業者である。従来はコンサートホール、オペラハウスに、ストリーミング事業会社が配信設備を持ち込んでいた。今後は、各コンサートホール・オペラハウスに、固有に配信設備を備えたコントロールルームを新設・建造する。配信設備常設である。サービスプロバイダは、いわゆるショップである。コンテンツプロバイダの商品の数々を自分の商品の棚(ブラウザ)に陳列して販売する役目である。サービスプロバイダに相当するのが、サントリーホール、ミューザ川崎、東京文化会館、東京オペラシティ、新国立劇場などである。
●第三者機関・クリアリングハウス
配信に纏わる権利処理、課金処理、暗号鍵処理を一気に請け負う権利に特化した機関である。通常、課金センターといえばわかりやすいと思う。JASRACが請け負うのがいいと思うが、彼らにそんな能力はあるだろうか。(笑)
ふつうは、課金系プラットフォーム(ぴあやイープラスなどのチケット販売業者)業者が担うと思われる。その場合、配信事業者とペアを組んでいる課金系プラットフォーム業者である。その配信サービスごとに、課金系プラットフォーム業者が存在すると思われ、つねに配信事業者のコンテンツ系プラットフォームと課金系プラットフォームとペアを組んで、ライブストリーミング配信をやっている。
●データセンター(アーカイブ)
配信したコンテンツを、アーカイブするサーバー、データセンターである。永遠に増え続けていくコンテンツをどのようにアーカイブ処理していくかがポイントである。
●ユーザーホームネットワーク
家庭内のエンドユーザー。ネットワークとのGatewayは、TV,PC,タブレット,スマホである。そこからさらにWiFiなどのホームネットワークなどで、いろいろな家庭内機器とコンテンツを共有できる。
〇コンテンツ系プラットフォームと課金系プラットフォーム
ライブストリーミングの配信プラットフォームは、大別すると、コンテンツ系プラットフォームと課金系プラットフォームの2つに分かれる。コンテンツ系プラットフォームは、いわゆるカメラ、マイキング、スイッチャー、編集、画像・音声コーデック処理(コーデック種類、サンプリング周波数、ダイナミックレンジ、圧縮技術など)、配信エンコーダー、配信設備などを担当する。暗号などのコンテンツの権利処理もおこなっていると思われる。信号処理に強い業者がやっている場合が多い。
課金系プラットフォームは、課金処理、利益分配、暗号鍵関連など権利処理を司る業者である。通常は、ぴあやイープラスなどのチケット販売業者が担っている場合が多い。自分たちの得意分野であるからである。本来であれば、コンテンツ系プラットフォームと課金系プラットフォームとぜんぶ完成形としてひとつの業者がやれれば、文句のつけようがないが、なかなか全部をカバーするのは大変である。それぞれの得意の分野でコンテンツ系と課金系とに分かれて分担してシステムとして配信プラットフォームとしてガッチャンコする形が現状の姿だと思われる。
・各キープレーヤーの役割・機能。
●コンテンツプロバイダ
コンテンツの保有者、著作権者であることを第三者機関・クリアリングハウスに登録する。
●サービスプロバイダ
それぞれのコンサートホール・オペラハウスの特別専用コントロールルームに常備設備された配信設備にて、インターネット配信する。ステージ上で演奏している各オーケストラ楽団を、複数の(業務用)カメラで各方面から撮影し、適宜適切なタイミング、箇所で、スイッチャーで画面を切り替えながらライブストリーミングする。リアルタイム生放送もあるが、ふつうはライブを撮影して、あとでゆっくり編集して丁寧なコンテンツに仕上げてから時差タイムシフトでストリーミングする場合もある。
オーディオマニア、AVファンにとって、この配信事業者で処理をする信号コーデックの部分が、どのようなコーデックを採用するかで、かなり配信サービスの魅力を醸し出すというか、そのオリジナリティを出す、高画質・高音質と謳う配信サービスであることをアピールできるところではないか、と思っている。自分的にはここ1番大事!(笑)
画像なら4Kであるとか、音声であるならPCM 96/24とか48/24とか。音声はDSDもありますよ。信号諸元だけではなく、音声であれば3Dオーディオなどマイキング(収録マイク設定)もとても重要なところである。やはりコンテンツ信号処理に強い、現場撮影・収録に強い手慣れた業者でないと勤まらないと思う。コンサートホールごとに技術者を育成・雇用するのは、なかなか難しい面もあって、やっぱり外注業者に頼むという形なのだろうか。。
そのコンサートホールごとにオリジナルな配信サービスを提供してもいいし、YouTubeなどの汎用サービスを利用してもいい。でもライブストリーミングは基本有料課金を原則としてほしい。音楽はただ、無料ではない。水道水の水のようにただで飲めるという先入観をユーザーが抱くようでは問題である。(課金スタイルはいろいろあってYouTubeのような広告収入型は意外やテクがあまり必要ない導入しやすいものなのかもしれない。)
そのコンサートホールごとにオリジナルなユニークな配信サービスということは、専用の再生ブラウザ、コンテンツプレイヤーを持っているということである。ユーザーはその専用ブラウザでユーザー登録をして、そのサービスを使えるようにしてその専用ブラウザでコンテンツをストリーミング再生する。
①コンテンツオーサリング
・カメラ
・マイキング
・スイッチャー
・編集
・信号コーデック処理(コーデック種類、サンプリング周波数、ダイナミックレンジ、圧縮技術など)
・暗号処理
②配信エンコーダー
③配信設備
④コンテンツID管理
⑤コンテンツDB
⑥メタデータDB
⑦再生ブラウザをユーザーに提供。
⑧コンテンツ検索エンジン(アーカイブ再生用)
●第三者機関・クリアリングハウス
ユーザーに対して、そのコンテンツの使用許諾の対価として課金処理をおこなう機関。ふつうは、課金系プラットフォーム業者が担っている場合が多い。顧客管理(ユーザーID:メールアドレス,パスワード)、課金処理(クレジットカード決済),そして配信で得られた収入を、権利者に利益分配する。
そのためには、コンテンツプロバイダ(オーケストラ楽団)、サービスプロバイダ(コンサートホール、オペラハウス)は第三者機関・クリアリングハウスに登録しないといけない。(名称、住所、担当者名、連絡先、振込先口座情報、入金タイミングなど)
配信収入は、通常のチケット購入で、そのコンサートを買い取る形や、サブスクリプション(少額決済)がある。その配信収入を、契約を締結したときに決められた配分率(契約書に書かれている)でそれぞれに利益配分する。サービスプロバイダの取り分は、コンサートホールのショバ代としての取り分と、その実際のオペレートをしている配信業者としての取り分に按分されるであろう。
配信収入は微々たるものだと思われるので、配信にかかる費用は、各オーケストラで予算計上している公的援助分で賄う。
①課金処理DB
②顧客管理DB
③鍵管理・認証DB
④利益分配計算処理DB
⑤個人嗜好解析DB
●データセンター(アーカイブ)
一度配信したコンテンツを時限コンテンツとして消去してはいけない。永遠にアーカイブするのである。その保管場所としてデータセンターを使う。アーカイブコンテンツの蓄積、そしてアーカイブ再生である。アーカイブ用のデータセンターとやりとりをするのは、サービスプロバイダの各コンサートホールである。
コンサートホールのそれぞれの配信サービスに応じてオーサリングされたコンテンツは、その配信サービスによって異なることになってしまうが、アーカイブするサーバーは1箇所のデータセンターである。アーカイブコンテンツ再生を実現していく上で大事な技術となっていくのが、それぞれのコンテンツに割り振るコンテンツIDの定義の仕方と、コンテンツ検索エンジンの技術である。脚光を浴びるであろう。
コンテンツIDの定義の仕方は重要と思われる。配信事業者(コンサートホール、オペラハウス)ごとに違った独自のID系統であるとデータセンターのアーカイブ管理・検索のときに統一性がない。できれば配信事業者間を横串するような統一的なIDの割り振りの定義が肝要なのではないか、と思う。
●ユーザーホームネットワーク
配信サービスを楽しむエンドユーザーである。インターネットとのGatewayは、TV,PC,タブレット,スマホであると思われる。特にタブレット、スマホなどのハンディ型ストリーミング再生機器のクオリティアップ、高画質・高音質化が望まれる。メーカーの急務である。自分もそうだが、ユーザーの大半は、ストリーミングをスマホやタブレットで観ている場合が多いと思われる。
次のシステム図が、第三者機関・クリアリングハウスを1箇所固定で決めて、コンテンツプロバイダやサービスプロバイダを一元管理する方法である。この場合は、第三者機関・クリアリングハウスはJASRACなどの権利処理の専門団体が管理するのが望ましい。
でもこれは大変ではないだろうか?JASRACのようなお役所団体がそんなサーバー管理マネジメントを管理するのは大変である。外注に頼むにしても。そして一元管理するということは、暗号鍵、認証関係と顧客管理の関係上やや重複する感じで、ちょっと混乱する。ユーザーは各配信サービスに対して登録するのであって、顧客管理DBはサービスプロバイダ側にないといけない。でも課金処理をする上で、ユーザーはクリアリングハウスにも登録しないといけないので、顧客管理がサービスプロバイダとクリアリングハウスで重複してしまう。暗号鍵・認証関係もしかりである。どうもここが考えていてスマートではなく、混乱する。いい解がない。
このシステム図が、一番いまの現実に近い形なのではないか、と思う。
各コンサートホールの各サービスプロバイダごとに課金処理を持っているパターンである。つまり配信サービスごとにコンテンツ系プラットフォームと課金系プラットフォームをガッチャンコしてペアで使っていて、それが配信サービスごとに存在するというパターンである。
コンテンツ系処理と課金系処理は、その配信サービス単位で完結する。これだとユーザーの登録は、クリアリングハウスであり、そこに顧客管理DBと暗号鍵・認証DBが存在する。サービスプロバイダ側にはない。これだとクリアですっきりする。これが現状に一番近い形で現実的である。
●やりたいこと。
結局なにをやりたいか、というと、
①日本全国のコンサートホール・オペラハウスに超ブロードバンドの光ファイバの直結DTTHを実現し、コンサートホール・光ファイバにおける全国情報通信スーパーハイウエイ構想を実現する。
②コンサートホール・オペラハウスごとに配信設備専用コントロールルームの新設・建造。(配信設備のホールへの常設)
③配信にかかる費用は、各オーケストラの公的援助の予算計上に含めてもらう。
④そのためには、配信することのメリットを明確化する。単なる実演の代替えではなく、実演の売り上げをさらに伸ばすためのツールとしての使用とか…
⑤配信設備をコンサートホールに常備することで、いままで配信に縁がなかった楽団も配信の恩恵を受けやすくなる。
⑥もちろんホール常備のシステムにさらにアドオンで本日は特別仕様(カメラ台数、アングル、使用コーデックなど)もフレキシブルに変えられる柔軟性を持つべきである。
もっと単純には、ベルリンフィルのDigiitalConcertHall (DCH)を日本の全国のコンサートホール・オペラハウスにも全部適用できたらいいなーと思っただけです。すごい単純です。出発点はそこです。
コンサートホールでのコンサートの収録、後日テレビ放送は、放送業界の分野でもおこなっており、そことの調整、役割の住み分けをきちんと考える必要がある。
●将来考えられること。
これは光ファイバのインターネットだけの問題ではない。いまはたまたま伝送路を光ファイバのIPインターネットで考えているだけだけど、近い将来5G,Beyond5Gが実現可能になってくると、伝送路として無線ネットワークが浮上してくる。伝送路が、光ファイバ・インターネットなのか、5G・インターネットなのかの違いで、ベースバンド信号処理の部分は基本変わらないのである。そのためには、いま現在のうちに、コンサートホール・オペラハウスにベースバンド信号処理に関する設備の常備は準備しておかないといけない。5Gがやってきた時代になれば、配信エンコーダー、配信設備の部分は、光ファイバから5G用設備をアドオンしていけばいいのである。
伝送レイヤー、物理層レイヤーが変わるだけの問題で、ベースバンド処理部は不変なので、その部分はしっかり専用特別ルームを建造して、近い将来に臨んでおこうという主旨である。いまのうちにライブストリーミングの基盤を構築しておきたいという感じです。